勇者の相棒、実は世界最強魔術師 ~暗躍せずとも暗闘はする学院編~
@kashiwagura
世界最強魔術師”リキ・クロス”
世界最強魔術師”リキ・クロス”
エディンバラ王立大学院の平民寮は二人一部屋。
その平民寮の一室に、金髪翠眼で背の高い美男子が入ると、黒髪黒目の中肉中背の男子が迎えた。
「ただいま、相棒」
部屋に入ってきた男子”アーサー・マッケン”16歳は、勇者の二つ名を持つ。
「お帰り、親友」
迎えた男子”リキ・クロス”同じく16歳の二つ名は・・・特にない。というより、二つ名を持つ人間など滅多にいない。
粗末なテーブルに、同じくらい粗末なイスが2つ部屋の中央にあり、そのイスの一つにリキは座っていた。
「それで? ボクを相棒と呼ぶんだから、何か秘密なり危険な話があるのかな?」
「オレを親友と呼んだということは、秘密の暴露があるんだろ」
アーサーは人の好い笑顔を浮かべ、テーブルまで来てイスに腰掛けた。
この男は容姿だけでなく、イスに腰掛ける動作までもがカッコ良い。輝く金髪が風になびく姿は一幅の絵画のようで、女子だけでなく男子までもが目を奪われる。その上、性格までが男前なのに二年次生の中で実戦能力がNo.1といわれているので、学院内での女子人気は相当なものであった。
それに比べボクは、肩甲骨の中程まである黒髪を後ろで縛り、学院内では平均的な身長。容姿に目立ったところはない。地頭は良いと自負しているが、二年次生の中で成績は中の上ぐらいだった。
ボクとアーサーは幼馴染で、小さい頃から行動をともにしていた。冒険者ギルドに加入できる年齢に達すると一緒に加入し、遺跡探索や魔獣討伐等々、様々な冒険をしてきた。
その幼い頃からの親友にして冒険の相棒が、ボクの秘密を探ってきている。
「いやいや、その前にさ。アーサーの考えを聞きたいかな」
「森向こうの草原にドラゴンが出たっていうから、戦闘術コースの全学年、A、Bクラスが駆り出されたんだけどな。ドラゴンブレスによって、あのバカっ広い草原と森の一部が焼けたっていうじゃんか。でも、ドラゴンを見た者はいないしな。3人が行方不明だから犠牲者が3人だろうっていうけど、死体どころか装備すら見つからない。何より焼け跡を見て、オレには違和感がバリバリって生まれたぜ。キレイな円形の巨大な焼け跡にな」
正面に座り淡々と語っている親友は、ボクに疑いの目を向けていた。その視線からボクは目を逸らす。
「魔術師コースのサバイバル演習最終日にドラゴンが出現した。まあ、それはいいさ。だが、犠牲者が貴族クラスの3人だけっておかしいぜ。魔術師コース全5学年で、約1500人になる。ドラゴンが暴れたなら、もっと犠牲者が多いはず。まるで3人だけ殺して、終わりにしたようじゃんか。一度ドラゴンが暴れ始めたら、動くものを手当たり次第狩りつくすだろ。おかしぃーよなぁーー、相棒。オレには話してくれるよな、相棒。さあ、キリキリ吐こうぜ、相棒」
アーサーはニヤリと口角を上げ、拳を鳴らしながら立ち上がり、準備運動を始めた。
準備運動ですらアーサーの動きには華がある。対してボクの動作は、精確にして緻密と言われているが、見ていて面白みがないとも言われている。
「なんの準備をしているのかな?」
「見て分かんだろ?」
拳で語り合う準備を整え、アーサーは構えた。
「よーし、待った、親友」
この件は、親友と拳を交えてまで秘密にしたい訳じゃない。話せば理解してくれるのも知ってるからね。
だが原因が自分にあるだろうと、気に病む親友を、ボクは見たくないだけなんだが・・・。
それに、正直に話すには、寮の部屋というのは場が悪すぎるかな。
「この件に関しては、機密保持の観点から、あそこへの移動を提案したい。どうかな?」
「構わないぜ、相棒」
リキは左腕の銀白色の金属製腕輪に右手で触れながら、精神を集中させる。
そのままの姿で数十秒が経つと、金属製腕輪全体に複雑な魔法陣が浮かびあがる。次に、リキは魔術詠唱を始めた。
「天宇受賣命(アメノウズメ)が舞えば、八百万の神は破顔一笑。開け、天岩屋戸(あまのいわやと)の扉」
突如としてリキの目の前の空間に、1辺2mの黒い平面が現れた。その平面の黒色が徐々に薄れていき、寮の部屋とは別の空間が映し出された。
扉の脇を抜けリキの隣に行くと、アーサーは感嘆の声をあげる。
