第19話 ボッチの卒業
次の日のお昼休み、大輔は少し緊張しながら教室を出た。今日は結衣と一緒にご飯を食べることになっている。いつものように一人で屋上に行こうとした時、結衣から声をかけられた。
「大輔君、今日のお昼、一緒に食べようって約束してたよね?」
「うん、もちろん。よろしくお願いします。」
結衣はいつも一緒に昼食を食べている「飯田咲希」「尾上みゆき」「松本明里」のところへ向かい、大輔も一緒に席に着いた。結衣は笑顔で3人に話しかけた。
「ねぇ、みんな。この前、先輩に告白された時に、大輔君が助けてくれたの。だから今日、一緒にご飯を食べることにしたんだ。」
その話を聞いた瞬間、咲希、みゆき、明里の3人は大きく目を見開いて驚いた。
「えっ?告白を断った時に助けてくれたの?それで今日は一緒にご飯?まさか…2人って付き合ってとか?」咲希が驚きながら問いかける。
「付き合ってないよ!」結衣が慌てて否定するが、大輔が「結衣さん」と呼んだ瞬間、3人の反応が一瞬止まり、そして同時に大爆笑が起きた。
「結衣さん…?」咲希が目を丸くして。「それ、本当に付き合ってないの?」
「ねぇ、本当に付き合ってないの?怪しいな〜?」今度はみゆきが半ば興奮気味に聞いてきた。
大輔は顔を赤らめながら「いや、そんな…ただ名前で呼んでるだけだよ」と答えるが、3人は納得していない様子だ。
「ふ〜ん、名前呼びかぁ…怪しいなぁ…」明里が意味深な表情を浮かべて大輔を見つめる。
「だから、付き合ってないってば!」結衣がもう一度力強く否定するが、周りのクラスメイトたちがこの会話に興味津々で、あちこちから聞き耳を立てているのがわかる。
「で、大輔君が告白を断るのを助けてくれたって話、詳しく聞かせてよ!」咲希が身を乗り出して、大輔に尋ねる。
「いや、本当にただその場にいて、ちょっと言っただけだよ。結衣さんを助けたってほどじゃないよ。」大輔は謙遜しながら答える。
「きゃー!素敵!まさかそんなことがあったなんて、見直したよ、大輔君!」みゆきが目を輝かせて言う。
「まさか大輔君がそんなカッコイイことをするなんてね!」明里も笑顔で同意する。
「いやいや、そんな大したことじゃないんだって…」大輔は照れながらも、女子トークの中心にされていることに少し困惑していた。
「大輔君って案外頼りになるんだね。もう、ボッチなんて言わせないよ!」咲希が冗談交じりに笑う。
その間、大輔が咲希やみゆき、明里と楽しそうに話している姿を見つめていた結衣は何となくモヤモヤした気持ちを抱いていた。大輔が他の女の子たちと楽しそうに話しているのを見て、胸が少し締め付けられるような感覚。しかし、その理由を自分でもはっきりとはわからず、ただ心の奥に引っかかっているものを感じるだけだった。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、30分ほどが経った頃、大輔は昼休みが終わる前に一人で屋上へ行くことにした。いつもの「ボッチの定位置」である屋上につながる階段の下で、楽しかった昼休みのことを振り返りながら一息つく。
「なんだかんだで、すごく楽しかったな…」
そう思いながらスマホを取り出したところ、ライムに通知が届いた。差出人は結衣だった。
「大輔君、今日のお昼、楽しかった?」というメッセージが表示されている。
大輔は少し笑みを浮かべながら、すぐに返信した。
「最高でした!」と送信すると、しばらくしてまた結衣からの返信が来た。
「私もすごく楽しかったよ!また一緒にご飯食べようね。」
大輔はスマホを見つめながら、初めてクラスメイトとこんなふうに交流できたことに喜びを感じ、胸が温かくなるのを感じた。
今日の昼休みは、今までの自分とは少し違う感じがした。ボッチだった自分が、少しずつ人との距離を縮めているような…。大輔は一人静かに、そのことを噛みしめていた。
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