第33話 嫉妬
文化祭の準備で校内は活気に満ちあふれていた。教室や廊下では生徒たちが飾り付けや出店の準備に忙しく動き回っている。大輔もクラスのブースで準備を手伝っていたが、ふと目に入ったのは、クラスの飾り付けを担当している結衣の姿だった。
その隣には、学園のイケメンである西園寺が立っていた。彼は、結衣の手伝いをしているようで、軽やかに商品を並べたり、店のレイアウトを調整したりしていた。
「西園寺君、ありがとう。助かるよ!」
「気にしないで。これくらいお手の物だからさ。それに、浅見さんの笑顔を見るためならね。」
「ふふっ。冗談ばっかり。」
「浅見さん、これ売るのなら、俺の全力見せちゃうよ?」
「ふふっ、西園寺君、それはちょっとやりすぎじゃない?」
結衣がくすっと笑い、その場は和やかな空気に包まれた。
その笑い声が、どうにも耳にこびりつく。まるで2人の距離がますます近づいているように感じ、大輔はその場から目をそらした。自分が何を感じているのか、はっきりとはわからないが、胸の奥に重たい感覚が広がっていく。
(モヤモヤするけど、美男美女は絵になっていて何も言えないね……。)
大輔は何かを振り払うように頭を軽く振り、思い切って結衣に声をかけることにした。
「結衣さん、僕も少し手伝おうか?」
「あ、大輔君!ありがとう、助かるよ!」
結衣はすぐに大輔を優先し、彼に近づいて仕事の説明をし始めた。その瞬間、西園寺の表情が一瞬だけ曇るのを大輔は見逃さなかった。
(西園寺君はどうしたんだろう……。あんな表情は珍しいな。)
西園寺はいつも通りの余裕のある態度を保ちながらも、どこかイライラしているように見えた。そして、何かを言おうとしたが、結衣がすでに大輔に向かって楽しそうに話していたため、西園寺は言葉を飲み込む。
「浅見さん、あとでまた手伝うから、今は城山君と頑張ってね。」
西園寺は無理やり笑みを浮かべ、軽く手を振ってその場を去っていった。その背中を見送る結衣の目には特に感情はなく、大輔に再び視線を戻すと、にっこりと微笑んだ。
「さて、大輔君、これからどうしようか?」
その優しい笑顔に、大輔は少し安心したような気持ちになったが、同時に複雑な感情が胸に残ったままだった。結衣が自分を優先してくれたことは嬉しかったが、同時に西園寺とのあの和やかなやり取りが頭から離れなかった。
(結局、西園寺君のこと、気にしすぎてるのかな…。)
大輔は結衣の隣で仕事を手伝いながらも、心の中でそのモヤモヤをどうにか消そうと考えていた。結衣の笑顔を見ていると、少しずつ気持ちが落ち着いていくような気もしたが、まだ完全に安心できるわけではなかった。
文化祭の準備は順調に進んでいたが、大輔の心の中ではまだ整理しきれない感情が渦巻いていた。
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