「スゲーなぁーー。入口からだと向こう側が見えるようになったのか。これなら安心じゃんか。流石リキだぜ」
研究成果を絶賛され、リキは照れながら言う。
「いやいや、まあまあ。なかなかだろ」
「最初んときは酷かったけどな」
「改良前はね。直接空間接続させると、何らかの弊害が生じるなんて想像してなかったからな・・・。雪が流れ込んだりするとはね・・・」
「部屋の中が雪だらけになるとは思わなかったぜ。しかも、真夏に凍えて臨死体験までするとは・・・。あと気圧差で、部屋の空気と一緒に吸いだされそうになったりとか・・・」
「そういう失敗を重ね、ボクの研究は進む」
「もう死に直結するような失敗はすんなよ。するとしてもオレを巻き込むなよ。だけどな、成果は共有し、遠慮なくオレに提供してくれて構わないぜ」
成果の共有という名の、勇気ある実験への志願は非常に有難い。これからも遠慮なく、実験体1号として活躍してもらおうかな。
「まあまあ、そう心配しなくも大丈夫。今は充分?・・・に安全第一?・・・に、たぶん気を付けてる・・・かな?」
「疑問形だとぉ!」
「まあまあ」
落ち着かせて、話を少し逸らす。
「これで門をくぐる時、恐る恐る行かなくても済むよな」
「まったくもって頼むぜ・・・。安全第一、品質第二、生産第三だろ。死なれたら目覚めが悪いんだからよ」
逸らしきれず、アーサーに遺跡の標語で苦言を呈された。
「おー、そうだ、そうじゃんか。そんなら、次は繋げる場所を自由にできるようにしようぜ。そしたら完璧だ。そうすれば、オレがベティの部屋に行くのも楽になるぜ」
「おいおい、それはダメだって言ったよな? 女子寮に忍び込むのは勝手にすればいいけど、ベティさんにボクの研究成果を明かすのは絶対にダメだからな!」
「えぇーーー」
「えー、じゃない!」
「ベティ、可愛いだろ!」
「それは関係ない! いいか、どっから秘密が漏れるか分からないんだ。秘密が漏れたら、ベティさんにも危険が及ぶようになるかもしれないだろ。遺跡の魔・・・あー、とりあえず、向こうに行ってから話そうか」
2人は門をくぐり抜け、遺跡へと移動した。
「天岩屋戸の扉・解」
リキが詠唱すると、平面が黒色になってから消失したのだった。
リキ・クロスは山裾に広がる深い森を抜け、広大な草原の手前に到達していた。5日間に及ぶサバイバル演習は、その草原を超え、もう一つ森を抜けた先にあるエディンバラ王立大学院の大講堂に戻れば終了だった。
魔術コースと総合コースのサバイバル演習は戦闘術コースと異なり、比較的簡単だった。特に二年次生は規定のチェックポイントを通り、夜はキャンプ地のテントの中で休めるし、食事も用意されている。
戦闘術コースになると野営地はなく、食事も自分たちで用意しなければならない。5日分の携帯食と水を背負い、規定のチェックポイントを回るのは体力的に厳しい。かといって携帯食を減らし、食料を現地調達するのは労力と時間がかかる。
携帯食や装備などの事前準備は各生徒の判断に任されている。個人の能力と資質によって、事前準備の最善が異なるからだ。
アーサーと共に冒険者として生活費を稼いでいるリキは、戦闘術コースのサバイバル演習でも全く問題ない。魔術コースのサバイバル演習は楽すぎで、何度も遺跡に行っては研究を進めているぐらいだ。
最終日の午前中も遺跡で研究をしてからサバイバル演習に戻った。
そして今、ゴールの大講堂まで徒歩だと半日。身体強化魔術”ボディ・リインフォースメント”を発動している状態なら、2時間もかからない位置にいる。
”ボディ・リインフォースメント”は学院の学生なら即座に発動でき、半日はその状態を維持可能だった。それが第1学年の必修項目で、できなければ進級できず退学になるのだ。
リキは、魔術コースの貴族3人に行く手を阻まれた。
「待ってたぞ平民」
えーっと、ベルクソン子爵家の・・・ウィリアムだっけ・・・。
で、両隣は・・・知らないね。
まあ、とりあえず手下1と手下2でいいかな。
二年生魔術コースの平民クラスが213名で、貴族は87名になる。クラス分けは建前上、成績順になっていて、ヤツら3人とはクラスが違う。ハッキリ言って貴族社会に興味ない。目立たないヤツの名前なんて、知らないんだよなー。
この名前も知らないというのが、貴族の子弟達を苛立たせる原因の一つとなっている。それをリキは、全くもって全然と言って良いほど分かっていなかった。プライドの高い貴族たちにとって、鼻にも掛けていないとの態度にみえるのだ。
