戦争が、壊すのは、街だけじゃない

星咲 紗和(ほしざき さわ)

第1話 戦争が壊すもの

戦争が壊すものは、街だけではありません。私たちは、戦争が起こるとまず目に見える被害として、建物の崩壊やインフラの破壊を想像します。爆撃で建物が崩れ、炎が街を飲み込んでいく様子は、戦争の象徴的な光景です。しかし、その背後で、さらに大きな被害があることを忘れてはなりません。それは、目に見えない「人の心」の破壊です。


物理的な破壊は、時間をかけて復興することができます。瓦礫の中から新たな建物を建て、道路や鉄道を再び整備することは可能です。しかし、一度壊れてしまった人の心は、簡単には修復できません。家族や友人を失った悲しみ、住む場所や生活を奪われた絶望感、戦争によって引き裂かれた絆。それらは目に見えない形で、人々の心に深い傷を刻みます。


戦争が終わった後も、その影響は何世代にもわたって続きます。戦場での恐怖を体験した人々は、その記憶を抱えて生き続けます。その記憶は彼らだけではなく、次の世代にも伝わり、戦争の悲惨さを知らないはずの子どもたちまでもが、戦争の影響を感じることがあります。例えば、家族を失った孤児、戦争で心を病んだ親に育てられた子どもたちは、戦争の犠牲者といえます。


さらに、戦争は人々の未来をも奪います。若者たちが戦場へと駆り出され、夢や希望を抱くことなく命を落とす。その結果、社会は彼らが築くはずだった未来を失い、戦後の復興にも時間がかかります。国が豊かになろうとする過程で、戦争が一瞬にしてそれを台無しにするのです。経済的にも、人々の精神的にも、その影響は計り知れません。


戦争は人と人との信頼関係も破壊します。戦場では、敵味方を区別せず、ただ生き残るために他者を排除しなければならない状況が生まれます。その過程で、人々は互いを信用できなくなり、疑心暗鬼が広がります。人間関係が崩壊し、戦争が終わった後も、その傷は簡単に癒えるものではありません。


戦争が壊すものは、目に見えるものだけではない。街は再建できても、人の心が壊れたままでは、真の意味での復興はあり得ません。戦争の悲劇を忘れず、二度と同じ過ちを繰り返さないためには、私たちはこのことを強く心に刻んでおく必要があります。


戦争が壊すのは、街だけじゃない。人の心、そして未来までも壊してしまうのです。

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