第1話 同期の皆さんと顔合わせ
日曜日。僕は今、面接を受けたビルの前にいる。どうやらここはホロスクールV株式会社の本社だったようだ。
VTuberとして採用された。何度見てもメールの中身は変わることはないのに、先ほどから何度も繰り返し読んでいる。心機一転して挑んだ面接に合格したのだ。この事実に僕はとても驚いたと同時にとても嬉しかった。
そして会議室。今回は1人ではない。どうやら僕と同じく面接に合格した人も来ているらしい。
「失礼します」
そう言って中に入るとそこにはすでに何人かいた。
空いている席に着席して、周りを確認する。僕が座った席の対面に1人、右に少し間を開けて1人、右斜め前の席にパソコンが1台。...オンラインなんだろうか?
ちなみに僕以外女性だった。VTuberは女性がなりやすいそうだが、どうしてだろうか。別にしっかりした目標や意志があったら誰でもできそうなものだと思っているが違うのだろうか。(基本VTuberの
しばらくすると時間になったのか、スーツを着た男性が会議室に入室してきた。
「おはようございます。5期生の皆さん。私はホロスクールV公式スタッフ、“水瀬校長”こと水友春樹です。これからよろしくお願いします。私のことは校長とお呼びください」
ここホロスクールVは、名前の通り学校をモチーフとした会社で、ここに所属するVTuberは皆ここの生徒である、という設定である。つまりここにいる4人はクラスメイトということなのだ。
そしてさっき自己紹介した人こそ公式スタッフ──会社の運営側の社員がやっているVTuberのことである──におけるトップの水瀬校長こと水友さんである。
「では皆さん1人ずつ自己紹介といきましょうか。もちろん他言無用ですよ」
当たり前だが、VTuberの“なか”は勝手に後悔してはならない。
自己紹介の時間になり、最初に声を発したのは自分の右側に座っていた女性だった。
「じゃあ、私から。私は
隣で自己紹介する女性は柔らかくおっとりとした声の持ち主で確かに家庭系の配信が似合いそうな人だった。
『えっと...その...は、初めまして、わた、私は
次の自己紹介は僕の右斜め前のパソコンから聞こえてきた。...最後に心の声が漏れ出ていた気もするが、聞かなかったことにした。
彼女は人見知りが過ぎて、見知らぬ人と相対すると固まって泡吹いて倒れる3コンボが決まってしまうらしいのでパソコンで音声通話をしている。少し気弱そうな声をした女の子だったが、同じゲーム好きとして結構話が合いそうだと思った。
「私は
そして次に声を発したのは僕と机を挟んで対面に座っている女性からだった。背が高く、
最後は僕だった。
「僕ですね。僕は、
画面の向こうで
「では、自己紹介も終わりましたので、これからの活動予定...まだ活動はできませんが、それを伝えていきます。まず、皆さん5期生のデビューは4月1日となりますが何かご予定のある方はいらっしゃいますか?」
全員が首を横に振る。皆予定は無いようだった。
「わかりました。その日は1日空けておくようよろしくお願いします。では次に、VTuberとして活動していくために必要なアバターですが、すでに担当の絵師さんは決まっています。それぞれに相手さんのメールアドレスを送りますので、何か希望や相談があれば直接やりとりしていただき、こちらに伝えていただきますようよろしくお願いいたします」
会社側は僕らの採用が決まった時点でイメージやコンセプトに合うイラストを描けるであろう絵師さんとコンタクトをとっていたようだった。まだ契約はしていないので、納得いかなかったら他の人に依頼することもできるらしい。
「ではこれにて今日の会合を終わります。次からは校長ではなく担任の5期生マネージャーさんがきてくださいますので、よろしくお願いします。予定は後日お送りします。本日はお疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
こうして、無事5期生同士での顔合わせが終了した。
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