ダンジョンに呑まれる
@YodomiADI
第1話
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もう何が何だか分かってはいなかった。
地面がひび割れ、足を滑らせ、宙ぶらりん。リュックが引っかかり助かったと思えば、じわじわとその広がりは止むことなく、闇の中に滑落する。時間が絶望を与えてきた。
ただ声だけが、自分の不幸さに悲しむ暇もなく、起きる理不尽さに怒る隙間もなく、ただ声だけが耳に聞こえてくる。自分が出している声だとも思えずに。
もう全てがダメだった、光が、空の青さが遠のいて、声を絞り出す。あぁ俺は、呑まれた。
それが意識を失う前の話。
そしてこれからが意識を取り戻した後の話 。
手が地面を撫でていた。気がつくと壁に背をつけて倒れていたようだ。周りは洞窟、だけど暗がりはなくくっきりと見える。
目の前には不似合いな大きな宝箱。
他に目につくものは何も無く、落ちてきたと思う天井は固く閉ざされている。
宝箱を開けるのは怖かった。
そのまま膝を抱えてしゃがみこんで数時間経ったと思う。ただ、気持ちが落ち着いてきたことは確かで、なにかしなくちゃって思ったのは本当のことで。
宝箱を開けた。
剣が入っていた。
自害用だろうか。
渇いた唾を飲み込む。
ずっしりと、手に持つとその重さが手に馴染んだようだった。これが自分のいのちと同価値の重さなのだろうか。
すると、ガラガラと壁が崩れて、向こう側に道ができる。
進むべきか進まないべきか。
減らないお腹に疑問を抱かないまま、洞窟の中を歩き始めた。
ダンジョンに呑まれる @YodomiADI
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