唯色を旋る
闇夜に低く穴を穿つ円い月と、明るく縁取られた雲。その美しさに、眩しくもないのに目を細める。
くしゃみをする。暖かな風が頬を撫でる。蝉の声がする。鈴虫が鳴く。雪が積もる。桜が散る。海が煌めく。紅葉が乱れる。さよならをする。また誰かと会う。空が高くなる。星が近付く。枯れた木が泣く。新緑が笑う。空気が褪せる。木々が眠る。ただ四季を巡る。正しきを巡る。只識を巡る。唯、色を旋る。
日は巡る。月が追いかける。雲が時々それを遮る。雨が私を嘲笑う。誰かの背を追う。掴む前に消える。夢だと気付く。現実は暗い。夢を見る。幸せな夢を見る。現実だと気付く。その頃には、とうに遅い。ただ巡る。巡る。巡る。巡って、いつか終わる。唯四季を巡った先に、暗闇が落ちている。拾ったら、夢は終わる。終わって、また始まる。種が芽吹く。光を浴びる。ただ、巡る。
水平線から顔を覗かせる太陽と、塗り潰された蒼。その輝きを、目を逸らすことなくずっと見つめている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます