闇夜の華 肆

第32話

「千里？」

女が首を傾げる。

「ねぇ、どうかしたの？」

「帰ります。」

伸ばしてこようとする女の手を上手く交わして、立ち上がる。

未練はない。

所詮は、それだけの関係。

脆いものだ。

「え、ちょっと、」

背後で何かを言っている気はする。

「っっ、千里！？」

でも、そんな目障りな女の声に振り返る事なく、その場を後にした。