なお、一学年は320名が定員となっていて、学院は5学年からなる。平民はエディンバラ王国各地の成績優秀者が集められ、寮で暮らしている。
「よう平民。今日のサバイバル演習はアーサー・マッケンがいねーよなー。ちゃんと演習の森から帰れるか? それとも父母に迎えに来てもらうか?」
手下1が嫌みったらしい言い方で、アーサーの不在を狙ったと、小物らしさ全開のセリフを吐く。
バカの相手は疲れるし、相手する価値が全くと言って良い程ないな。
とりあえず右の金属製腕輪で魔法陣を展開させ、無詠唱で《幻術・吾》と《超速移動》の魔術を発動する。
「親に迎えに来てもらった頃には、死体も残ってないだろうよ。この森には魔獣が生息してんだからよ。落第しそうなバカは、さっさと死ねや」
手下2のセリフは認識に間違があるね。
一学年9クラスでボクはEクラス、ちょうど真ん中のクラスにいるのに、この言いようとは・・・。
A~Dクラスは30名の優秀クラスだが、E~Iクラスは40名。Eクラスに所属しているボクは、総合成績が160位以内にいるはずで平均以上、落第とは無縁なのだが・・・。単にバカにしたいだけかな。
あれあれ、そういえばバカと言ってきた手下2は、Dクラスに居たような。貴族でDクラスは落ちこぼれ。貴族の名誉のため、貴族の子弟は優秀クラスに所属させるという噂を聞いた気がするんだが・・・。
身の安全の確保が必要になるかな?
まあ、それなら、実戦テストも兼ねるとしようかな。
左の金属製腕輪の魔術刻印が輝き、周囲のマナを急速にかき集め、複雑な魔法陣を構築し始める。しかし空間の揺らぎは貴族たちから見えない。
すでに”幻術・吾”によって、幻影を現出させている位置から離れ、貴族3人の目線から外れた場所にいるからだ。
リキは脳内で《結界・絶》と唱えた。
「魔術コース下位の平民は、端っこで惨めに生きろ。エディンバラ王立大学院に通っていいのは貴族だけだ。平民は皆、学院では等しく無価値。さっさと去れ! 去るというなら慈悲をくれてやる。生きて田舎に帰るという権利だ! 断るなら、ここで死に魔獣の餌となってもらう。選べ、リキ・クロス」
ウィリアムは偉そうに宣言したが、内容は選民思想に囚われた能力の低い貴族の戯言だった。
アメイジア大陸の北東の雄”エディンバラ王国”は、周囲にルーアン帝国やエルフ族、魔人の国”バンクヘッド”、その他いくつもの隣国が接している。それらの国々は、虎視眈々とエディンバラ王国を狙っている。
豊かな自然と豊饒な大地、多くの手つかずの遺跡と様々な資源を擁している国だからだ。
そのため文化文明もアメイジア大陸の国の中のでも、随分と進んでいる。他の国々がヨーロッパ中世後期レベルに対して、エディンバラ王国は近世レベルに達し、魔術以外にも蒸気機関車などの科学技術が発展している。
しかし、周辺諸国の文化文明、科学技術レベルがエディンバラ王国より劣っていたとしても、軍事力が劣っているとはいえない。その国の魔術レベルによって、軍事力は左右されるのだ。たとえば魔人の国”バンクヘッド”が本気でエディンバラ王国へと侵攻してきたら、支配されずとも、王族や貴族などは一掃されかねない。
魔術レベルの向上、国力増強はエディンバラ王国で常に課題となっている。ダメな貴族は取り潰され、優秀な人物は取り立てられるのがエディンバラ王国における現実であった。
国の現状しかり。対峙している国々との状況しかり。これらを考慮すると、リキには貴族3人がアホだとしかみえない。
エディンバラ王国の国内事情を知らないのかな?
現実が見えていないのかな?
貴族クラスの連中はアホが多いのかな?
それとも、この3人がアホなだけかな?
それに、敵対してる相手に話を聞かせたいなら、まず敵の動きを封じたからだろうに・・・。
そんなだから、ボクは充分な戦闘準備ができたんだよね。
余裕ができたリキは、アホ3人との会話に付き合うことにした。
「ボクの親友はさ。命がけで遺跡からボクを救出したんだ。そのボクがサバイバル演習でいなくなったら、調査するとは思わないのかな?」
「平民が調査したところで何の証拠も出てこない。たとえ証拠があっても平民の話など、学院側は誰も聞きはしない。ここに我らがいるのが、何よりの証拠だ」
3人が、ここにいるのが証拠?
何か裏があるのかな?
