2.

誰かがこの鬱屈感を吹き飛ばす話題をしてくれないものかと密かに押し付け合いをしていた時。


静寂を消すチャイムが響いた。


四人ほぼ同時にピクリと反応した。

そして、顔を見合わせた。


帰ってきたのだろうか。


信じられないといった顔を互いにし、インターホンの画面近くにいた今井が見たが、「え?」という声が上がった。


「どうしたのです」

「え、いや⋯⋯」


歯切れの悪い今井のそばに寄った安野も画面を覗いた。

黒いスーツ姿に身を包んだ中年男性は、確か御月堂の専属の運転手だったか。それも何故来たのかと甚だ疑問であったが、彼のやや後ろに隠れるようにしている子どもにも首を傾げることとなった。

三、四歳程度か、ほぼ俯いていて顔は分からなかったが、男の子のようだった。

この組み合わせは一体どういうことなのか。


その疑問をぶつけるべく、応対ボタンで言ったが、「話は中でしてもよろしいでしょうか」と返された。


「どういうこと」と誰かの言葉が漏れてしまう混乱の中、二人を中に入れた。

玄関先で手短に自己紹介した運転手はその後、こう続けた。


「御月堂様がご依頼なされていた代理出産の方がいたでしょう」

「ええ」

「その方のご子息です」

「「「⋯⋯⋯え???」」」


思わず声が被った。

あの代理母に子どもがいるという話は聞いたことがなかった。

代理出産する条件の一つで一人以上出産した経験がある人だという話だが、姫宮の口からそのような話を聞いたことがなかった。

勝手ながらに死別したとでも思った者もいたが、そうではない事実に安堵したのも束の間、何故、母親ではなくその子どもが、しかも御月堂専属の運転手が引き連れてきたのか。

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