第48話 保留


 ドルス村に到着した僕は、村の入り口にいた門番に、三人を引き渡した。



 指名手配犯の三人────


 マツイ、マツダ、マルヤマは門番が拘束して、冒険者ギルドへと連れて行かれた。



「……ふぅ」


 ────ようやく、肩の荷が下りた。




 僕は宿屋に行き、部屋を取る。


 その後、装備のメンテナンスを頼みに、鍛冶屋へと向かった。



 金貨1枚を払い、武器防具の修繕を依頼する。


 ついでに、マツダから奪った冒険者の槍を、金貨1枚で鍛冶屋に売った。


 装備の修繕を只でやって貰ったような気がして、お得な気分になる。




 槍を売る前に、念のため『これは殺人犯の装備品だったもので、奪い取った物だが、売っても罪に問われないか────?』と聞いて、確認しておいた。



 ────鍛冶師から、説明を受ける。


 どうやら、売っても大丈夫らしい。



 このゲーム世界で指名手配犯は、『モンスター』扱いになるらしい。


 装備品は、ドロップアイテムと見做されるそうだ。



 ちなみに────


 指名手配犯以外から物を奪うと、職業に『盗賊』が追加されることになる。


 そうなると、警備の厳しい村や町には入れなくなってしまうので、注意するように言われた。







 僕は宿に戻り、ログアウトすることにした。


 現実に戻る前に、ステータスのチェックを行う。



 冒険者のレベルが36から38に、魔法使いのレベルが33から35に上昇している。


 手に入ったボーナスポイント4を、膂力に振り込んで51まで上昇させた。




 今日は犯罪者を連れて歩いたので、精神的に疲れている。


 作業を終えてから、ベットに入りログアウトした。








 


 ゲーム世界から目覚めた僕は、いつも通り学校に登校して勉強をする。



「……ん?」


 携帯に珍しく、家族以外からのメッセージが届いた。



 どれどれ……。

 

 ────冷泉からの呼び出しだった。



 昼休みに、人気のない校舎裏へと赴く。

 

 


 二人きりで話すために連絡を取り、人気のない場所で待ち合わせをする。


 まるで、皆に隠れて付き合っているカップルみたいだ。


 ……。


 ……いや、いや。


 あり得ない妄想を振り払い、僕は冷泉との待ち合わせの場所に急いだ。








「待った? ────ごめんね! 中々抜けられなくて」



 冷泉は自分で指定した時間より、少し遅れてやって来た。


 友達の多い彼女は、単独行動をするのも一苦労なのだろう。



 その点、友達のいない僕は、気兼ねなく単独行動が出来る。





「いや、……僕も、今、来たばかりだから────」


 僕は、付かなくても良いような嘘をつく。



 そのせいで、『デートの待ち合わせをしていた男女』みたいな、やり取りになってしまった。


「そっかー、良かった~」


 ……。

 

 冷泉は僕の嘘に、簡単に騙された。


 彼女は些か、騙されやすい所がある。


 ────純粋過ぎるのでは、なかろうか?



 僕に何度も、騙されている。


 もっと、人を疑った方が良い。



 将来悪い奴に、騙されないか心配だ。



 …………。


 いや、僕が心配することでは無いが……。







「それで、その────話、というのは?」


「ああ、うん。ゲームの事なんだけど────あのさ、この前、連絡とった時に……まだパーティを組んでないって、言ってたよね?」


 その通りだ。

 僕には友達も、仲間もいない。



 黙って頷く────


「パーティメンバーを、集める気は無いの?」


「……探してみたんだけど、良い人材がいなくて────誘おうとした相手はいたけど、なんというか────プレイスタイルというか、方向性が合わなかったんだ……」



 少し前に、村の広場で声をかけた女の子を思い出す。


 彼女を仲間に誘おうとしたが、断られたばかりだ。



「……そうなんだ。────私には、よく分からないけど、やっぱり、ゲームが上手い人って、そういう『こだわり』とかあるんだね。────でも、仲間はいた方が良いんだよね?」


「あっ、うん。────それは、そうだよ」



 ────荷物持ちでもいい。


 戦闘で役に立たなくてもいいから、人手が多いほうが良いのは確かだ。


 テントを背負ってくれれば、その分、外での探索時間を増やせる。



「じゃあさ、仲間を増やそう! 実は仲間の当てを見つけたんだ。────それも二人も!!」



 なんと、冷泉は仲間になってくれそうな人材を、探し出したらしい。


 流石は陽キャだ。


 ────顔が広い。



「私の友達のお姉さんが、『寝てるだけでお金がもらえる、変わったバイトをしている』って言ってるのを聞いて、あのゲームのことだって、ピンと来て────確かめてみたら……」



 そのお姉さんが、『ラスト・パラダイス』のプレイヤーだったのか……。


 さらに、その人と同じクラスに、プレイヤーが、もう一人いるらしい。



 比較的近くに住んでいるプレイヤーが二人……。


 冷泉から『その二人と会って、仲間に誘おう』と提案される。

 


「直接、会って話をすれば、田中の言う、その、『方向性』とか、そういうのも合わせられる、かもだし────」


「……えっと、────う~ん」


 仲間、か────


 いた方が良いのは確かだが、リアルで会うのはハードルが高すぎる。


 仲良くなれる、自信がない……。




 でも、冷泉がここまで、してくれたんだ……。


 それを無下にするのも、気が引ける。




 彼女の提案を受け入れるか、断るか……。 


 悩ましいところだ。



 う~ん……。



 ……っ!!


 ああ、そうだ。


 先に、これを聞いて、おかなければ────





「────えっと、その二人って、ゲーム世界の、どこにいるか分かる? 僕は今、『ドルス村』に居るんだけど……」


 近くにいなければ、そもそもパーティを組めないじゃないか。



「ああ、そうか。────えっと、私から確認しておくね」



 この件は取り敢えず、『保留』ということになった。




 *************************


 名前    タナカ ジロウ           

 

 職業      冒険者Lv38 魔法使いLv35                       

 戦闘タイプ     特質系 時空間能力者

 魔力属性        闇  

 


 最大HP        95/140

 最大MP       540/670


 膂力         51

 体力        130

 魔力        830

 俊敏         76

 命中         55


 精神力       125

 運          70

 魅力        115       



 装備

 旅人の服 旅人の靴 旅人のマント 冒険者の鎧(戦士の籠手) 冒険者の兜 戦士の盾 魔導士の指輪 勇者のネックレス 戦士の短剣


 スキル

 魔力操作 魔力属性変化 魔力具現化 魔力放出


 魔法

 なし


 特技

 ダークショット スロウ ワープ 回復力上昇 ダークキャノン 渾身の一撃 ブラックアーマー


 所持金

 金貨32枚 


 ボーナスポイント

        0  


 *************************

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る