「あんたらホントはさ。アーサーを追い出したいんだよな? でも返り討ちに遭うからって、ボクを襲って憂さ晴らしするって感じかな。確かに学院で指折りの戦闘力で、遺跡に単独で潜って、無事に帰還するような勇者は相手にできないよね」
リキが少し煽ると、3人の顔が分かりやすく歪んだ。こめかみ辺りがピキッといってそうだ。
「遺跡単独制覇達成なんて、ウソに決まってるだろうよ」
「ボクが証人だけど?」
「テメーらで、でっち上げたに決まってんだろ」
「いやいや、ボクは遺跡の中で下に落っこちて、一ヶ月以上も遺跡内で過ごしてたんだけど」
「どうせ、遺跡近くの洞窟にでも隠れていたんだろうよ」
「冒険者ギルドで認定されてるんだけど。だからアーサーは勇者の称号をもらったんだよね」
「貴族より優秀な平民なんていない。どうせインチキしたんだ。冒険者ギルドなんてクズな平民の集まりだろ」
手下1、2がボクの反論に声を張り上げた。
それにしても、国の現実だけでなく冒険者ギルドへの認識もかなり間違っている。
エディンバラ王国の冒険者ギルドは王族によって運営されていて、国庫から随分と補助がでている。しかも、ギルドへの高額報酬の依頼は貴族からが多い。
貴族は自領内の魔獣討伐や遺跡の調査を依頼しているのだ。
魔獣討伐に騎士団や軍隊を動かすのは効率が悪い。遺跡調査にしてもそうで、冒険者の専門知識と技術を活用している。
「アーサーに手出し出来ないからってボクを襲うなんてさ、貴族って陰湿でプライドが高いだけの人で無しだよね」
「平民のくだらん戯言だな。貴様は、田舎に帰って貴族のために労働力を提供するか、ここで学院のために死ぬかだ」
リキは事実で煽ってみたが、ベルクソンは全然人の話を聞いてなかった。・・・というより理解する気がないようで、自分勝手な選択肢を強要してきた。
アホ3人は、ボクをアーサーの添え物のように考えているようだった。
戦闘術コースのAクラスに所属していて、金髪翠眼で背も高く、顔も性格も男前な勇者アーサー。その相棒としてボクは、一緒に魔獣を倒したり、遺跡に潜ったりしている。その際、活躍しているのはアーサーだけだと思っているのだろう。
まあ、学院で魔術コースの成績が平均ぐらいだから、そう思われても仕方ないが・・・。
「さあ選べ、平民」
3対1。
敵は貴族・・・のアホども。
アホ共ではあるが、貴族の服や装備は一級品ばかり。
着ている最新ファッションと思われる服ですら、防御力が高そうだった。ボクの着ている学院支給の実習服とは、値段も性能も雲泥の差がある。
剣の束には刻印魔術が幾つもあり、素材はおそらくアダマンタイト。
額当、胸当、腰当などの防具の素材はパッとみオリハルコン製で、反応防御の刻印がなされている。その他見える範囲に、いくつもの魔術補助や威力向上などの刻印があり、当然マナ収集の刻印もある
大抵の場合”ボディ・リインフォースメント”は、自らの肉体にあるマナを使用する。しかし威力の大きな魔術や複雑な魔術は、大気中にあるマナを魔道具が吸収して魔術を行使する。そのため大体の魔道具には、大気中のマナを吸収する刻印がなされている。
つまり、3アホ貴族の持っている装備は、威力の大きな魔術や複雑な魔術の刻印があるということだった。
「生意気な平民には生きる資格がないだろうよ?」
嫌味な手下1がウィリアムに提案すると、続いて粗暴な手下2が剣を抜き、その剣に炎を纏わせリキに対して凄む。
彼らの装備は、大気中のマナを大量に吸収し始めていた。その所為で、装備を中心に3mぐらいの大気に歪みを生じさせている。
「もういいから殺しちまおうや、ウィリアム。オレは早く、新しい剣の威力を人で試したい」
「自分も賛成だよ。どうだい、ウィリアム」
手下1も剣を抜くと、剣先に風が渦巻く。
「グダグダと口先だけかい? ボクが怖くて怖くて実力行使できないのかな? ボクはアーサーの幼馴染で親友だけど、相棒として幾つもの遺跡を調査してきたんだよね。キミらとは、実戦経験の差は大きく、実力差は天と地ほどもある。ドラゴンの前で宝石を掲げる愚を犯しているって理解できてるかな?」
ドラゴンは宝石や貴金属に執着する性質がある。つまり、ドラゴンの前で宝石を掲げるとは、命知らずの大バカ者の意なのだ。
辛辣なセリフで煽りまくっているのだが、これはリキからの最後の忠告でもあった。戦闘は一方的な蹂躙になるからだ。
しかし、自分たちの勝利を疑っていない貴族3人は殺気立ち、ウィリアムの怒りの命令でリキに襲い掛かる。
