第42話 推しを看病してみた 前編

今日は、いつでも可愛い隣人が俺の部屋で寝ている。熱があるからだ。朱梨や葵みたく、自炊できればよかったのだろうが、生憎そのような技術は習得していない。

不味いものよりもまだ食べられる方がいいだろうと、レトルトのおかゆやポ〇リ、ゼリー飲料などを買ってきた。


扉をノックする。


「はいってもいいか?」


「どうぞ」


「体調はどうだ?あ、嘘はなしで」


「まだちょっとだるいです」


「そうか。食欲はあるか?おかゆ(レトルト)はあるぞ」


「では、お願いします」


「おう、わかった」


熱があっても可愛いのはもはや反則に等しいものがある。煩悩を払いながら、おかゆを湯煎し、皿に盛って葵のところへと持っていく。


「すみません、迷惑をかけてしまって」


「謝るくらいならお礼を言ってほしいものだ」


「…ありがとうございます」


「おう」


「いただきます」


言ったはいいものの、行動が伴っていない。こちらをじーっと見てくるのだ。


「食べさせてください」


「は?」


今何て言った??食べさせてだと…⁉いやいや、まさかね……。


「聞こえなかったのですか、食べさせてください」


気のせいじゃなかった…?余計にわからん。若干声が怒っているし…。


平静を装いつつ、スプーンにおかゆをちょっと掬って口元へ持っていくと、葵は顔を赤くしつつ、口を開けた。いや、雛鳥か!


「おいしいです」


熱があったとしても通常運行の推しなのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る