家出の後始末
G3M
第1話 帰宅
ドアがガチャリと開いて、妹の絵里子がダイニングルームに入ってきた。よそ行きの花柄ワンピースを着て、ツインテールの髪に赤いリボンをつけている。徹の顔を見るなり、「ずいぶん絞られたみたいね」と言った。
徹はそっぽを向いた。
「そこに座って。お茶を入れるから」と絵里子。
徹がためらっていると、絵里子が背中を押してテーブルセットの椅子に座らせた。「話があるの。」
徹がうつむいて座っている間、絵里子は手際よくフィルターに豆を入れて湯を注いだ。「どこにいたの?」と絵里子。
徹は「キャンプ場だよ」とうつむいたまま答えた。ダイニングルームにコーヒーの香りが充満した。
「ブラックでしょ」と絵里子。
「うん」と徹。絵里子は徹の前にコーヒーカップを置いた。徹は顔をあげて妹の顔をまじまじと見た。
「毒なんて入ってないわよ」と絵里子。
徹はカップを手に取ってコーヒーを一口すすった。「おいしい」と徹。
絵里子は笑った。
徹はその時、絵里子の頬に涙が伝うのを見た。
「ごめんね、お兄ちゃん」と絵里子。
「え、何のこと?」と徹が立ち上がった。
「私がもっと優しくしていたら、お兄ちゃん、家出しなかったでしょ」と絵里子。
「エリちゃんは関係ないよ」と徹。
「私ってお兄ちゃんの妹だよね」と絵里子。
「そうだよ、何で?」と徹。
「もし妹でなかったら、私って何?」と絵里子。
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