第28話 文化祭の準備

 6月中旬に予定されている文化祭の話し合いは、4月から文化祭実行委員のリードのもと、少しずつ進められていた。文化祭は毎年学校の一大イベントで、クラス全員が一丸となって準備する。大輔たちのクラスは、今年はカフェテリアを開くことになった。各クラスでアイデアを出し合い、ついにカフェテリアの企画に決定したのだ。




 本日のLHRロングホームルームでは、文化祭に向けた具体的な役割分担が行われることになった。文化祭実行委員が前に立ち、メニュー、装飾、宣伝、ドリンクや食べ物の提供など、各係について説明していく。




「次に、ドリンク係を決めます。こちらは、お茶と炭酸飲料をメインに提供します。誰か希望者いますか?」と、実行委員が声を上げた。




 一瞬の静寂の後、クラスメイトの何人かが手を挙げたが、すぐに決まらなかった。少しの間を置いて、大輔が意を決して手を挙げた。




「じゃあ、僕がドリンク係をやります。」




「ありがとう、城山君!他にも手伝ってくれる人いるかな?」




 実行委員がそう問いかけると、尾上みゆきが手を挙げた。これで、大輔とみゆきがドリンク係としてウーロン茶とコーラの提供を担当することが決まった。




 さらに、買い出しチームも同時に決まった。結衣さんもそのチームの一員に選ばれており、大輔とみゆき、そして結衣さんの3人で買い出しを行うことになった。




 大輔は少し緊張していた。最近は、結衣さんのグループと一緒に食事をする機会が増え、友達の飯田咲希や尾上みゆき、松本明里とも少し話すようになっていたが、まだ完全に打ち解けている感じはなかった。しかし、文化祭の準備を通じて、さらにクラスメイトと仲良くなれるかもしれないと期待していた。




 LHRが終わると、大輔はみゆきに話しかけた。「あの、尾上さん。買い出しのことだけど、結衣さんも交えて放課後に打ち合わせしませんか?」




 みゆきは笑顔で答えた。「了解!じゃあ、私から結衣に声かけておくね。放課後、結衣の席に集合しよ〜!」




「了解です。よろしくお願いします!」




 みゆきはすぐに結衣のところへ走り寄り、大きな声で呼びかけた。「ゆいちゃ〜ん!放課後にここで打ち合わせね!」




「え?何かあった?」結衣が少し驚いて返事をした。




「うん、大輔君と文化祭の買い出しの打ち合わせだよ!」




「わかった。じゃあ、放課後に話し合おうね。」




 みゆきはニヤリと笑って言った。「む〜、なんだか普通の反応だね。じゃあ、大輔君に私と二人っきりで買い出しに行こうって言ったら、どうする?」




 結衣は少し頬を膨らませた。「はぁ〜、何よそれ。」




 みゆきはにやりと笑い、「ねえ、変わってあげようか?大輔君とのドリンクづくり、羨ましいでしょ?」と結衣をからかい始めた。




 結衣はすぐに顔を赤くして、「べ、別に羨ましくなんかないし!普通にみんなでやるんだから!」と焦った様子で反論する。




 みゆきはその反応を見て、ますます楽しそうにからかう。「あっれれ〜?おかしいな〜?」とお馴染みの某名探偵のセリフを真似て、さらに結衣を追い詰める。




「な、何よ!某名探偵のセリフ、パクらないで!」結衣は不満げに言いながらも、思わず笑ってしまう。




「てへ!」みゆきは舌を出し、得意げな表情を浮かべた。




「冗談だって。でも、本当に大輔君の話になると、結衣は表情が豊かになるよね〜。」




 その後、放課後に3人が結衣の席に集まり、打ち合わせを始めた。みゆきがリーダーシップを取り、スムーズに進める。




「さて、買い出しの場所はどこにするかだけど、何か候補はある?」




 大輔が提案した。「駅前のドラッグストアが第一候補かな。予算的にも、販売価格が安いから、飲料やコップ代を下げられると思うんだ。」




 みゆきは頷いて、「それいいね。結衣もどう?」




 結衣は笑顔で同意した。「うん、賛成。」




「じゃあ、決まりだね!買い出しはいつにする?」




「早く買っても保管場所がないから、テストが終わった後の6月上旬がいいんじゃないかな?」大輔が提案した。




 みゆきは驚いた様子で、「げっ、テストのこと忘れてた!まあ、それでいいよね、結衣?」




「うん、それでいいよ。」




「じゃあ、僕はドラックストアを少し回って、価格を調査しておくね。」




 その言葉に、みゆきは肘で軽く結衣に合図を送る。結衣は少し戸惑いながら、「えっ?私も…ついて行っていいかな?」と控えめに大輔に聞いた。




「もちろん!」大輔は笑顔で答える。




「尾上さんはどうする?」と大輔がみゆきに聞くと、みゆきはニヤリと笑いながら「私は大丈夫。結衣が行くなら安心だし。価格はまた教えてね」とわざとらしく答えた。




 結衣はその言葉に気づいて少し赤くなり、みゆきが小声で「ふふ、ついて行きたいんじゃなくて、一緒に行きたいんだよね〜」と茶化して囁く。




「も、もう!やめてよ!」と顔を赤らめながら結衣が返すと、みゆきは満足げに笑った。



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