第31話 文化祭の準備
第31話 文化祭の準備
定期テストが終わり、教室は文化祭の準備で活気に包まれていた。クラスメイトたちは班ごとに分かれ、それぞれの役割を確認しながら忙しなく動き回っている。大輔も自分の役割を果たそうと、買い出しの計画を立てていた。
「じゃあ、尾上さんと結衣さんと一緒に買いに行く日、もう決めちゃおうか?」
大輔が尋ねると、みゆきが手を上げた。
「了解〜。でも、買った物の保管場所を、笠井先生に先に聞いておいた方がいいかもね。あっ、そうだ、大輔君と結衣で先生のところに行ってもらっていい?私の方で、お店リストを作るから。」
「了解。じゃあ、みゆきはリストよろしくね。」
結衣がみゆきに感謝の言葉を伝え、大輔に向かって微笑んだ。
「じゃあ、大輔君行こっか?」
「そうだね。じゃあ、尾上さん行ってきます。」
「ふふふ、二人でゆ〜くり行ってきてね。」
みゆきが茶目っ気たっぷりに言うと、結衣は頬を赤らめた。
「もお〜、みゆきったら…」
「じゃあ、結衣さん、一緒に先生のところへ行こうか。」
「う、うん。」
結衣は少し照れくさそうに頷き、二人で職員室へ向かう。
職員室で笠井先生に事情を説明すると、先生は快く了承してくれた。
「先生、飲み物などを保管する場所はありますか?」
「うん、3日程度なら更衣室に置いても構わないよ。重たい物は分けて運ぶと良いかもな。」
「ありがとうございます、先生。」
ホッと胸を撫で下ろす大輔に、先生も微笑みながら見守っていた。
職員室を出た後、結衣がふと口を開いた。
「大輔君って、先生と話している時もしっかりしてるよね。頼りになるなぁって思って見てたよ。」
「そ、そうかな?」
突然の褒め言葉に、少し驚きつつも嬉しそうに照れ笑いを浮かべる。
しばらく沈黙が続いた後、大輔は小さな声で続けた。
「僕からすると、いろんな人と話せて、気配りもできる結衣さんは本当に素敵だと思うよ。すごく尊敬してる。」
「す、素敵って… そ、そんな風に言われたら… て、照れるんだけど……」
結衣は顔を赤くし、小さな声で恥ずかしそうに応えた。
すると、急に別の声が飛び込んできた。
「大輔せんぱ〜い!」
梨香が明るく笑いながら近づいてきた。
「えっ?」
大輔が驚いて振り返ると、梨香が結衣の表情を見て、不思議そうに首をかしげた。
「結衣さん、どうしたんですか?そんな顔を赤くして。」
「な、なんでもないよ。それより梨香、文化祭の準備は順調?」
「はい。初めての文化祭で、展示と射的をやるんですけど、結構苦労してますね。」
「射的かぁ、すごいね!お祭りみたいだし、楽しそうだね。」
「そうなんです。小さい頃からずっとお祭りが大好きで、射的って憧れてたんです。だから、今回できるのが楽しみで!」
「そっか〜。それならすごく楽しみだね。頑張ってね。」
「はい!結衣さんもぜひ来てくださいね! そうそう。大輔先輩は来ることは決定です!」
梨香が期待を込めて、目を輝かせながら言う。
「決定なんだ… まあ、葵のクラスだから行くけどね!」
「む〜。素直じゃないですね。そこは、梨香に会えるからって言うとこだと思いますけど」
「じゃあ、私と大輔君で2人で行こっかなぁ~」
「駄目で〜す。結衣さんは、みゆき先輩達と来てください!」
「いやで〜す。大輔君と行きます〜。 ねっ。だ.い.す.け君」
(いやいや。突然そんなことを言われても困るんだけど。)
大輔は少し顔を赤らめつつ、結衣を見上げるように言った。
「え、えっと。 文化祭の休憩は当番制だから、僕と結衣さんは休憩時間が違うから一人で行くね。」