「愚者にかける慈悲はなし。殺せ!」
「まったく。バカ貴族につける薬はないなー」
リキの呟きと同時に、手下2の剣の周囲に、複数の炎の塊が出現する。そして剣先をリキに向け叫んだ。
「ファイヤー・ランス」
炎の塊が融合し、3本のランスが形作られ、リキに向かって発射された。
しかし、球形の”結界・絶”に阻まれ炎の槍が霧散する。
手下1も剣先をリキに向け魔術を発動させる。
「ウィンド・カッター」
剣先から竜巻が発生したが、”結界・絶”の防御壁に沿って上空へと逸れていった。
少しは戦闘の心得があるのか、手下1、2は魔術行使後、すぐリキの幻影を囲むように移動し、攻撃の手を緩めなかった。
リキの斜め前方から手下1、2の攻撃。
「ファイヤー・ランス」
「ウィンド・カッター」
リキの側面から挟み込むように手下1、2が攻撃する。
「ファイヤー・ランス」
「ウィンド・カッター」
手下1、2が背後まで回り込み攻撃する。
「ファイヤー・ランス」
「ウィンド・カッター」
ファイヤー・ランスとウィンド・カッターは、幻影を中心とした”結界・絶”の半球状の輪郭を浮かび上がらせただけだった。
手下1、2が攻撃を繰り返し、リキに反撃の隙を与えず、その間にウィリアムは、自らにとって最大の魔術を準備していた。
実のところリキにとっては、隙だらけの3人だったが・・・。
「ヒュージ・アイシクル・ダウン」
リキの頭上に巨大な氷柱が出現した。これは氷柱で潰したあと、冷気によって対象を氷漬けにする凶悪な魔術であった。
しかし氷柱は、あっさりと”結界・絶”によって防がれた。
貴族3人は家で戦闘訓練を受けていて、驚くより先に攻撃の継続を選択した。
手下1、2は魔術のみの攻撃は効果が薄いと判断し、物理と魔術での攻撃を選択する。
「ファイヤー・ブレード」
剣に纏っていた炎に、さらに高熱の炎を纏わせた。
「ハイ・フリークエンシー・ブレード」
振動させた剣は、金属製の鎧を紙くずのように切り裂ける。
それを見てリキは、手下1、2が”結界・絶”に衝突する前に、”結界・絶”を解除する。
《結界・解》
2人の身の安全を図るため・・・ではなく、”幻術・吾”が攻撃を受けるとどうなるのかという興味からだった。
2人は”結界・絶”を薙ぎ払うように剣を振るってから、幻影に斬り込む。物理攻撃が”結界・絶”を破砕したと判断したのだろう。
判断は間違えていたが、戦術は間違えていない。
鋭い動きで手下2の炎の剣がリキを貫き、強烈な勢いで手下1の振動剣がリキの胴を薙ぐ。
剣を叩き込むと瞬時に、手下1、2はリキから素早く飛び退った。
次いでウィリアムが咆哮し、剣先から炎の波状槌が放たれる。
「ファイヤー・バトリング・ラム」
しかし、リキの上半身を炎の波状槌が通り抜けた。
そして幻影のリキは、何事もなかったかのように、その場にいる。
「なるほどねー。幻影は幾ら魔術や物理的手段で攻撃されても、そのままの映像で微動だにしないと・・・」
リキの声が背後から聞こえ、ウィリアムは振り向き、剣を正眼に構え直した。手下1、2は幻影を警戒しながら、ウィリアムから少し離れた左右に位置取る。
リキは自分を中心に、再び”結界・絶”を発動する。
《結界・絶》
”結界・絶”は、さっきの3人からの攻撃に揺るぎもしなかった。リキは”結界・絶”の中で、攻撃の様子を観察することにしたのだ。
「もう一度だ。突撃!」
ウィリアムの命令で、手下1、2がさっきと同じように剣を振るう。しかし、剣は弾き飛ばされ、2人の体は”結界・絶”にへばりついた。
なるほどなるほど、声とか衝撃音とかの空気振動は結界の中に伝わるけど、熱はまったく通らない。外は風が吹いているけど、中には入ってこない、と。
「・・・! ソイル・ステーク!!」
ウィリアムが刻印魔術によらず呪文詠唱をして魔術を構築し、発動した。
単純な土の杭とはいえ、自分から離れた位置で魔術を発動させるのは、高等技術である。しかも、リキとの距離は10m以上もある。
ウィリアムはAクラスに所属していてるので、魔術はそれなりに優秀なのだろう。魔術”シールド”でカバーできない地面から攻撃を実行するとは、戦術眼も悪くない。
しかし相手が悪かった。
”ソイル・ステーク”は土が鋭い杭状になる魔術だが、何も起こらなかった。
「この防御は”シールド”じゃないんだよね。それに、さっき幻影に攻撃できたのは、”結界・絶”を解いたからさ。今、ボクを中心に”結界・絶”で防御している。もちろん地面もね」
手下1、2は体勢を立て直そうとウィリアムの近くまで後退する。
「いっ、いまなら、逃げても追わないでやろう」
ウィリアムのセリフに苦笑しながら、リキが現実を教える。
「それは、ボクのセリフかな? いやいや、違うな。ボクはキミ達を逃がさないからね。まさか、殺そうとしておいて、見逃してもらえる思っているのかな? おめでたい脳ミソしてるね。それとも頭の中身はお花畑なのかな?」
「我らの攻撃は通用しないようだが、貴様の攻撃なぞ微風も同じだ。教えてやろう。我らの防具はオリハルコンで、反応防御の魔術刻印がされている。貴様が使える程度の魔術では、傷一つ付けられん」
「ウィリアムの言うとおりだ。いいか、平民は平民らしく貴族に平身低頭してろ」
「攻撃したら、テメーの家族全員を殺す!」
ウィリアムは、どうにか冷静さを保ちながら交渉してきたが、手下1、2はあまりにも見苦しかった。
《結界・解》
ボクは”結界・絶”を解除してから、5つの魔術の発動準備を整えた。
”結界・絶”発動中に他の魔術を発動すると、結界内で魔術が吹き荒れるからだった。
剣の代わりに左手の人差し指をウィリアム達に向け、リキは詠唱する。
「ファイヤー・ランス」
「ウィンド・カッター」
「ヒュージ・アイシクル・ダウン」
「ファイヤー・バトリング・ラム」
3アホ貴族に傷一つつかないどころか、防具のない箇所が火傷と切傷、凍傷だらけとなった。
リキの攻撃が、防具の反応防御を上回ったのだ。
即座に、同じ魔術を、さらに魔法陣を大きくして発動準備を整える。
それは3アホ貴族に魔術の威力と実力差を分かり易く伝えるためだった。
魔術の威力は、主に魔法陣の大きさに比例する。しかし、大きな魔法陣を構築するには、魔法陣を描く素材であるマナが、その分だけ必要になり制御が難しくなる。
実は、魔法陣の改善や魔法陣内のマナ密度向上など、他の方法でも威力は向上する。しかし、それらの方法は遺跡の技術に依るものであり、エディンバラ王国では全く知られていない。そのためリキは、大きな魔法陣を構築したのだ。
「ボクの家族を殺すだって? お前らは塵一つ残さず消滅させる」
相手を凍らせるような声で、リキは宣言した。
リキの黒目が、怒りで赤く燃えるように染まる。どんなに慈悲を請うても許さないとの意志が、赤くなった瞳に宿っていた。
リキの頭上の大きな魔法陣を見て、ウィリアムは驚愕し狼狽えた。
魔術コースの卒業生でも、4つの魔術を同時発動できるのは少数である。それなのに、二年次生にしてリキは4つの魔術を同時発動させた。しかも、自分達とは比べ物にならないくらい大きな魔法陣だった。
魔術”結界・絶”を知らない3人は、4つの魔術の発動準備が整えられていると考えていたが、正確には5つの魔法陣であった。
いつでも防御できるよう、リキは”結界・絶”の発動準備を終え待機させていたからだ。
「まっ、待て・・・」
ウィリアムが叫んだが、リキは冷たく言い放つ。
「せめてもの慈悲として、痛みを感じる間もなく殺してやるさ。抵抗するのは構わないけど、痛みが増すだけかな」
我らは貴族だ。
それなのに、あの平民は・・・。
ウィリアムは、リキが勇者アーサーの付属品だと考えていた。しかし、大きな間違いだと、ようやく気が付いた。
虎の尾を踏むどころでない。
ドラゴンの顎で挑発を繰り返していたのだと理解した。
勇者の相棒は、相棒に相応しい実力を持っていた、と。
「て、てっ、撤退!」
3人は身体強化魔術”ボディ・リインフォースメント”に、魔術”リミット・キャンセレーション”を付加し、肉体の限界を突破させ、リキに背を向け全力で逃げだした。限界突破した肉体は負荷に耐えきれず、筋肉繊維が断裂し、強烈な痛みが走るが、構わず全力を出し尽くす。
死の淵から少しでも離れるために。
死の恐怖から逃れるために。
恐怖と痛みでおかしくなりそうだった。
なぜだ。
ヤツは平民だ。平民が貴族に牙を剥いて良いはずがない。
1㎞ほど全力疾走したあと、魔術が飛んでこないので後ろを振り向いた。
リキの周囲に展開していた魔法陣がなかった。
「はは、逃げ切ったぞ」
ウィリアムが呟くと、これだけ距離が空けば、魔術が届くはずはないと安堵し、手下1、2が強気にリキへの制裁を口にする。
やはり貴族は正義で、平民に殺されるなどあり得ないのだ。
「体中がいってぇー。絶対に許さぬ。家族共々地獄に落としてやる」
「学院に訴えて、貴族に手を出したらどうなるかを知らしめるよう」
さっきまでリキから命からがら逃げていたのを忘れたのか、2人の意見に頷き、強気な口調で断言する。
「そのとおりだ。平民の生殺与奪は貴族の自由だ。勇者ですらない取り巻きなぞ、地獄の底へ突き落す。いや、地獄を見せてから惨たらしく殺す」
貴族として、ベルクソン家の後継ぎとしてチヤホヤされ育った所為か、ねじ曲がった自尊心を言葉にしていた。
1㎞ほど距離が空いたところで、リキは待機させいた魔術を解除した。
元々、脅威を抱かせ、逃走させるために展開していた魔術だった。
待機させていた魔術では”塵一つ残さず消滅させる”ことは不可能。
”塵一つ残さず消滅させる”魔術は、発動準備のまま待機させられない。
しかも、その魔術の発動には1分近く時間が必要な上、その他の魔術に自分のリソースを割けない。
つまり、”結界・絶”を待機させておけず、その間の完全に無防備となるのだ。
ゆえに、3人を逃走させた。
逃がすためでなく、殺すために。
塵一つ残さず消滅させるために。
リキは左腕の銀白色の金属製腕輪に左手で触れながら、精神を集中させる。
金属製腕輪に複雑な魔法陣が浮かび上がる。赤く燃える目をしたリキの瞳には、魔法陣だけでなく、魔法陣内でのマナの動きが見えている。マナの動きから最適なタイミングを図り、魔術発動の呪文を詠唱する。
「天照大御神(アマテラスオオミカミ)、陽の光を顕現させよ!」
リキが持っている最大の魔術”アマテラス”は、六千度に達する太陽表面の温度を地上に再現する。効果範囲内では、どんな物質をも融解させるのだ。
全力で放った”アマテラス”は、リキの前方約4㎞地点を中心に、直径5㎞、高さ1㎞の円柱を顕現させた。円柱内の物質全てを、輝く光の中に飲み込み、そして蒸発させた。
草原だった地面は焼き固められ、土色となった。
3貴族の体の一部どころか、オリハルコンもアダマンタイトもない。
まさに塵一つ残っていない状態が広がっていた。
効果範囲外へは熱をもらさない。術の行使が終われば効果範囲内は常温に戻る。効果範囲内の物質全てを蒸発させ、術が終われば気体となった物質は、固体に戻り地面へと降り注ぐ。
”アマテラス”は、形あるもの全てを、等しく無に帰さしめるといえる魔術であった。
「あー、ベルクソン達の自業自得ってやつか。殺すことはないだろうと思っていたが、家族に手を出すとか言われたら殺すしかないな。それにしてもなー、炎の魔術一発でアダマンタイトの防具ごと蒸発させるとは・・・リキは非常識がすぎるぜ」
「まてまて。それを言うなら、まず、貴族は理不尽がすぎるだよな。それに非常識はボクじゃなく古代文明の方だ。それと魔術の名前は”アマテラス”な」
「言いづらっ」
「仕方ないだろ。この遺跡の呪文や魔法陣が、ボクたちの魔術と違うんだからな」
古代文明の遺跡。
しかも生きている遺跡。
そこの中央指令室・・・という名前らしい・・・にある大きなテーブルに腰をかけ、2人して遺跡の状態を表示しているディスプレイに視線を送っていた。
研究途中なので、動作原理を今一つ理解できていないとリキは言っていた。
なんでも電気が動力になっているとか・・・。
電気なんて攻撃魔術ぐらいしか使用方法がないと思っていた。しかし、発電・・・とかいう電気を生成する機械で各所に電力供給することで、この巨大遺跡を隅々まで動作させられるらしい。
生きていない遺跡は、電力供給するための金属がエーテルに浸食されて、電気が流れなくなったらしい。その金属は、空気中のエーテルに浸食されると超高硬度のオリハルコンになる。
オリハルコンは魔術素材としても重宝されるので、遺跡では真っ先に、その金属を発掘する。
ゴム素材に包まれている状態では柔らかく加工しやすい金属。そのため発掘後は素早く、鍛冶場や加工場に持ち込まれる。金属が露出している部分から徐々に硬くなっていくので、時間との勝負になるのだ。
古代文明の滅亡には、エーテルとマナ・・・つまり魔法が関わっていると、リキは考えているらしい。ただ、過去の出来事を解明するより、古代文明の魔術を研究したいと語っていた。
そう、古代文明の技術は不思議で、魔術は非常識だった。
「そうだな・・・。あー、で、ヤツらの動機はなんだったんだ?」
「なんかゴチャゴチャ言ってたけど、幻影魔術と結界魔術を構築してたから聞いてないなー。まあ、それより理解が得られてよかったよ。彼らの死はボクの所為じゃない。仕方なかったのさ」
