第49話 女子会 その1
結衣の大輔への誤解が解け、二人の関係は元のような温かさを取り戻していた。学校生活もまた、いつも通りの穏やかな日々に戻り、クラスメイトたちは、仲の良い二人の姿を微笑ましく見守っていた。大輔と結衣の間にあった緊張感は、まるで嘘だったかのように消え去っていた。
その一方で、遠くからその様子を見守る者がいた。西園寺だった。彼は、大輔と結衣が再び親しげに話しているのを見て、疑念が頭をもたげた。
(もしかして…城山君が浅見さんに真実を話したのかもしれない)
そんな思いが西園寺の胸をざわつかせた。しかし、二人に直接聞く勇気はなく、ただ遠巻きに観察するしかなかった。時折、大輔と結衣が交わす笑顔を見るたびに、彼の胸には微かな焦りが広がった。
その様子を、みゆきと咲希も密かに見ていた。結衣から大輔とのすれ違いについて聞かされていた彼女たちは、西園寺の態度が何を意味するのかをほぼ確信していた。
「やっぱり、西園寺君が関係してたんだね。」
みゆきは小さなため息をつき、そっと呟いた。
「そうだね。あの顔を見ればわかるよ。いつもの余裕のある表情ではなく、なんだか、焦ってるように見える。」
咲希も同意し、少し眉をひそめた。
その日の放課後、彼女たちはカフェで女子会を開くことにした。学校近くのカフェは、夕方の柔らかな光に包まれており、店内にはほんのり甘い香りが漂っていた。木製のテーブルと暖かい照明が、安心感を与えるような場所だった。
みゆき、咲希、梨香、そして結衣の4人が、ふかふかのソファに腰を下ろし、テーブルを囲んだ。目の前には色とりどりのスイーツと、ふわりと湯気を立てる紅茶が並んでいた。
「さて、まずは答え合わせから始めようか。」
みゆきがリーダーシップを取って、和やかな声で切り出した。
「文化祭の時に葵ちゃんが言ってたこと、そのままだったよね。」
咲希が微笑みながら、紅茶のカップを手に取った。
「そうだね、大輔君が他のクラスの子に興味を持つなんて、考えればすぐにわかることだったのに…。本当に恥ずかしい。」
結衣は頬を赤らめながら、小さな声で答えた。
みゆきは、彼女の言葉に安心したように頷きながら、続けた。
「結局、鈴木さんへの手紙も、誰かに頼まれただけで、大輔君自身の気持ちではなかったってことがわかったわけだしね。」
「文化祭の時、葵ちゃんが言ってたこと、そのままだったよね。結衣、誤解してたことを正直に認めるのは、本当にすごいと思うよ。」
咲希が、結衣の肩を軽く叩きながら微笑んだ。
「正直、私も最初は勘違いしてたの。大輔君が他の女の子に興味を持ってるって思っちゃって…。でも、彼は嘘をつくような人じゃないって、今ならわかる。」
結衣は少し恥ずかしそうに、紅茶を一口飲んでから静かに言った。
みゆきは、その言葉を聞いて、優しい眼差しで結衣を見つめた。
「大輔君のことをちゃんと信じることができるようになったって、すごく大きな一歩だと思うよ。」
結衣は、その言葉に少し安堵の表情を浮かべた。しかし、次の瞬間、咲希が少し真剣な表情で言葉を続けた。
「でも、西園寺君の態度、ちょっと気になるよね。結衣と大輔君が仲直りしたことに、あまり納得していないように見える。」
「確かに、彼は私に話しかけようとしてた時が何度かあった。でも、いつもその場には大輔君がいて…だから、たぶん私たちの関係に何か複雑な感情を抱いていたのかもしれない。」
結衣は、遠くを見るような目で、当時の出来事を思い返していた。
「だからといって、そんな行動をするのは間違ってるよ。どうせ、西園寺君を問い詰めたってはぐらかされて終わり……」
咲希は少し怒りをこめた口調で言った。
「うん、私たち4人は、くだらない噂や誤解に振り回されないようにしよう。」
みゆきは、その言葉で皆を安心させるように、笑顔で締めくくった。
夕陽がカフェの窓から差し込み、オレンジ色の柔らかな光が4人の顔を優しく照らしていた。友情の絆が一層深まった瞬間を感じながら、彼女たちはいつも以上に笑顔を交わし合った。
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