8.これはノーキャンだねこれはノーキャンだね

「プレノアネゴはココニイマス。オイラハココデサヨナラデス」


「ありがとう、タロ」


「ドウイタマシテデス」


 お礼を言って、タロと別れる。


 タロに連れて行ってもらった場所は、お風呂場だった。


 しかも城壁の外に造られた石材施工の露天風呂。


 岩で囲われた浴槽だけでも結構広い。三十畳くらいありそう。


 洗い場フロアも同じくらいか、やや広い。


 これはもうプールと言っても過言じゃないかも。


「お疲れ様。どうだった? 私たちの新居は?」


 既に浴槽に入っていたプレセアが、浴槽の淵に両腕を肘からペタンと付け、重ねた手の甲に顎を乗せながら言った。


 プレセアは頭にタオルまで乗せていて、全身で露天風呂を堪能している。

 

 力の抜けたリラックスしている表情を見るに、しっかりとご満悦の様だ。


「凄いの一言だわ。もちろん露天風呂もね」


「それはよかった」


 そう言うとプレセアは右方向を指差した。


「脱衣所はあそこよ。お姉様も早くどうぞ」


 洗い場の隅の方に一枚の大きな木の壁がある。


 壁の向こう側が脱衣所っぽい。


「はーい」


 返事をして脱衣所に向かう。


 そこには、上下二段に別れた大きくて長い棚が一つ。


 ご丁寧に脱衣用のバスケットがズラリと並んでいた。


 残念ながら、バスケットは古くてボロボロになってたから使うにはちょっと厳しい。


 これじゃあかえって服を汚してしまう。


 私はドレスを脱ぐと、棚に雑に畳んで置かれている制服の横に置いた。


 プレセアの制服って魔法で作ったのよね? 着脱可能なんだ。


 なんて思いながら浴槽に向かう。


 そして、全裸だ。


 私は今、全裸だ。まごうことなき全裸。


 隠すタオルがなかったので仕方ない。


 以前の私なら同姓だろうと、人前で裸になるのは抵抗があった。


 貧相な体だったから余計に、むしろ貧相だから恥ずかしかった。


 だけど今は違う。


 誰もが認める理想的なナイスバディ!(のはず)


 堂々としていられるわ!!


「ちょっとお姉さま、他人じゃないんだからさー」


 左腕で胸を、右手で下腹部を隠す私にプレセアが呆れて言った。


 ごめんなさい。全然恥ずかしかった。全然堂々と出来なかった。


「今更じゃない?」


「そ、そうだけど……」


 いや、そうじゃない。


 あなたにとっては見慣れたナイスバディだけど、私にとっては初披露で初拝見なんです!

 

 見るのも見られるのも恥ずかしい。


 左手で隠してるのに隠れてない。ほぼ出てる。はみ出てる。溢れてる。


 素敵なお体、どうもありがとうございます!?



「ほい」


 荒ぶる私の心情をよそに、どこから出したのか、プレセアがタオルの入った木の桶を手渡してくれた。


「ありがと」


 渡された桶を使って浴槽の湯をすくい、ザバッと体にかける。


 かけ湯を済ませてということで、いざ、ポチャん。


「う、ん~~」


 いいお湯、いい湯加減。


 四〇度くらいかな? 熱すぎず丁度いい。


 そして景色もいい。


 ん~、絶景、絶景。極楽、極楽。


 夜だから今一遠くは見えないけど、山頂から地上を見渡せる露天風呂なんてそうははないでしょう。


 実のところ、私はお風呂があまり好きじゃない。


 入るまでの準備だったり、体を洗う事が面倒だと思ってしまう。


 ゲームやアニメ、推し活に使う時間が惜しいって感じてしまう。


 だけど、老舗旅館並みの露天風呂が自宅にあったら、多くて週四の私でも週五は入りたくなっちゃうな。

 

 ……にしても、建物は西洋風なのに、お風呂は随分と和風なのね。

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