訪問者

第42話




『暑い...苦しい…』



暑さと息苦しさを覚え、目を開けた

目の前に広がるのは黒い何か

寝返りを打とうとしても、ガッチリと回っている腕がそれを許してはくれない



腕に少し力を入れ、なんとか顔を上げる

そこには莉衣を抱き締めながら眠る、碧の姿があった



『...碧、いつの間に』



暫く碧を見ていた莉衣だったが、そっと目の前にある碧の体に身を寄せた



『人の温もりなんて久しぶり』



そんな事を思いながら、再び目を閉じると、また夢の中へと落ちていった







『....』



目の前から小さな寝息が聞こえてきたのを確認して、そっと目を開ける



『....もっと頼って欲しいのに、莉衣が言ってくれれば、俺はなんでもするのに』



そんな事を思いながら目の前で眠る、小さな体を抱き締め直す



『こんなにも大切なのに、俺の気持ちをわかっている筈なのに、どうして…?』



そんな事を思いながらも、どうか莉衣が今だけでも安心して眠れるように、抱き締める腕に力を入れた

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