ティトの魔法学園の一日 14
「な、なんでそういう発想になるんだよっ!」
俺は慌てふためいた。
ペットを飼いたいと言い出したことが、いったいどうして、俺の信用問題にっ!?
「ティト、俺は悔しいっ!! 俺たちのどこが不足なんだっ!?
つまりはもう……、俺たちには飽きたったことか?」
ファビオは憤懣やるかたない、といった様子で握り締めた両手をテーブルに叩きつけた。
「はあっ!? 飽きた……!?」
――なんで、そうなる!?
「私たちではティトの慰めにはならないというだろう!?
ペットを飼わなければならないほど、ティトの心は満たされていないのか?
私たちでは、ティトを満足させられていないのか?」
オルランドのまっすぐな黒い瞳。
――うん、なにか根本的に、間違ってる!!
「いや、その、そもそも、俺はただ、ペットを飼ったら、もっと楽しい生活になるかなーって、思って……」
「「これ以上楽しくする必要なんて、どこにあるんだっ!!??」」
気づくと、二人が目の前に迫っていた。
――相変わらず、キラキラしすぎて圧がすごすぎ!!
「だって、俺、犬とか、好きだし……。モフモフだし……、撫でたら癒されるっていうか……」
「何かを撫でたいなら、ずっと私の髪を撫でてくれればいいだろう!! 犬なんかより、よっぽど毛並みがいいはずだ!!」
――オルランド、本気で言ってる!?
「でも、でもさ、可愛いペットが家にいたら、きっと、楽しいよ!? ファビオとオルランドだって……!!」
「そんなこと言って、ペットにかまけて、俺たちをないがしろにする気だろうっ!?
ティトは全然わかってないっ! 俺たちがいつもどれだけ我慢してると思ってるんだっ!?」
ファビオは言うと、俺を抱き上げて、リビングのソファに落とした。
そして俺の上に、二人が左右から乗り上げてくる。
「あ、あの……、二人とも、ちょっと落ち着いて…‥」
「ああ!! ティトがその辺の犬をなでなでしているのを想像するだけで、怒りが増幅して、私の内なる闇の魔力が制御できなくなりそうだ!!」
オルランドの振れ幅がすごい!!
「くそっ、忌々しい獣め!! ティトの隣は俺の定位置なのに、そのうち俺は犬ごときにその場所を奪われるんだっ!!!!」
何の想像をしているのか、ファビオは悔し気に唇を噛み締める。
「ああ、そうだ! そのうち私たちのベッドの上にも、我がモノ顏で上がってくるに違いない!!」
オルランドも苛立たし気に眉根を寄せる。
「当たり前のようにうちに居座り、いつもティトにぎゅうっと抱きしめられて、そのうちティトの顔をぺろぺろなめたり……」
「泥まみれになったことをいいことに、ティトと一緒に風呂にも入ろうと画策してくるに違いない…‥、くっ、獣のくせに、小賢しい真似を……」
――ねえ、いったい、何の想像!?
しかもなぜかオベロンの言っていたことに、既視感もあるんだけど…‥。
「ティトっ、俺たちはっ、これ以上、君の愛を誰かと分散させるつもりなんて、まったくないっ!!」
ファビオは俺を引き寄せると、そのまま俺に唇を重ねた。
「んっ、む……」
熱い舌が侵入してくると同時に、俺のシャツのボタンをオルランドが一つ一つ外していく。
「ティト、何かを可愛がりたいなら、私たちをもっと可愛がって欲しいな?」
「ひゃ、あ…‥」
オルランドの指先が、俺の裸の胸をやさしくたどる。
「俺たちは、まだまだティトの愛に飢えてるんだ……」
「あ、ん……」
ファビオのキスに夢中になっているうちに、俺はいつのまにかソファの上で裸にされていた。
「こんなことを言い出すだなんて、きっと、私たちの愛がまだまだ足りなかったんだね。
ティト、今日はじっくりわからせてあげるね。
――この生活には、もう何も、誰も入る隙間がないんだってことを……」
「あ、あ……、気持ち、い、い……」
オルランドの舌と指が、俺を追い詰めていく。
「もうペットなんて、飼いたいと思えなくなるほど、俺たちでティトをいっぱいにしてやるよ」
「ファビオ、あ……、ん……、オルランドっ……」
俺が思わず腕を伸ばした先に、脱がされていた俺の制服のズボンがかけられていて……、
俺がそれをつかんだ弾みに、ズボンが床に落ち、そしてポケットの中に入っていたものが、そのまま床を転がった。
「「これは……っ!!??」」
――それは、俺が今日、グラート君からもらった魔石だった……。
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