大輔の言葉にぱ〜と明るい表情に変わった梨香。反対に口を尖らせてちょっとムッとしている結衣。
「じゃあ、梨香さん。 尾上さんが待ってるから行くね」
「は〜い。大輔先輩、準備頑張ってくださいね〜。」
少し機嫌を悪くした結衣と一緒にクラスへ戻る途中で結衣がそっと大輔に近づき、耳元で囁くように言った。
「ねぇ、大輔くん…私とは二人で回ってくれないの?」
その甘い声に、大輔の心臓が一気に高鳴り、思わず顔が真っ赤になってしまった。
「えっ、う、うん…」
しどろもどろで答える大輔。
その様子を見ていた結衣が、照れている大輔を見て少し機嫌を直した。
大輔と結衣は教室に戻り、待っているみゆきに文化祭の買い出しの報告をすることにした。
「みゆき、ただいま。先生からOKもらったよ!」
(ん?なんか大輔君、今日はいつもと違う感じ? 顔が赤いし…はは〜ん。結衣が何か言ったな。)
「おかえり〜。あれ、なんか大輔君、顔が赤くない?」
「えっ?そうかな?」
大輔は慌てて顔を手で覆い、目をそらした。
「ふ〜ん、怪しいね。結衣、まさか何か言ったんじゃない?」
「な、なにも言ってないってば!」
結衣も焦り気味に言いながら、視線を泳がせる。
(わかりやす〜い。この二人、絶対に何かあったな…おもしろい。ふふ、結衣が照れてるなんて、珍しいじゃない)
その時、突然教室のドアが開き、西園寺が現れた。
「浅見さん、ちょっと手伝ってほしいんだけど、いいかな?」
西園寺はさりげなく結衣に声をかけ、笑顔で近づいてくる。大輔はその様子に思わず視線をそらし、少し落ち着かない様子を見せた。
「えっ、私? 何を手伝うの?」
結衣は驚きながらも返事をした。
「ちょっとね、文化祭の装飾の確認を手伝ってほしいんだ。君のセンスが必要なんだよ。」
西園寺は自然に結衣の隣に立ち、笑顔で見つめる。その距離の近さに、大輔は胸の奥がモヤモヤし始めた。
大輔は胸のざわめきを抑えようとするが、視線が勝手に二人に吸い寄せられてしまう。
「え、でも私、まだみゆきたちと…」
結衣は戸惑いを見せながらも、西園寺の視線を感じてどうするべきか悩んでいるようだった。
「まぁまぁ、大丈夫だよ、浅見さん。少しだけだからさ。」
西園寺は余裕の笑みを浮かべる。
「ごめんね、今ちょっと手が離せなくて…。また今度手伝うね!」
「そっか、じゃあまた機会にお願いしようかな。」
西園寺はそう言いながら軽く肩をすくめ、教室を出て行った。
西園寺が去ると、尾上がニヤリと笑い、結衣に向かって耳元で囁いた。
「ねえ、大輔君って今ちょっと嫉妬してたんじゃない?」
(えっ?? 大輔君って嫉妬してた?)
結衣は尾上の言葉に反応し、ドキッと胸が跳ねる。
「結衣、明日は明里と咲希の4人で女子会決定だから、これ決まり!」
「も〜、そんなんじゃないって!」
なぜか顔が真っ赤になった結衣を見た大輔は、困惑気味に声をかけた。
「結衣さん、ど・どうしたの? 顔かなり赤いけど……」
「いや、なんでもないよ!」
結衣は慌てて答えるが、顔はさらに赤くなっていた。
「ふふ、じゃあ文化祭は二人でラブラブタイム作ってあげよう!」
みゆきは、二人の間に漂う微妙な空気を楽しそうに見守りながら、いたずらっぽく結衣の肩を軽く叩いた。
「も〜、そんなんじゃないってば!」
結衣は焦りながら否定するが、その声には少し照れが混じっていた。
大輔は、二人のやり取りが聞こえず
結衣が西園寺のことで顔を真っ赤にしていると勘違いしていた。
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