第20話:地獄の番人ヴォロス(R-15)
魔物の大群が一斉に同方向へ押し寄せる現象、モンスターパレード。
ヴォロスは意図的にそれを発生させて、天界へ侵入を試みたようだ。
「勇者よ、我輩のかわいいペットたちの仇、討たせてもらうぞ」
とか言ってるヴォロス、足元に倒れている魔物を踏み潰したぞ。
お前それ絶対かわいいとか思ってないだろ。
「天界へ侵入しようとしなければ、こんな大量に殺したりしないよ」
一応、そう言い返しておく。
天使たちも僕も、普段は必要な数を狩るだけだ。
「黙れ天界の犬め」
と言うヴォロスの台詞は、CV林翔太さんが吹き込んだ悪役声。
大天使と対になる四天王のCVは、同じ声優が声色を変えて担当しているんだよ。
ディアモの声は、ミカと同じTERUさん。
ヴォロスの声は、ウリと同じだ。
「我輩の魔力に潰されるがいい」
「こんなの要らないからお返しするよ」
ヴォロスが放った魔力が途中で巨石に変わり、僕めがけて飛んでくる。
僕は逃げずに、盾スキルでそれを反射した。
返された巨石を、ヴォロスは片手で粉砕して平然としている。
「ほう。貴様その身体で防御型か」
これはヴォロスの台詞で、主人公の体格やステータスによって変わる定型文の1つ。
僕は現実世界での15歳頃と同じ小柄で細身の身体を設定したので、その台詞が出たらしい。
「そうだよ。戦いづらいだろ?」
「ふはは、そんな貧弱な身体、バフが切れれば我輩の拳ひとつで粉砕されるであろう」
「じゃあ、本当にそうか試してみなよ」
戦闘が始まった。
僕にとって2回目の空中戦は、身体に移植された召喚獣の翼があるので、前よりも動きやすい。
ヴォロスとのタイマン勝負は僕、ウリは新たに押し寄せる魔物群を迎え撃つ。
四天王との戦いは、ゲームシナリオ上の必須エピソードだ。
ヴォロスもシステムに従い、襲ってきたんだろう。
本来の設定よりタイミング早過ぎだけどね。
ウリとの絆スキルが使えない僕は、サキから学んだ戦技でヴォロスに挑む。
僕は剣を片手に正面からヴォロスにぶつかり、体格差で吹き飛ばされ際に、空いているもう片方の手で水の矢を放った。
「ははは、なんだその弱々しき攻撃は。ウリでももっとマシなものを撃つぞ」
ヴォロスに笑われる。
が、気にしない。
再び剣で斬りかかり、吹き飛ばされつつ水の矢を撃つ。
無駄と思える攻撃を繰り返す僕をヴォロスが訝しみ始めた頃、僕の目的の1つ目は達成された。
ピシッと音を立てて、ヴォロスの大盾に欠けが生じる。
その欠けた部分を狙い、僕は更に水の矢を連射した。
水属性スキル・特殊:
「む? 何を仕掛けた?」
ヴォロスが異変に気付くが、もう遅い。
欠けたところから大きなヒビが広がり、大盾が砕け散った。
「?!」
盾を失ったヴォロスがギョッとした隙を、僕は逃さない。
僕は空中で身体を翻し、紋章入りの片手をヴォロスに向けた。
絆スキル:浄化の炎龍(改)
攻撃対象:範囲→単体
ダメージはゲーム内最強といわれるミカとの絆スキルを、ヴォロス単体に絞って放つ。
光と炎を纏う龍が、ヴォロスを捉えた。
「グァァァッ!」
盾関連スキルを全て解除されたヴォロスは、反射も反撃もできず、光属性ダメージと最高レベルの火属性ダメージをまともに食らって苦悶の声を上げる。
その身体は、炭化してボロボロと崩れ始めた。
公式ガイドブックのキャラ紹介によれば、ヴォロスは防御と体力の値が高く、地属性はMAX。
だけど、他の属性値は低い。
炎だけなら体力の多さで耐えられたかもしれないけど、魔族が最も苦手な光属性との複合では、流石に耐えられなかったらしい。
「装備破壊か。サキが得意な技だな」
魔物の群れはヴォロスの支配から開放されて逃げ去り、ウリが翼を羽ばたかせてこちらへ近付いてくる。
僕は風に散って消えていく黒い粒子を見ながら、修行最終日のサキを思い出していた。
サキから水属性攻撃と戦技を学び始めて数日後。
オネエな師匠は予想外のものをくれた。
「ヒロ、今まで頑張ったわね(ベッドの上で)」
「は、はい」
「ご褒美にアタシの初めてをあげるわ」
「え?! 初めて?!」
ベッドの上では百戦錬磨にしか見えないサキの「初めて」とは一体……。
「あら、こう見えても【受け】は未経験なのよ?」
「遥か昔に経験済みかと思ってましたよ」
「肌を合わせてみて『これだ!』って感じる相手がいなくてね」
「つまり今まで【攻め】一択だったってこと?」
「そういうこと」
サキは微笑み、その姿を青年から少年に変えた。
普段は青年の姿をしている大天使たちや天使長が少年の姿に変わるのは、力尽きたときか、相手を信頼しているときだ。
「あんたの肌に初めて触れたとき「これだ!」って感じたのよね。既に天使長のもので残念だわ」
サキがそう感じる理由を、僕は知っている。
主人公がサキ攻略ルートを進んでいれば、結ばれた筈の相手だからだ。
一方、主人公が他のキャラのルートに入った場合、サキはウリと結ばれる可能性があることも知っている。
「初めての相手はあんたがいいわ。教えた戦技を理解しているかテストしてあげる」
「サキさんにはいずれ恋人ができるから、その人にとっといた方がいいんじゃないですか?」
「初めては痛いのよ。だから身体の相性が最高の相手と済ませた方が痛みが少なくていいわ」
「恋愛感情が無くてもいいんですか?」
「つれないこと言うわね。でもいいわ、あたしが今までやったみたいに攻めてみなさい」
もう何度も肌を触れ合わせていたので、今更恥じらうところではない。
今まではサキに服を脱がされ全身を触られていたけど、このとき初めて逆の立場になった。
「防具破壊はね、未経験の子を扱うみたいに攻めるのよ」
自分の気持ちいいところへ僕の手を誘導しながら、サキは囁く。
指先で触れてみて反応があったところへ口付けすると、サキは顔を紅潮させて息を漏らす。
しばらく愛撫を続けた後、今まで誰も侵入させなかったという領域へ招かれた。
「少しずつね……ッ」
そこから先はサキはもう喋る余裕が無くなり、僕はサキが苦痛を感じてないか様子を見ながら攻める。
受けは未経験のサキは、時折ビクッとはするものの、痛がっている様子は無い。
硬く閉じたものを少しずつ開けるのだと、サキは以前言っていた。
特に弱いところを見つけたら、集中して攻めろとも教わった。
その教えの通りにできるか、サキの身体を使って行われたテストの結果は……?
「……ッ!」
「サキ?」
艶めかしく息を乱していたサキが、痙攣と共に大きく仰け反った後に、ガクンと脱力した。
果てたかな?
問いかけても喋れない様子で、サキはしばらく喘いでいる。
「合格……」
ベッドの上でグッタリとしているサキの頬を撫でてみると、そんなことを囁いてくる。
キスしてほしいと乞われて口付けしてあげたら、とろんと蕩けたまま嬉しそうに微笑んでいた。
……で。
僕はサキから防具破壊スキルを伝授されて、ヴォロスの盾を破壊、自分が使える最強の攻撃スキルで倒すに至ったというわけ。
あの行為が本当に中ボス討伐に生かせる辺り、さすがBLゲームだなぁ。
これで四天王は残り2人だ。
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