5.
「愛賀。お前はどんな格好を想像しているんだ」
「あ、いえ⋯⋯。スーツ以外の慶様を見たことがありませんでしたので、違和感が⋯⋯」
心外だと言う御月堂に恐る恐るながらも素直にそう述べると、目を瞠った。
「⋯⋯違和感がなくなるよう、スーツ以外の格好をなるべくする」
唸るように言う彼に、そこまで無理にしなくていいですよと声を掛けようとするが前に、大河の方へ向いた。
「⋯⋯で、アニメとやらは終わったようだが、次は何をするんだ」
少し身を引いた大河は伺うように小口の方へ顔を向けたかと思うと、おもちゃ置き場へと向かった。
当たり前にその後をついていく御月堂に姫宮は行こうかどうしようかと迷っていた。
「行けばいいじゃないですか」
いつもの強弱のない口調で言ってきた。
「別に躊躇うことではないでしょ」
「⋯⋯小口さんは行かれないですか」
「なんで私が行く必要があるのです? 親子の仲良くするきっかけに私は邪魔でしょう」
小口の言い分は正しくはある。
小口はあくまで大河の世話係であって、今日は御月堂までもいるのに小口がいたら仲良くする機会を失うかもしれないという考えなのだろう。
けれども、先ほどのように常に大河と一緒にいるからか、大河の言いたいことをある程度分かっている様子で、そういった面でいて欲しいと思った。
だが、いつまでも大河が自分に向く気がないからといって、誰かを隔てて会話をしても意味がない。
話すことも得意ではない御月堂が今日は積極的に話しかけているのだ。自分が怖気付いている場合ではない。
「分かりました。私、大河達のところへ行ってきます」
「はいはい、行ってらっしゃい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます