第6話 防衛準備

「それじゃあ、狩猟祭の続きを始めるかのう――

 

 ――今回の一番狩ったものはハルトじゃ!」


 ディスト爺さんがそういうとあたりは一気に静かになり、僕に注目が集まった。


 ――どうしよう

 こんなに視線を集中することは今までなかったし、できる限り避けていた。前世はボッチで今世は複数人と話せるようになった。十分じゃない僕、凄くない?


 ディスト爺さんが僕が狩った獲物をみんなの前に持って来させて紹介している。いつもは人の獲物を見て、一発で仕留められてる凄いな〜とか考えて楽しんでいたのに僕にはもうそんな余裕はない。


 ――どうしよう

 僕はこのリーダーの魔狼に殺されかけた時、確かに彼女に告白しておけば良かったと凄く後悔して、村のみんなに危機を伝えるためもあって持って帰ってきた。


 いつもはこうならないように山菜を積んで帰っていたのに。でもあの時はなんとか生還できて気持ちがなんかハイになって冷静じゃなかったんだ。――そうだそうに違いない。


「ハルトよ…この獲物を捧げる相手はおるかのう?」


 痛いほどの沈黙。みんなが僕に注目している。クソっ、もう男がウジウジするな!みっともない!!言え!!!


「…………サクラちゃんに……捧げたく思います」

 足ははじめて魔物と対峙した時よりも激しく震え、声も震え、裏返っている。

「ありがたく受け取ります」


 村人たちは彼女の返答に万雷の拍手をあげ祝福し、仲良くしている村人たちは僕たちを囃し立てる。


 ――えっ!?


 夢だろうか?僕は彼女とはそこまで話すことはなかった。一方的に僕が好きで、優しい彼女が話しかけてくれるそういう関係だったのに……。


 ”ありがたく受け取ります”?どういう意味だろう。狩猟祭での最後に一番いい成績を収めたものは好きな女性に告白して受け取ってもらうことで返事とする。


 確かに僕はそう設定して、村でもそうだったはず。つまり、彼女は僕の告白を受け取ってくれた?


「えっ!僕の告白を受け取ってくれるの?」

「…はい」


 夢だろうか?ほんのりと頬を染め、照れくさそうに少しだけ視線を外し恥じらうように肯定する彼女はとても可愛かった。

 

 少しでもいい未来のためにと後から幻想的な可愛い姿にした前世で一緒に飛んだサクラよりも今、目の前にいる彼女が雲泥の差で可愛い――こんな幸せがあっていいのだろうか



 夢見心地のまま、収穫祭と防衛の準備が始まる。集中しないといけないのにあの時のことを思い出す度、頬が緩んで仕方がない。――前世でもこんなに幸せなことはなかった。


 彼女を守るためにも防衛に力を入れなければ――守るぞ!任せろ!!

「さあ!行くぞ。たちの村を守るんだ!!」


 なんだか、想定していたのより強固な防衛陣が引かれた。馬防柵を一つ作るだけのはずが気がついたら三つ出来上がっていた。結びも強固で木も太く、頼り甲斐がある。


 それでもまだ不満が残るが、なかなかな出来じゃないだろうか?


「お疲れさん」

「ああ、クロスどうしたんだ?」

「いやあ、お前の気合いがすごいなって」

「当たり前だ!受け入れられたんだぞ!!こうなっても仕方がない」


「……なあ、クロスさんどうして受け入れられたんだ?」

「それはお前がサクラのこと好きだって村中で有名だったぞ。自分のことを好いてくれてるヤツを好きにならない方が難しいだろう」


「あと、お前がいつサクラに告白するかって賭けられていたからな。告白するにかけとけば良かったぜ。」

「おい、その賭けはなんだ。っていうかそんなにみんな知っていたのか……」

「おう、有名だったぜ。祝いだ」


「……ああ、ありがとう」

 新鮮な土の付いた採れたての山菜、やっぱり採ってくれていたんだな。自然と笑顔が浮かぶ。


「絶対、幸せにして見せるよ」

「おう、当たり前だ」

 今世は前世と違う、守りたいものも支えてくれる友人もいるんだから。

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