魔族だと誤解され追放された、俺は本物の勇者ですけど
宮富タマジ
第1話 追放
リュカは
勇者パーティのリーダーである
ガレスの前に立っていた。
「ガレスさん、お願いです!
俺のスキル『エクリプス・ノヴァ』は
みんなの役に立つはずです
これまでだって
三度もパーティが危機に陥りましたが
その度に俺が使った『エクリプス・ノヴァ』で
皆を救ったじゃありませんか!」
リュカは声を震わせながらも
必死に説得を試みる。
闇のスキルであれ
リュカが仲間たちを救った事実は変わらない。
だが、ガレスは首を振るばかりだった。
「リュカ
お前の言うことはわかる
しかし
問題はそこじゃないんだ
街のみんなが
お前のスキルを怖がっているんだよ」
ガレスの声には
どこか悲しみが滲んでいた。
強大な戦士としての風格を持つガレスも
リュカを追放することには
心苦しさがあるのだろう。
しかし
その決断に迷いはない。
「魔王やモンスターを倒すことよりも
王国の人々からどう見られているか
それが重要なんだ」
ガレスの言葉にリュカは驚愕した。
「え? 魔王を倒すことが最優先なのでは?」
ガレスは首を振った。
「お前が持つ『エクリプス・ノヴァ』は
確かに強力だ
しかし
王国の人々の評価が下がれば
我々勇者パーティは解散を余儀なくされる」
リュカは困惑し
強い拒絶の表情を浮かべた。
「そんなバカな! 魔王を倒さなければ
人類は全滅してしまうじゃありませんか?
王国の評価なんて後回しにして
今は魔王を討つことに全力を注ぐべきでは?」
リュカの言葉は正論だった。
しかし
ガレスは再び首を横に振る。
「リュカ
わかってくれ
お前の気持ちも理解している
だが
民衆の不安が大きくなれば
俺たちの活動は続けられない
それに
王国の後ろ盾がなければ
魔王を討つどころか
冒険すらままならないんだ」
リュカは言葉を失った。
自分が本物の勇者であることを
信じて疑わなかったが
その存在が周囲に
とって危険視されている現実に
直面していた。
街の人々、仲間たち
そのすべてが自分を恐れている。
「俺は勇者です
だけど
まだレベルが低いんです
もう少しだけパーティに
いさせてください!
ここでしか
しっかりと成長できないんです!
もっと強くなって
独り立ちできるようになれば
きっと平和のために
大きな貢献ができるはずです!」
リュカは懸命に訴える。
しかし
ガレスの顔は険しいままだった。
「リュカ
難しいことなんだ
お前の存在がここにある限り
俺たち勇者パーティは
王国からの評価が下がってしまう
これ以上の混乱を避けるためにも
お前の追放を決断した
わかってくれ」
その言葉は
リュカにとって耐え難いものだった。
自分が邪魔者だと
仲間から認識されている。
「そ…そんな……」
リュカの声は震え
肩が落ちる。
しかし
ガレスの決断は覆ることはなかった。
リュカの追放は
そのまま実行されることになった。
「さよならだ
リュカ
お前の未来が
輝かしいものであることを祈っている」
ガレスの言葉は
リュカの胸に重くのしかかった。
目の前の仲間たちが
遠く感じられた。
リュカは一歩
また一歩とパーティの前から去っていく。
自分が信じていた世界が
音を立てて崩れていく感覚だった。
リュカは一人
夜の闇に消えていった。
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