【リメイク版】貴族家を追放された俺がゴミスキルと馬鹿にされた『鑑定』と見下された下級職『鍛治師』で最強になるまで。

ピコ丸太郎

0 プロローグ

「……なぜっ……。何故、貴方を殺さないといけないのです?」

 

「民がそれを求めているのだから……」

 

「……魔王である私に敗北という名の砂を付けたのは貴方だ!本来なら……。うううっ……。出来ない!貴方を殺すなど、出来る筈がない。……何故……」

 

「……世界を救ったと思った……。そして、人を救ったと……。だが、争いは争いを生む。それを断ち切らねば、本当の平和など来ない。それを知った」

 

「……争いを止めるため、平和を唱えて説得し……それでも争いは止まらなかった。……人の争いを止めるには力が必要だと悟った。


 そして……、その力を持って支配すれば、人はそれに従い平伏し、争いを止めるだろうと。


 気付けば、魔王となり数多の暴虐を行った。……恨みを買い、呪われる身となった。


 それでも……、争いが終わるならそれで良いとも思った」

 

「お前は人よりも愛が深い。人を愛し慈悲深い。……しかし、俺にはもう人を愛する事は出来ない。


 人に裏切られて……。俺には救えなかった。お前の『夢幻』を使って、俺の存在をこの世界から消せ。


 そして、お前は魔王としてではなく、この世界を救った勇者として……。もう……、時間は残されてない…………」



◇◆◇◆ ◇◆◇◆ ◇◆◇◆



 

 史書

 

 我、『剣聖』を継ぎし者。

 第二代剣聖 ゲオルド・ラグームラン が書す。


 数百年に及ぶ魔族との戦に終止符を打った者、名は ヴォルクス 別名『創剣者』。

 人は『武具を操りし者』と呼称する。

 国は賛辞を贈り、剣聖の名を与えた。

 同時に、名を改めて ヴォルクス・アルフォンス と称した。


 終戦は平和の知らせとなったが。


 強大な力を持つその存在を世界は恐れ、民は恐れた。

 長きに渡った戦に終止符を打った者。

 その者による新たな支配から逃れるために。


 再び、世界は恐怖に堕ちる。


 ゆえに、民は新たな強き者を欲した。

 その者を滅するために。


 我、ゲオルド・ラグームラン の先代剣聖にあたる者を。


 我、『軍神』を使いヴォルクス をち、これを納めんとする。

 死する時、なんじの源を『神木』に遺し絶命に至った。

 我、『夢幻』を唱えて世から『ヴォルクス・アルフォンス』の名を消す。


 これすなわち、剣聖の懇願こんがんによる。

 

 剣聖 ヴォルクス・アルフォンス 誓約の下。

 この書を封印し継承を禁じた。

 ヴォルクス死んで長い眠りにつく、

 剣聖より創剣されし刀剣 アレクサンドロス に捧ぐ。


『封されし史書』

 著:ゲオルド・ラグームラン




 ◇◆◇◆ ◇◆◇◆ ◇◆◇◆ ◇◆◇◆


 ある日の事。

 それはルディが加入試験を終えた翌日の朝。


「こんにちはああ!今日の分ってもうありますかね?」


「おう、アンタかい。来ると思ってな、用意しといたぜっ。今日も早いな!」


 やけにテンションの高い少女がカウンターにやって来た。だが、ギルド長の グレゴルド は慣れた様子で少女の求めている物をカウンターの上に用意した。


「これが昨日、試験者が作った物だ!気に入ったのあったら取っていきな」


 ケースから取り出してカウンターの上に並べられた物は、数本のダガーナイフやショートソードだ。それらは、新人が加入試験で作成した物である。


 カウンターの前に立つ少女は、その中にある一本のダガーナイフを手に取り――。


「えっ……えっ、えっ、……あわわ、ええええええぇ!?」


 その一本を手に取った瞬間、絶叫のような大声を上げてピタっと身体が固まってぶるぶる手を震わせていた。


「ちっ、なんだよ!いきなり大声出すな!」


「だっ……だってこれっ……。これ、誰が作ったんです?」


「おう。確か今度うちに加入が決まった……ルーデン――なんとかって奴だった気がするな」


「この人、男ですか?女ですか?……ってか、どこ行ったか分かりますか?」


「そりゃあ男だけどよっ。いやいや、どこ行ったかなんて知らねえよ!また明日来るだろ――」


「明日……?じゃあまた明日来ます!じゃあここにこのお代置いときますね!」


 そう言うなり、その少女はカウンターの上に大量に金貨が入った袋を勢いよくポンっと置いて出て行った。


「おいおい!この金、多過ぎるぞおお!?」


「いいえ!!恐らく全然少ないと思いますが……受け取ってください!じゃあ失礼しますっ」


 少女はそのダガーナイフを大事そうに抱えながら、帰宅の途上である。


「はああっ……本当、惚れ惚れしちゃうこの外見!はああっ……まったく新人とは思えないわ!ああぁっ……早く会ってみたい!ルーデンさんって、どんな人なんだろお?」


 その声は、この街の大通り中を響かせたらしい。

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