【完結】声優憑依〜隠し攻略対象とのエンディングを目指せ〜

第１８話：新スキルと召喚獣

　地の大天使ウリ・ドルフェルは、天界の防衛の要と言われている。

　彼は天使たちの中で最も防御力が高く、防御や反撃のスキルが多い。

　僕が現在使える盾スキルは、みんなウリから学んだもの。

　攻撃の要のミカ・フラムエルが魔物討伐に出かける一方で、ウリは天界へ侵入しようとする魔物や魔族を防ぐ役目を担っていた。

　ミカの対極にあるディアモを倒した後、次に出てくる中ボスは誰なのか？

　ゲーム設定通りなら好感度の高い順で、ミカの次に高いウリかもしれない。

　そう思った僕は、ウリに同行して天界と人界の狭間にある空域を巡回し続けた。

　合間にウリに稽古をつけてもらい、戦技と好感度を上げるのも忘れない。

　ルウのエンディング条件は、全攻略対象のハート３以上。

　ミカは条件達成したから、次はウリの好感度アップを目指す。

　警戒を続けて１週間が経つ頃。

「今日は北東の森がザワついているな」

「魔物の群れが向かってきてますね」

「かなりの数だな」

　防衛の必須スキルとして【危険感知】を持つウリ。

　ウリからその感知スキルを習得した僕も、近付いてくる魔物の大群に気付いた。

　森の魔物が群れを成して接近してくるとしたら、どんなイベントが起きるか心当たりがある。

　おそらく、ウリを対象とする中ボス戦の始まりだ。

「近くまで来る前に、数を減らしてきます」

「気を付けろ。反射スキルを持つものがいるかもしれん」

「はい」

　ウリの言葉に頷いた後、空を見上げた僕の背中に現れるのは、１対の白い翼。

　それは、ルウが作り出した新しい召喚獣。

　ディアモ戦で僕が落馬して負傷したことから、召喚獣に僕を乗せるのではなく、僕と融合させて飛行能力を付与しようってことで作ってくれた。

　これは、毎晩僕の体内にルウの〇〇（自主規制）が注ぎ込まれ、全て吸収されて馴染んでいるからこそ付与できるものらしい。

　そんなわけで、天使たちと同じように飛ぶことができるようになった僕は、迫りくる魔物の群れに先制攻撃を仕掛けに向かった。

　うわ～、モリモリいる……

　まるで野生馬の群れのように、まとまって走り続ける魔物たちが見える。

　それは統制が取れていて、何者かが指示を出して走らせているように思えた。

　ウリが作り出す防壁は天界で最も頑丈と言われているけれど、こんな大群がきたら面倒だ。

　ということで、彼らには僕が新たに得たスキルを食らっていただこう。

　反射を警戒して、自分に【吸収の盾】バフスキルをかけておいた。

　吸収の盾はその名の通りダメージ吸収スキルだ。

　そして、攻撃に使う新スキルはこれ。

　火×光属性攻撃・範囲【浄化の炎龍（改）】

　お察しの通りディアモ戦のイベントスキルだけど、本来の設定とは少し違う。

　本来このスキルは、主人公と炎の大天使ミカ・フラムエルがすぐ近くにいる場合のみ使える絆スキルだ。

　しかし僕の場合は、ミカから羽根を分け与えられ、それが右手に吸い込まれたことで単独使用可能となった。

　右手の甲に炎の形をした紋章付いてるよ。

　俺のこの手が真っ赤に燃える～的な、中二病ハートをくすぐるやつ？

　僕は魔物の群れに向けて、浄化の力をもつ炎の龍を放ってみた。

　瞬時に黒い塵のようになって消滅したのは炎耐性が低い魔物。

　炎耐性をもつものはしばらく耐えた後、光攻撃に負けて崩れ去った。

　残ったのは炎耐性ＭＡＸで体力が多い上級魔物たちか。

「ここは通さん！」

　炎の龍の攻撃を耐え抜いて人界の果てまで進んだ上級魔物たちは、ウリの迎撃で爆散した。

　守りに徹しているウリだけど、もちろん迎撃スキルは強力だ。

　魔物の大群を全て片付け、僕がウリの近くへ戻ったとき、そいつは現れた。

　魔界の四天王２人目は、地獄の番人ヴォロス。

　その二つ名の通り、普段は闇に落ちた魂が取り込まれるという地獄で、逃げようとする魂を見張っている。

「吾輩のペットたちが途中でバタバタ死んでいると思ったら、勇者の仕業か」

　黒いコウモリの翼を動かしつつ、空中に浮かんでいるヴォロスが僕を睨む。

　挨拶代わりに飛ばしてくる土魔法攻撃は、【吸収の盾】にダメージ吸収されて消えた。

「こちら、団体様はお断りだよ」

「……」

　睨み返しながら言ってみると、ヴォロスは黙ってしまった。

　ＡＩが意味を理解できなかったのかもしれない。

　さて、ディアモ戦と同じく大天使との絆スキルが無い中ボス戦だ。

　防御力と生命力は魔界で一番高いといわれるヴォロス討伐、気合で乗り越えよう。