第12話
「うへー...」
どうも。宵月優希君です。現在1990年11月です。この二年間、特に何があったと言うわけでも無くて平穏に過ごし過ぎたせいでだらけております。それに加えて大日本帝国の海軍所属となりましたので、12日に横須賀鎮守府を始点として行われる紀元二六五〇年記念大観艦式には確実に参加する様にと大元帥陛下よりの御用命を賜りましたので、全然稼働してないし基本的には頭の片隅に追いやっている宵月を地下ドックから引っ張り出してくる必要があります。...はーだるい。全く、軍の階級なんてなければこんなことにはならなかったと言うのに。
大元帥陛下にあらせられましては10日、つまりは明後日の紀元二六五〇年式典にも参列するようにと仰せられまして、一応は大将位を授かっているものとして名目上の華族でも侯爵位が与えられている僕にはそもそも拒否の仕様がないと言う状況であります。因みに公爵位を持ち、なおかつ大日本帝国の極西地域とされる旧アメリカ合衆国(超合衆国に変貌する前の前世アメリカからハワイを抜いたもの)の一部とキューバを合わせた領土及び旧オスマン帝国西部の領土の統括司令官を行っているものは拒否が可能だと言うけど...そもそもとして神州にいる時点で不可能だと言う事には目を瞑っておきたいところです。
―――ってことでね、前世では直接見た事が無かったけれど今世では一定程度見慣れた昭和天皇...じゃなくて、大元帥陛下がいる宮城特設会場において、僕たちは紀元二六五〇年式典に参加していた。海軍大将位を持っている人と言うのは中々に少ない、若しくはその多くが年齢によってくたばっているらしく、最前列にいたのは僕たち含めて80人程度だった。そう聞くと多いようにも思えるけど、これは陸海軍の大将以上の階級を持つもの及び一部の高位華族の当主のみだと言う条件を加味しても単純に国土が前世のそれに比して話にならないほど巨大である大日本帝国の実情を思えば非常に少なくなっている。それに、僕を除けば最前列の全員は大祖国戦争、或いは単純に大戦と呼ばれている前世の第二次世界大戦にあたる戦争を経験しているらしい。流石にね、3年も一緒に過ごせば子供みたいなステラでさえ当時を指揮官級以上として過ごしてきたと言うのは分かりきっている事なのだ。高位華族の当主も軒並み70代80代であるから、言うて45年前に終わった大戦どころか一部はその前の世界大戦すら経験している人もいるみたいだし...本当に、僕の場違い感が大きいものとなっているのは致し方ない事だと思って欲しい。
とはいえ、そんな中に僕も彼等と同等の働きを期待されるのは酷であり嬉しい事でもある。国防の要として、ある程度は貢献しますとも。流石にね、そうでもなければこうしていられないだろうしね。軍属にある以上、国家という存在しえない暴力機関の歯車に為らざるを得ないのは御国の為。総数20億余人の民を守るとするのは当たり前だよね。
参列する中で途轍もなく怯えてはいたけど、逆にここまでくれば何事もなく楽しく入れると言うものだ。一周回って楽しくなると言うのは当たり前のことで、それが僕の性質なのだろう。知らんけど。それでも、一定以上は楽しいと言う感情を持っているのは事実だ。
大量の参列者は、概ね大東亜共栄圏に所属する国家及び大日本帝国の神州外部にある領土からの使者と神州のとりわけ帝都に近い人物などからなっていた。それに加えて各組織の代表級、大日本帝国の友好国などの使者(一部代表含む)からなる参列者は、60億と言われている地球人口の半分を占めるとまで言われる大東亜共栄圏の威容を示しているようにすら思えた。流石というところではあるけど、此処まで来ると圧迫感すら感じてきてしまう。...その圧迫感が、周囲の大戦参加者によるものじゃないとはお世辞にも言いきれないのだけれど。
と言うことで、僕は大人しく紀元二六五〇年式典を粛々と終わらせた。国歌斉唱の際はちょっとだけ圧が、ね...。それ以外は問題なかったと信じたいところだけど、それはそれとしていろいろと終わらせなければいけないことがあるので、僕たちは昼の餐の直後に退席することとした。
色々やる事、と言うのは当然艦艇に関することだ。今回の宵月は一時的とはいえ帝国海軍の所属艦艇となるので、菊の紋章を船首に取り付けなければならないのだ。すぐに取り外すことになるとはいえ取り付けにはそこそこ時間を要することとなるので、早めに横須賀鎮守府に宵月を入港させておかなければならないと言う問題が発生したと言うわけ。3年半前のドイツの時ではあくまでも七国女会議の艦艇として入ったから、フランスのそれとは違うアイリスが描かれた旗を掲げるだけで良かったけど、あれも一種の所属を表す記号だからね。
観艦式は明日午前9時から始まり現在は15時。18時間以内で行わなければならないと言うのもあるけど、そもそも開始が午前9時なので最低でも午前8時くらいには終わっていないと話にならない。その上で始まった工事はしかし、たったの4時間で終わった。上野を除く大和型の戦艦として落成した三隻の戦艦に装備された概ね1.5Ⅿとされる菊の紋章よりもさらに巨大な1.8Ⅿのものが装備された。上野に付けられているものと同じで、現行では最新鋭型ではないものの(最新鋭はアレクサンドリア鎮守府に配備されている
宵月に菊の紋章がつけられてほっとしていたら、「別のドックに艦を移動させてください」と言われてしまったので急いで乗艦して案内の元に別のドックに移動となった。理由は正直分からなかったのだけど、直後に宵明が僕がいたところに入っていったのを見るにまだ換装作業があるみたいだね。...と言うか、イオが十字の紋章みたいなのを外すのかな?あくまでもヴィットーリオ・クイリナーレとしてではなく宵明としてなのだから換装はするだろうけど...。
そんな事を考えている僕の耳に、突如として轟音が鳴り響いた。慌ててさっきの方を見るとついさっきまでは無かったはずの雷雲がさっきの場所に生成されていて、しかも水面が揺れていたので落雷があったのだろうとは思うんだけど...そもそも、そんなすぐに雷が降ってくるものだろうか?ちょっと変だなとは思いつつも、僕はのんびり寝て待つことにした。
イオの宵明が換装を終えたようで艦首近くの上甲板に見慣れた十字の紋章―――確か、イタリア王国のサヴォイア王家の紋章だったはず―――をのせていた。その上にステラらしき人影があるのは何とも言えないのだけど...ステラだってきりっとしているときはなんか偉い人みたいな感じだし、なにかしらサヴォイア王家に関係した立場にあったとかそんなもんでしょ。だからって乗るのはどうかと思うけどね。
これでようやく終わりかなー、なんて思ってたらもう一隻艦艇が入っていくのが見えて驚いてしまう。宵明にはイオとステラしかいないし、宵月には現在僕しか載っていない事から消去法で靜が動かしているものだと思うのだけど...なんだか変な気分になる。あの靜が...と言う感じでね。と言っても、そんな靜も前のドイツでの観艦式の時は水上要塞を動かしていたわけだし、分からない話ではないのかな?一応、イオに聞いてみる。
『ああ、あれですか?靜があなたにドッキリを仕掛けたいので建造してほしいと言ってきたものですよ。対空砲火は表に出さず、埋没式になっています。おかげで見た目的には
名前を聞かなければよかったかもしれない、と言うのは心にとどめておくこととしよう。その後、目算で2.1Ⅿもの巨大な菊の紋章...しかも一般的に付けられる8枚と八枚の計16枚の葉が見えるものではなく、裏側の菊三つと空いた場所に三つのアイリスの花からなる紋章だったのが不思議だった。あれってどっかの皇族家系の紋章じゃないっけ?
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