第19話
「莉奈~、なに言ってんの、まだバイト決まってないんでしょ?折角だから行ってきなよ、私達ここらへんで待ってるからさ」
「えっ、ちょっ、違っ……」
慌てて明穂に向き直ったけれど、彼女は気を利かせたつもりでいるのだろう、得意満面の笑みを浮かべて「いいから、いいから」と小声で言うばかり。
明穂に倣うかのようにして、麻衣ちゃんも陽菜も私の後ろにササッと引き下がり、ニコニコ顔で小さく手を振っている。
そんな3人の前で露骨に嫌がる事もできず、私は必死になって断る理由を考えた。
けれど、何も浮かばない。
頭の中では、どうしよう、どうしよう、と繰返すだけ。
「あ、そうだ、良かったらコレ使ってよ。俺、沢山持ってるから」
そうこうしているうちに、十和田さんが陽菜に向かってチケットのような紙を数枚差し出した。
「わ、これ、クレープの……引き換え券?えー、こんなにいいんですか?」
驚きと喜びの声で聞き返しながら、陽菜はその紙を受け取った。
明穂も麻衣ちゃんも、そのチケットを興味深そうに覗き込んでいる。
「うん、付き合いで買わされてどうしようかと思ってたんだ。1人でこんなに食べられないし、使わないのは勿体無いしね。莉奈ちゃんを待っている間、食べておいでよ」
「わーい。ありがとうございますっ、遠慮なく戴きますっ」
「莉奈の分はちゃんととっておくからね~」
十和田さんの親切ぶった言葉に乗せられて、陽菜達は完全に浮かれている。
私は軽い絶望に陥りながら、ただ笑顔を強張らせることしかできなかった。
◇ ◇ ◇ ◇
クレープ店に向かった3人を見送り、十和田さんを振り返れば……彼はあの夜と同じ、皮肉な笑みを浮かべていた。
「おいで、向こうの方が静かだから」
優しい声で遠くの茂みの向こうを指し示す彼に、私は頑なに首を振った。
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