【チョコレート×感情】

【美味しいチョコレートの作り方※個人差はあります】

①よく手を洗いましょう

②チョコレートは湯煎で溶かしましょう

③溶かしたチョコレートに生クリームを入れましょう

④容器に流し入れましょう(容器はしっかり洗うこと)

⑤ここでとびっきりの隠し味!

⑥よく冷やして固めましょう

⑦デコレーションして完成!

⑧さぁ、愛しのあの人に思いを伝えよう!



「ゆず、何見てるの?」

「みーちゃん!!!見てよコレ。SNSで流れてきたんだけどさー、⑤の隠し味って…」

「愛だね」

「ちょ、みーちゃん早いよ!」

「だってそれくらいしかないでしょ。だったらアンタはなんだと思うの?」

「……おもいやり」

「愛じゃん」

「...愛かー」


なんて昼休みは毎日、幼なじみのみーちゃんとくだらない話で盛り上がる(?)

そんな世間はピンク色、つまりあと1週間でバレンタインだ。

隣の席の「まさやくん」に恋をしてからかれこれ1年。

そろそろ想いを伝えてみてもいいのでは、と思いバレンタインレシピを見漁っていたところ先程のレシピが出てきた。


「隠し味まで言ってこそレシピじゃない?」

「知らん」


みーちゃんは冷たい。

そんな冷たいみーちゃんにはカッチカチのチョコレートを贈る予定だ。もちろん手作り。

でもまさやくんには美味しいものを食べて欲しい...!

何としても隠し味を見つけなくっちゃ。


......やっぱり愛?

いやいやいや。


次の日の放課後。食材を準備した私は、学校の調理室を借り(調理部の特権✌️)、みーちゃんを味見係として召喚に成功した。

愛なんて納得はしてないけど変にソースとか醤油とか入れたくないから、味のつかない色んな感情を込めてチョコレートを作ってみよう。


まずは怒り。

「なんか、トゲトゲ?」

続いて悲しみ。

「わ、なんかしょっぱい」

驚き。

「なんかびっくりする味」

照れ。

「なんか共感性羞恥かんじるー」

笑顔。

「お、いいじゃんこれ。でもくどい」


みーちゃんのコメントは辛辣だ。

しかし、一人百面相をしながらチョコレートを作るのになかなか体力を使った私は突っ込むことすらできなかった。マジ普通に疲れた。


「んで、愛は?」

「そんなのないよ...」

「いいからやってみなさいよ」


しぶしぶ頷きもう一度チョコレート作りの準備をする。

愛しのまさやくんの顔を...いや、今食べてくれてるのはみーちゃんだからみーちゃんのこと考えながら作ろう。


そして愛。

「ゲロ甘。まさやへの愛重たすぎでしょーこれは食えんぞ」

「え、いや、それみーちゃんのこと考えながら作ったんだけど...」


と私が言うやいなやみーちゃんはむせた。大いにむせた。


「え、は、はあ!!!!???????」



そう叫ぶや否や、みーちゃんは顔を真っ赤にして逃げた。


「えっみーちゃん???!!」

追いかけようとしたがふと足元が気になった。

みーちゃんが座ってた椅子の足元にはみーちゃんの鞄が転がっている。

中には、

「ゆず宛」

と書かれたメッセージカードとちょっと形が崩れたチョコレートが詰まった可愛らしい袋が入っている。

「えーみーちゃん用意してくれてたの...!!」

感激した私は鞄とその袋を拾い、ピンクのリボンをしゅるしゅると解き中のチョコレートを取り出した。



「いただきます!!!」




ぱくりと食べたチョコレートは何故かすっごく甘かった。


「なるほど、これがみーちゃんの愛のお味...」

もぐもぐもぐ。

「うん。愛、アリだね」


ふふふっと込み上げた笑いを抑えながら、

「待ってよー!」


とみーちゃんをスキップで追いかけた。

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