3.
少し背伸びをしてドアノブを掴んでいる小さな姿を捉えた。
「大河」
思わぬ人物に驚いた声を上げたことで気づいたらしい安野と今井が、起き上がることさえ一苦労しているところを手伝ってもらった。
二人にお礼を言っている時、小口と共にそろそろとやって来た。
「⋯⋯どうしたの、大河。ママ、熱を出したから、ごめんだけど一緒に遊べないんだ」
とはいえども、一緒に暮らし始めてからというもの、今日という今日まで一緒に遊んだことはなかった。
だが、それは仕方ないことだ。姫宮にとってもあまりにも勝手なことで大河と引き離され、数年もの間一緒にいられず、血の繋がった親子とはいえ、赤の他人も同然な相手となんて遊びたくもないだろう。
そんな懐くはずもない息子が一体姫宮のところへ何をしに来たのだろう。
すぐに目を逸らされ、そのまま俯いたままとなった大河に何と声をかければいいのか働かない頭で何とか考えようとしていた時、大河の後ろにいた小口が言った。
「ほら、ママさまに渡したいものがあるのでしょう」
渡したいもの?
その時、大河が何か紙らしきものを持っていることに今さら気づいた。
小口に促された大河はその持っているものを緊張気味でベッドに置いた。
その瞬間、そそくさと去っていく大河の後を小口が追っている姿を、呆然と見つめていた。
「急にどうされたのでしょうね」
「なんでしょうね」
首を傾げている二人に脇目を振らず、大河が置いていったものを見た。
クリスマスツリーらしきものとプレゼント箱らしきものの折り紙だった。
どちらも大河が一生懸命折ったのだと伺わせる、少しよれた箇所もあり、それがかえって愛着が湧くものだが、何故置いていったのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます