第9話 『もう一度だけ』
これはカクヨムコンに出してみたいかもです。書いたのは覚えてるんですけど内容忘れてて(数か月前だよ?!)久しぶりに読んだら結構気合い入ってましたΣ(゚Д゚) カクヨムコンに向けて、マ猫泣かせたら勝ちという事でこれから改稿頑張ります!(笑)
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【もう一度だけ】
「お母さんお母さん! 今回の小テストも頑張ったよ、じゃーん!」
「おおお、どれどれ……98点! 桃、頑張りました! お母さんは鼻高々です。いい子いい子」
「えへへ、でっしょー? でも満点取れると思ったのになあ。どこに2点落としてきたんだろ?」
「スーパーで買い物した時に、お金と一緒に渡してきちゃったとか?」
「嘘でしょ?!」
●
昔から学ぶ事が好きだった桃は、中学生になってから前にもまして勉強を頑張るようになった。
そんな桃の将来を考えて、本当は付属の中学に行かせるはずだった。この子だけは苦労をさせないようにと、必死にお金を蓄えてきたのに。
桃は何も言わないけれど、あんなに喜んでやる気を出して頑張っていたのに。
桃の夢、未来への足がかり
●
「ひどくない?! 私、そんなにそそっかしくみえるかなあ」
「あはは、冗談冗談! でも本当に桃はスゴイよ。昔から小テストで点数悪かったことないじゃない」
「そうだったっけ?」
「そうだよ」
●
命は、幸せな未来に手を伸ばしながら生まれてくる。
子供の頃に読んだ物語のそんな一節がずっと忘れられずに、世間知らずな私は愛する伴侶と子供と幸せに暮らすという夢に破れても、突っ走ってきた。
そう、あの人は身籠った私から離れていった。生むと言う私を許してくれなかった。何度話し合ってもあの人の気持ちは変わらなかった。
けれど、桃を生んで育てたいという私の気持ちも変わらなかった。その時の私の決断を後悔した事はなかった。
けれど、今。
揺らいでいる。
桃に悲しい思いをさせるとわかっていたなら。
桃を一人ぼっちにさせるとわかっていたなら。
●
「まあ、スーパーにオマケとしてプレゼントしてきた2点は次のテストで取り戻してくるよ」
「お、すごい自信」
「んで100点満点の花丸テスト、持ってくる」
「……あれ? でもそうすると102点取らないとじゃない?」
「え? うわ! ちょっと待ってちょっと待って! えっと、2点は返してもらうでしょ? でも問題は合計100点分しかない……って事は?」
「あと5秒、よん、さん、意表をついて、ぜろー」
「嘘でしょ?! それに最後ひっど! 異議を申したてるぅ!」
「あはは、冗談♪」
「もー!」
●
神様、最後のわがまま、一生のお願いを聞いてください。
本当の事を告げる前に、一日だけ……ううん、もう一度だけ。あと一回だけ、桃のいつもの笑顔、見させてください。
ごめんね桃。
桃の大好きなご飯、もう作ってあげられない。一緒に映画を見て、笑ったり泣いたりもできない。
桃の人生を幸せで彩ってあげたかった。いつまでもこの子の
もし私が母親じゃなかったら幸せな人生を歩めたはずなのに。ごめんね、桃。ずっと一緒にいれなくて、ごめんね。
でもね。
でも、ね?
お母さん、悪あがきをやめない、諦めない。本気の全力で頑張ってみる。
だから。
だから。
もう一度だけ、いつもの笑顔を見せて?
●
「さあ、次のテストが楽しみだなあ! 『桃が本当に102点取ってきた?!』とかお母さんをとんでもなく驚かせてみせましょう」
「……そうだね。ちなみにどうやって102点って採点してもらうの?」
「私の日頃の行いで」
「……」
「そこ、黙っちゃダメな所だからね?!」
「大丈夫だよ。桃がいい子なのと日頃の行いは、誰が何と言おうとお母さんが保証するからさ♪」
●
神様、一生のお願いです。
豪華な食事も立派なおうちもいりません。私のそばで大好きな人が顔いっぱいで笑ってれば幸せなんです。
嘘をつきません。人を裏切ったり悲しませるような事はしません。困った人を見かけたら、ツラそうな人がいたら全力で助けに行きます。悲しんでる人がいたら、話を聞いてあげて一緒に泣きます。
誓います。
必ず、絶対守ります。
だから。
だから。
神様仏様、お母さんにもう一度だけチャンスをください。私の命を半分こ、でも全然いいです。
連れて行かないで。
大好きなお母さんを私から取らないで。
取ったらキレます。
絶対に怒ります。
泣きます。
泣きっぱなしです。
早起きして、お百度参りしてるんです。
お母さんが元気になるまで続けます。
だから、お願いします。
お願いします。
お願いします!
お願いします……!
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