第2週目 とりあえず、沈んだ

 一〇月二一日、予約してあった銘柄が、約定されたと通知が来る。


 仕事中なのに、チラ見。

 おお、上がっている。

 あまり良くないが、新興株で爆上がりを取った。

 やめれば良いのに、利確をしていた銘柄を、再び買い直す。


 そう前場では先週のマイナスが消え、四万ほど勝っていた。


 夕方、帰ってからアプリを開き確認。


 そう、高値になって買い足したところからの急降下。

 勝ち分が消えた。


「まっ、まあまあ。明日には上がるさ」



 一〇月二二日。

 昼…… 見たときには、確かにほぼチャラまで戻っていた。

 そうそれが、欲深な素人には見えない最後の糸だったようだ。

 

 愚かな私は、欲をだして放置した。

 そう、損切りは早く。

 ―― それが鉄則と知っていたのに。


 ただそれが、経験したものと、していない者の差であろう。

 希望、それは甘美な夢。

 きっと上がるさ……


 そんなものは、愚か者の証明。

 泡沫夢幻ほうまつむげんである。


 その晩辺りから、陰線が続いていますと、ニュースが流れる。


 陰線いんせん とは、株価の動きをローソク足にしたとき、始値に比べて終値が安かった場合に、その黒い線を陰線といいます。 逆に、始値に比べて終値が高かった場合に白で表示し、その線のことを陽線といいます。 黒い部分が長いほど初値から大きく下がって終わったということになります。


 結局陰線は、二三日まで続き、十一日連続陰線は歴代二位だとか。


 そう、どうも私は、運が無いというか、ついていないようだ。



 一〇月二三日。

 株価は順調に下落。

 四万円ほど落ちた。




 一〇月二四日。

 また、危ないものに手を出す。

 新興株、それも低価格帯の株を買う。


 買おうとして、手間取っている間に、三円ほど株価が上がる。

 待ってくれ、それ以上上がると……

 買い損ねた……


 一応買ったが、調整でいったん下がり、再び上がっていく。

 二万ほど利益は出たが、この経験で、デイトレーダーは偉くそして過酷と言うのが分かった。

 一分一秒に命をかける。それは過言ではない。


 よい子の皆は、仕事中に株の売買などしちゃいけないよ。



 一〇月二五日。

 だが私は、今日もスマホを睨む。

 だーが、今日も今日とて、下がる。

 ひたすら……


 登録をした銘柄はヒャッホー状態。

 そう、すべてが下がる。

 売れる物は売った。

 残りはすべて、上がることを希望をして、塩に漬ける。




 この一週間。

 利確は、八万円ほどプラス。

 ただ、含み損益を一二万円ほど残す。


 来週は、選挙の結果により、大暴落が予測されている。


 つくづく、始める時期を間違えたようだ。



 残った銘柄は今期の業績とかは良いものばかり、だめだと思いながら、来週こそは上がれと希望を託す。



 三〇万までしか入れないと思いながら、気がつけば投資金は二〇〇万を超える。

 いきなり後がない。


 来月には、孫の誕生日が来る。

 きっと息子から、買って頂戴と、希望リストが来るだろう。


 頑張れ私。

 未来は、きっと明るいはず。


 マイナスは四万円。


 少し上がれば、取り返せる。

 今日も、甘い夢を、見る。


 来週こそは……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る