第13話 いつか
悠斗は、リリアの姿を見るたびに心の中で小さな疑問が膨らんでいた。
「リリアさん、ずっと気になってたんだけどさ。いつもローブを被ってるけど……暑くないのか?」
悠斗は何気なく問いかける。彼女がずっとローブを被り続けていることが気になっていたが、これまで触れる機会がなかった。
リリアは一瞬、手を止めて顔を隠すようにローブのフードをさらに深く被り直す。そして、彼女は静かに微笑みながら軽く肩をすくめた。
「気にしないで。私はこの格好が好きなだけ」
そのあっさりとした返答に、悠斗は少し肩を落とす。
「そうか……」
リリーナも興味を示した様子でリリアに向かう。
「リリアちゃんの顔、ちゃんと見てみたいなぁ……」
リリーナの呟きに、リリアは一瞬だけ、体が固まったようだったがすぐにそれを隠し、
「いつかね」
と言葉を濁した。リリーナもそれ以上は追及せず、
「うん!楽しみにしてる」
と言った。
リリアが素顔を隠し続ける理由に、悠斗はやはり何か秘密があるのではないかと感じ始める。
*
その日の午後、悠斗とリリアは影の力を使った訓練を行っていた。王国の情勢が少しずつ安定しつつあるとはいえ、危険はまだ潜んでいる。そして悠斗は現在、居候の無職である。影の力を活かせるような職業に就けないかを模索しつつさらなる成長のため、影の力を高める訓練を続けていた。
「今日は、影の動きをもっとコントロールできるようにしましょう。影を伸ばして、その形を変えるのよ」
リリアが悠斗に言う。リリアの影の使い方は、とても洗練されている。
悠斗はリリアの動きを真似して影を操作しようと試みるが、なかなかうまくいかない。
「くそっ……難しいな」
「焦らないで、影はあなたの心と繋がっている。心を落ち着けて」
リリアの優しい指導に従い、悠斗は心を静め、再び影を操る。しかし、その時、不意にリリアの影が激しく反応した。
「……え?」
リリアの影が広がり、まるで生き物のように動き出す。彼女の影は自在に形を変え、悠斗が想像していた以上に強力で精密な動きを見せた。
「す、すげぇ……」
悠斗は目を見張りながらリリアを見つめる。彼女の影の技術は、明らかに普通の訓練では得られるものではない。その力に、悠斗は疑問を抱かざるを得なかった。
「リリアさん……君は一体……?」
リリアは一瞬、沈黙した。彼女の手が止まり、口元に淡い微笑みが浮かぶ。
「……内緒」
それだけを告げて、リリアは影の訓練を再開したが、その表情にはどこか哀しみのようなものが漂っていた。悠斗はその答えに納得できなかったが、それ以上は何も言わず、訓練に戻ることにした。
*
その夜、悠斗はベッドに横たわりながら、リリアの様子を思い返していた。彼女の影の使い方、そして素顔を隠す姿勢……何かあることは明白だ。
隠し事をされていたからと言って、リリアに対して何か悪いこと感情が生まれるわけではない。しかし、なぜだか悠斗はこの日寝付くことができなかった。
このまま布団に入っていても寝付けそうもなかったので、用を足しにトイレに行くついでに夜の散歩でもしよう。そう考え布団を出た。
悠斗が外に出ようとすると、居間にある机にリリアが座っていることに気づいた。こんな時でもしっかりとローブをかぶっている。
リリアは、今日この家に泊まることになっていた。特別なことでもなくここ最近はリリーナとかなり仲を深めてよく泊まりに来ている。
そんなリリーナですらリリアの素顔は知らない。
悠斗は、リリアの様子が気になってしまい、ばれない距離感で彼女を観察し始めた。
すると、リリアが鼻歌を歌い出した。
ものすごく懐かしい感じがした。とても心地の良い鼻歌だった。
「あら、起きてたの?眠れない?」
リリアは、悠斗に気づいて鼻歌をやめてしまった。
「あ、あぁ、まぁな」
悠斗は少し、気まずそうに感じぎこちない返事をしてしまった。
「全く。ちょっとお散歩でもいかない?」
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