愛したいオメガ達への聖夜の贈り物
兎森うさ子
1.
ぱち、と目を開けた。
いつもならばなかなか目覚めないが、今日だけは違った。
急いで枕元を見ると、愛賀は目を輝かせた。
赤地にクリスマスツリーやサンタなどが描かれた包装紙がそこに置かれていたのだ。
『きたぁ!』
その大きな包みを持って、階段を駆け下り、リビングへと直行した。
そこには朝食を準備している母親と席に座り、テレビを眺めている父親の姿があった。
『おとーさん! おかーさん! ぼくのところにサンタさんがきたよ!』
勢いよくやってきた息子に驚きを隠せないでいる両親であったが、掲げている物を見て目を細めて笑った。
『良かったねぇ。愛賀がいい子だったからサンタさんが来たのよ』
『ねぇねぇ! 開けてもいい?』
『いいよ』
母親の返事を聞いた後、待ちきれないといったように大雑把に包装紙を破り、その包まれていた物を見て愛賀は歓声を上げた。
『ぼくのほしかったやつ!』
『欲しいものがもらえて良かったな。サンタさんにお礼を言わないとな』
『うん!』
食べるのをそっちのけで遊ぼうとする息子に母親が「こら、食べてからよ」と言われたが、その顔は綻んでいた。
その特別な日はとても楽しみで、嬉しくてもらった物も大切にしていた。
──オメガという第二の性になるまでは。
日常の一部と化した両親のいさかいを聞きたくないと耳を塞ぎながら思った。
『⋯⋯僕がオメガになっちゃったから、いい子じゃなくなったから、サンタさんからプレゼントはもらえない⋯⋯』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます