唯色を旋る

 闇夜に低く穴を穿つ円い月と、明るく縁取られた雲。その美しさに、眩しくもないのに目を細める。

 くしゃみをする。暖かな風が頬を撫でる。蝉の声がする。鈴虫が鳴く。雪が積もる。桜が散る。海が煌めく。紅葉が乱れる。さよならをする。また誰かと会う。空が高くなる。星が近付く。枯れた木が泣く。新緑が笑う。空気が褪せる。木々が眠る。ただ四季を巡る。正しきを巡る。只識を巡る。唯、色を旋る。

 日は巡る。月が追いかける。雲が時々それを遮る。雨が私を嘲笑う。誰かの背を追う。掴む前に消える。夢だと気付く。現実は暗い。夢を見る。幸せな夢を見る。現実だと気付く。その頃には、とうに遅い。ただ巡る。巡る。巡る。巡って、いつか終わる。唯四季を巡った先に、暗闇が落ちている。拾ったら、夢は終わる。終わって、また始まる。種が芽吹く。光を浴びる。ただ、巡る。

 水平線から顔を覗かせる太陽と、塗り潰された蒼。その輝きを、目を逸らすことなくずっと見つめている。

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