「それはそうだけど・・・リキは、もう少し加減てやつを覚えるのと、普段から力を見せた方がいいぜ」
「それも仕方ないのさ。ボクにだって自己顕示欲や承認欲求はあるけど、物事には優先順位ってのあるからね。まずは防御魔術。次に治癒魔術。その次は刻印魔術。諸々終ってから、最後に攻撃魔術だよな?」
「そうじゃない。物事の優先順位なら、学院での学業が優先だぜ! 遺跡の調査なんて学院の卒業後にすればいいだろ。そうすれば貴族のヤツらなんかに侮られないし、ちょっかい掛けらんないぜ」
「いやいや、分かってないよアーサーは。学生の内は退学させられなければ良いんだよ。卒業後は食べるために働かないといけないだろ。つまり研究時間が減ってしまう。王国の金で衣食住が保証されている今の内に、できるだけ研究を進めないとな」
「はぁー・・・。単に研究したいだけだろ」
「そうともいう。しかし、この研究成果はきっと王国の役に立つ。いや、世界の役に立つ。そうだよな?」
「大きく出たな。まあ、オレの役には立ってるし、お前の実家の役にも立っているけどな! いや、そうじゃない、そうじゃないんだ。卒業までの後3年半近く、相棒が侮られるのは我慢ならんぜ」
エディンバラ王立大学院は五年制で、リキとアーサーは二年次生である。
「まあまあ、我慢しろよ。ボクは気にしてないんだからさ」
「だーかーらっ、敵が増えるし、ちょっかいが増えるだろ」
「ボクは気にしない」
「ちょっとは気にしろや! 先に攻撃魔術の威力調整の研究をしようぜ。そうすれば実技演習とかで実力を示せるじゃんか」
「いやいや、邪魔するヤツらは排除すればいいのさ。それよりスゲーんだよ、”瞬間移動”。天岩屋戸の進化版なんだけど、文献の解読が完了して、ようやく実験が成功したんだ。対象物自体は動かなくても天岩屋戸が動いて、門を通らせて移動させるっていう方法なんだよね。なんていうか、古代文明人の発想がスゲーんだよなー。当然、いろいろと安全に配慮されてるみたいでさ。それは今から研究するし、魔術を発動させるのに、まだ30分ぐらいかかるのが課題なんだよなー。・・・で、何が言いたいかっていうと、邪魔するヤツはどっか森の奥にでも”瞬間移動”で捨てればいいかなって、思いついたんだが?」
リキにとっては簡単で単純な解決策なのだが、実力行使後に、捨てられたヤツの周囲が騒がしくなるという問題がある。
「だーかーら、それは一々大事になるだろ」
「だけどさ、生物実験しないと、ボクたちが安全に使えるか分からないだろ。だから仕方ないのさ。それに、近くの森に捨てるぐらいなら、自力で戻ってくれるよな」
「学院だってバカじゃないぜ。貴族がリキを襲うたび森に飛ばされたら、絶対にバレる。研究だって自由にできなくなるだろ?」
「困るな・・・。そうそう、ちょうど今、球体魔法陣の魔術刻印版を作成しようと考えてる。どうかな?」
「ちょうど今って、ホントは今考えついただけだろ?」
「どんな魔術刻印がいい?」
「体力回復。副作用すくなめで」
「うんうん、了解したよ。早速明日から取り掛かろうかな」
「はあ、オレができる限りフォローすればいいんだろ。親友」
オレはリキに向けて拳を突き出すと、オレの拳にリキが自身の拳を軽くぶつけてきた。
2人は口角を吊り上げ、不敵な笑みを交わす。
「さすが、ボクの親友だよ」
調子のいいことを口にするリキだが、学院生活ではお互い協力し合っている仲だし、相棒にして親友の幼馴染のフォローは当然だと思っている。
だが心配させんな。危険は少しでも減らしてほしいところだぜ。
リキは飄々と危険地帯を渡り歩く。その度胸は認めるが・・・いや、危険地帯と認識してないのか。
世界最強魔術師だと名乗り、実力を見せたほうが、よほど安全な生活ができるはずだ。
遺跡は諦めるしかないだろうが・・・。
「あーっと・・・禿げる、呆ける、痔になる。どの副作用がいいかな?」
「そんな副作用あるか!」
「作れば、なんとか・・・なるかな?」
「作るな! あと副作用は、す く な め で!!」
「仕方ないなー」
嘆息するリキに、アーサーはツッコミをいれる。
「当たり前だろ!」
いつもの冗談で終わるところが2人らしい。だからこそリキとアーサーは、10年来の親友にして相棒なのだろう。
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