どこかで、途切れた物語

「良心を暴走させられて外国人の走狗にさせらせている、星見ほしみ新右衛門しんえもんて子。今どこにいるの。その子。あれ? 殺されたんだっけ?」

 桜雪さゆが尋ねる。

「遠い所よ。こと座のベガにいるんじゃないかしら。

 わたしも恨みを晴らして数年経ったら、彼の元へ行くつもり。

 わたしが愛した星見ほしみ新右衛門しんえもんは殺されたわ。沖田総司に。だからわたしたちは二人でカタキを取るの」

 雪女の二三枝ふみえは憎しみを込めてそういう。

「あちゃー、やっちゃったか。沖田よ。

 て、二人!? もしかして身重か!?

 そんな状態で刀持つなよぉぉおお! 雪女といえど妊婦斬れとかオレに鬼になれというんかい!? いやだよそんなのぉぉおおお! 鬼の副長でも戸惑うわ!」

 永倉新八(というか桜の花びら)がそういい、左手で顔を覆う。

 桜の花びら(というか永倉新八)は、一本指を立てて提案する。

「まあさあ、悲しい事もあったけどさ。同じ日本を憂う者同士仲良くやっていこうよ――――ね?」

「……………………新選組とか死んでもごめんよ」

「あはは、沖田ぁ~~~~」

 永倉新八はがっくし、と頭を垂れる。

 雪女の二三枝ふみえ星見ほしみ新右衛門しんえもんの言葉を思い出す。

「君と共に過ごした白い日々は、オレの宝物だよ。あの世に行こうが忘れない。君の優しい笑顔は忘れないよ」

(わたしも、忘れないよ………新右衛門しんえもんさんとの愛の結晶も今お腹にいるんだから)

「沖田をだせ! 早く出せ! あいつはわたしが殺さないと気が済まない!!」

「沖田今どうしてっかな…………」

 永倉新八が思いを巡らせる。

「沖田くん待つ必要はない。だってわたしが二三枝ふみえ殺すから、この雪女様の炎で燃やすから。

 4つしか塩基が残ってないイントロンすら正常じゃない遺伝子的に失敗人間に惑わされやがって」

 桜雪さゆが手のひらから燃え立つ炎を出す。全長20尺(6メートル)ほどの炎を右手から出している。

「あちいな~~」

 近くとはいえ2丈(20尺=6m)ほどさゆから離れた距離にいる永倉新八(というか桜の花びら)がそういい、手で自分をあおぐ。

「子どもからあの世に送ればこの世に未練なくなるよね? 炎で腹に大穴開けてあげる」

「やめて! この子には手を出さないで!」

 怯えた表情で雪女の二三枝ふみえはお腹をかばう。

「あなた幕府側の人間何人殺したの? 結構若い子たちもアンタに殺されたって昼間調べたら出てきたんだけど、その子たちもやめて! っていったはずだよね? それをアンタは斬り殺したんだよね? あんたがかたき討ちにこだわって殺した若い男の子たちに悪いと思わないの?」

「そんなの…………っ…………」

「撃たれたからこっちも撃って。

 相手もかたき討ちで撃ってきて。

 憎しみの連鎖いつ終わんのよ。

 そんな事してる場合じゃないっつーのさっき言ったよね。ミケーネの暗黒時代と同じ事日本はされてるって。

 俯瞰的に見て、お前殺すしかねーじゃん憎しみを最小限にとどめて先に進むの。もう時間ないのよ維新止めるには」

「わたしの! わたしの恋心はどーなるのっ! お腹の中の子はっ!」

 涙ながらに、雪女の二三枝ふみえは同じ雪女の桜雪さゆに訴える。

「雪女のわたしに燃やされて終わるの」

「あなたは、まだ若いから! 妊娠したことないから! そんな冷徹な行動をとれる! 恋くらいしなさいよ!」

 桜雪さゆが、冷たい顔をしたまま、二三枝ふみえの言葉を無視して、炎を持った右手を振りかぶる――――

「うぅぅ…………」

 お腹をかばうように丸くなる雪女の二三枝ふみえ

「ちょっと待ちなってさゆちゃん! あちちっ――――雪女でこの炎って!」

 永倉新八が声を上げる。

「さゆ、待って!」

 水鏡冬華も静止の声を上げる。

 だが、2人の声では止まらない――――

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