第39話 ある意味、モンスターよりも厄介だ。
僕は迷宮『コボルトの谷』のボス、コボルト・キングの討伐に成功した。
これで二つ目のダンジョン攻略である。
ボスとの戦闘で疲弊した僕は、道具屋から宿屋に帰るとすぐにベットに入った。
そして、ゲーム世界からログアウトする。
…………。
……ん。
目覚めると、朝だった。
今日も休日なので、いつものように家で一日を過ごす。
一日が終わると、ゲームの時間だ。
僕は『ラスト・パラダイス』にログインして、ステータスのチェックから始める。
……。
……おっ!
特技の欄に早速、『ダークキャノン』が追加されていた。
冒険者のレベルが32から36に上昇していて、魔法使いが28から33に増えていた。
手に入れたボーナスポイントを9を全て、『膂力』に割り振り、数値を38から47まで上昇させる。
────それから、ワールドニュースもチェックした。
僕が『コボルトの谷』を攻略したことが、記事になっている。
前回の記事とは、ちょっと違う。
記事には『ソロプレイヤー』が異例のスピードで、攻略を実現させた。
────とか、なんとか書いてあった。
スライムの森の攻略は、スズヨウさんとパーティを組んでいた。
なので、ソロ攻略という扱いではなっかったのだろう。
今回は最初から最後まで一人だったので、『ソロ』要素が特筆されたようだ。
褒められてはいるのだが、暗に『お前は一人きりだ』という事実を突きつけられているようで、正直、微妙な気分にもなった。
…………。
……流石に、被害妄想が過ぎるだろうか?
まあ、いいか────
気にしても仕方がない。
僕は気持ちを切り替える。
記事の最後に、今回攻略を達成した『タナカ ジロウ』は、かなり特殊なスタイルのプレイヤーであり、彼のソロ攻略に触発されて、攻略を急ぐと危険な状況に陥るだろう。────慎重に冒険すべきだ。
という注意事項が書いてあった。
わざわざ、こんなことを書き足して注意を促さなければいけないくらい、僕は危険な事をしていたようだ。
まあ、これも気にしても仕方がないことだ。
もう攻略した後だし……。
僕は装備をメンテナンスする為に、鍛冶屋に向かう。
金貨1枚を払い、装備の耐久度を回復して貰う。
その後で防具を新調するために、防具屋へと向かった。
防具屋までの道のりで他のプレイヤーを見かけたので、鉢合わせしない様に迂回路を通り、防具屋に辿り着いた。
僕もこのゲームを始めて随分経つ────
かなりやり込んでいる『古参プレイヤー』と言ってもいいくらいの、上級者になった。
他のプレイヤーの存在をいち早く察知し、見つからない様に隠れたり、回り道に精通したりしている。
数々の経験を積んで、最初の頃とは見違えるような成長を遂げている。
防具屋に無事辿り着いた僕は、自分の成長に酔いしれていた。
「────あの、この戦士の鎧を下さい!」
僕は少し、得意げに注文する。
「はいよ、戦士の鎧は金貨50枚になるが、良いかい────?」
……あっ、しまった!
僕の所持金は、金貨43枚だ。
7枚足りない……。
「……あの、すみません。お金が足りませんでした」
僕は頭を下げて、お店の人に謝罪した。
「ぷっ、あいつ、見ろよ!! NPC相手に謝ってるぜ。しかも、お金が足りないだって────ダッサッ! 死ねよ!!」
「ぷっ、ぶははっ、笑ってやるなよ。可哀そうじゃん!! ────ん? てか、何アイツ? 弱そうなくせして、装備だけはいっちょ前だな。────このゲームって、課金は無かったよな? どうやって手に入れたんだ? ……あれ」
……。
気付いていた。
────気付いては、いたんだ。
近くにプレイヤーが、迫っていたことに……。
でも、買い物中だったから、逃げるに逃げれなかった。
買い物を速やかに済ませて、すぐに宿屋に戻ろうと思っていた。
だが、よりによって、こんなみっともない場面を見られてしまうなんて……。
「お客さん、鎧装備なら、部分購入も可能だよ。────どうする?」
「えっと、じゃあ籠手だけ、購入しても良いですか?」
「籠手だけなら、金貨15枚でいいよ」
おおっ!
籠手だけでも強化出来れば、かなり違ってくる。
買うことにしよう。
「────じゃあ、戦士の籠手を下さい」
僕は金貨15枚を支払い、戦士の籠手を購入した。
「おいおい、お前、なんでそんなに金持ってるんだ?」
先ほど僕を嘲笑した二人組が、後ろから声をかけて来た。
さて……、
どうしよう…………?
「────おい! 待てよ!!」
「無視すんなよ、お前!!」
ガシッ!!
僕は二人組のプレイヤーに絡まれている。
無視していたら、肩を掴まれた。
二人組が声をかけてきた事には気付いていた。
こっちを馬鹿にする感じだったので、気付かない振りで歩き出す。
────これで諦めるだろう。
そう思った。
だが、二人組は僕を追いかけて来た。
どうすればいいんだ……?
走って逃げるのもどうかと思い、早歩きで宿に向う。
その途中で、強制的に止められてしまった。
取り敢えず……、用件を聞くか。
僕は振り向いて尋ねる。
「あの、何の用ですか?」
「『何の用ですか?』じゃねーんだよ。逃げんなよ。お前!! なあ、金かしてくれよ? いいだろ? 金が無いんだったら、お前の着ている装備を寄こせ」
────露骨なカツアゲだ。
この人たちも、現実世界ではこんなことはしないと思う。
ゲーム世界だからと、羽目を外している様だ。
「……お断りします」
僕はそう言って、肩を掴んでいる手を振り払う。
「いてっ!! こいつ、暴力を振るいやがった!!! いってー!!! 暴力反対!! 暴力反対ッ!!!」
えぇ……?
手を振り払ったら、大げさに騒ぎ始めた。
どうやら僕は────
厄介な奴に絡まれてしまったようだ。
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名前 タナカ ジロウ
職業 冒険者Lv36 魔法使いLv33
戦闘タイプ 特質系 時空間能力者
魔力属性 闇
最大HP 140/140
最大MP 580/670
膂力 47
体力 130
魔力 830
俊敏 76
命中 55
精神力 125
運 70
魅力 115
装備
旅人の服 旅人の靴 旅人のマント 冒険者の鎧(戦士の籠手) 冒険者の兜 戦士の盾 魔導士の指輪 勇者のネックレス 戦士の短剣
スキル
魔力操作 魔力属性変化 魔力具現化 魔力放出
魔法
なし
特技
ダークショット スロウ ワープ 回復力上昇 ダークキャノン
所持金
金貨37枚
ボーナスポイント
0
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