五話 そうだ王都へ行こう 其の壱
バサラはジータに引きずられるまま、30年も居たラセンを後にした。
(30年も住んだ土地を、弟子に引きずられて。涙が止まらない。爺さん婆さん、元気で居てね)
心の中でそんなことを願っているといつのまにか馬車の中に入れられていた。
ジータとバサラ。
弟子と師。
彼ら二人だけの空間になると同時に、ジータはバサラの胸へと駆け込んだ。
「ちょ、ちょ、ちょ! ダメでしょ! ジータ!」
バサラは急にジータに飛びつかれるものすぐに振り解くと彼女はムスッとした表情で喋りだす。
「むー! 何故ですか! 御師様と二人っきりなんて久々なんだもん! ねえ、ねえ! 御師様! 私達が卒業した後、私達以上の弟子は現れましたか??」
ムスッとしていたのは一瞬ですぐに犬のように表情を変え、ニコニコと話しだす姿を見て、昔から変わってないジータとういう弟子に対して普段通りに接しようと答えた。
「そうだねー、君たち四人を超える子は現れなかったけど、同等の子は居たかな」
「ええ?! 私達と並ぶって相当ですよ! だって、みんな四護聖になっていますし!」
ジータが誇らしげにそう言うとバサラも嬉しそうにした。
「そうだね、ジータ、シンク、グラン、ミカ、君たちは僕が出会った中で最高の弟子だったかな」
「ふっふっ! でしょ! ちょうどですね! みんなで御師様に恩返しをしたくて、色々してたんですけどたまたま、このヴォルカの手記を読みまして、御師様の名が刻まれていて、尚且つ、あなたが神を殺し尽くしたと書いていてすぐにでも連絡をおかけしたかったのですが、あいにく時間がなかなか合わなくて。漸く会いに行ったと思いきや、道場を畳む直前! と言うよりも、御師様、質問をいいですか?」
「え、あ、うん」
「何故、道場を畳むのに自分達に連絡なさらなかったらのですか?」
唐突に鋭い質問に一瞬口籠るも少しして、長く伸びた銀髪を弄りながら口を開いた。
「まぁ、だって、君達は国を守護する英雄。そんな君達の貴重な時間を僕のために割くなんて勿体無いし、こんな片田舎に集まったら周囲の人間にも迷惑だろ? 弟子には誰一人言わず道場を閉めたのは悪いと思う。けど、みんなの若人達の時間を僕が奪うのは一番良くないことだからさ」
「そんなこと、絶対にありません! みな、御師様に感謝しているのです。あなたの教えがなければ私達、いえ、確実に私はここまでの大成を成してません! 御師様、その謙遜しすぎな癖は直した方がいいですね。いずれ、二度目の神殺しを成すのですから」
「えっと、そろそろ聞きたかったんだけど二度目の神殺しって一体何のことだい?」
「あ」
揺られる馬車の中、数分間、沈黙が流れた。
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