第36話 夜明け


 その日は一日、身体が重かった。


 ────痛みはないが、怠さが取れない。



 ゲーム内でどれだけ疲れても、現実世界で過ごすうちに、その疲労は改善されていくのだが……。


 今日はどれだけ時間が経過しても、疲れは取れなかった。


 疲れの溜まった状態で、学校に行き、くたくたになって帰宅する。


 一日が終わった。



 僕はゲームへログインする為に、眠りに就く……。



 ────果たして、ちゃんと入ることが出来るのだろうか?








「……ここか」


 目を開けると、暗闇の中にいた。



 周囲を見渡す────

 暗闇の中でも、はっきりと地形を把握できた。


 昼間よりも明度が下がり、暗い。


 けれど活動に支障はない。

 

 

「昨日の、続き……だよな」


 身体に異変は無い。


 正確に地形を覚えている訳ではないが……。


 昨日、────

 強制ログアウトされる前にいた場所だと思う。




 だとすると……。

 ゲーム内の時間は、午前零時なのだろうか?


 正確な時間は解らないが、夜であることは確かだ。



 とにかく、探索の続きをしよう。


 僕は暗闇の中を、再び歩き出した。





 歩き進めると、僕が壁面に付けた×印を見つけた。


 ×印は三つある。

 僕が付けたもので、昨日と変わらない。

 


 ただし、この崖を下りるのに使用したロープは、見当たらなかった。


 上を見ると、崖の途中でロープが千切れている。


 

 コボルトに切断されたのだろう。


「情報通りだな……」


 僕は壁に×印をもう一つ付けて、探索を再開した。


 

 





 意識が朦朧としてきた。


 一時的に、眠気に意識が持って行かれている。




 僕は両手で頬を叩く。


 ────パシィィイイン!!!!

 

 気を取り直して、探索を再開する。


 …………。


 ……。


 動けないことは無いが、眠気が凄い。


 そろそろ、テントを使うか────。



 そう考えていたところで、壁面に×印を見つけた。


 ×が四つ────



 僕は壁面に、新しく×印を追加する。

 ここで僕は、違和感に気づく。


 空が明るい……。


 周囲を見渡す。

 谷の底はまだ暗いが、徐々に明るくなってきている。

 


 ────眠気に襲われながら、考える。

 三つ目の×印をつけたのは、昨日の夜の九時くらいだ。

 

 それから二周して、×を二つ付けた。


 谷を一周するのにかかる時間が五時間としても、十時間────

 夜中の探索は疲れと視界の悪さで効率が落ちるので、実際にはそれ以上、時間が経過しているかもしれない……。



 ゲーム世界の時間は、朝の七時を過ぎているはずだ。

 

 夜が明けたということは、ゲーム世界で一日経ったということか……。



 …………ここでこうして、考えていても仕方ないか。

 


 僕は考えるのを止めて、テントを広げる。


 テントに入り、すぐに眠ることにした。



 今日こそは、ちゃんとログアウト出来る。


 疲れ切っていた僕は、三秒で眠りに落ちた。








 現実世界で目覚めた僕は、疲れ果てていた。


「寝て起きて、疲れてるとか……最悪だ」



 最悪ではあるが、やり切った充実感もあった。


 顔を洗いトイレを済ませ、朝食を取り歯を磨く────


 今日は休日で、学校は休みだ。




 僕は部屋に戻り、体力を回復させるために眠ることにした。


 …………。


 ……。



 目覚めると、昼を少し過ぎていた。


 僕の特技『回復力上昇』の効果だろう。


 半日寝たら、疲れはほとんど取れていた。




 母親は仕事で、家に居ない。

 

 僕はインスタントラーメンを作り、食事を済ます。


 部屋に戻って、宿題を片付けた。


 

 昨日は体調が悪く、授業に身が入っていなかったので、念のため授業内容の復習してから、小説を読んで過ごす。




 一日が終わる。

 

 ゲームにログインする時間になった。



「……今日は、大丈夫────だよな?」


 ゲーム世界に入るのが、ちょっと怖い。


 まだ世界が、暗闇だったらどうしよう……。



 そんな不安を抱えながら、僕はゲーム世界にログインする。







 僕はテントの中で、目を覚ます。


 慌ててテントからでて、外を見る。 


 ……明るい。



 ────良かった。


 ちゃんと、夜は明けたようだ。

 ここは谷の底で陰ってはいるが、夜の暗さとは根本的に違う。


 顔を上げれば青空が見えた。


 

 …………あっ!


 僕は慌ててテントに入り、ステータスをチェックする。


 探索を始める前に、ボーナスポイントの割り振りをしておきたい。 


 テントが無くなる前に、気付いて良かった。




 冒険者のレベルが、30から32に増えて、魔法使いが25から28になっていた。合計でレベルが5上昇したので、ボーナスポイントも5付与されている。


 僕はボーナスポイントで『膂力』を5上昇させた。



 膂力が33から、38になる。


 数字上は小さな変化だが、身体を動かしてみると『前よりも力が増した』と実感できるレベルで、違いが生まれていた。


 




 *************************


 名前    タナカ ジロウ           

 

 職業      冒険者Lv32 魔法使いLv28                       

 戦闘タイプ     特質系 時空間能力者

 魔力属性        闇  

 


 最大HP      140/140

 最大MP      670/670


 膂力         38

 体力        130

 魔力        830

 俊敏         76

 命中         55


 精神力       125

 運          70

 魅力        115       



 装備

 旅人の服 旅人の靴 旅人のマント 冒険者の鎧 冒険者の兜 戦士の盾 魔導士の指輪 勇者のネックレス 戦士の短剣


 スキル

 魔力操作 魔力属性変化 魔力具現化 魔力放出


 魔法

 なし


 特技

 ダークショット スロウ ワープ 回復力上昇


 所持金

 金貨22枚 


 ボーナスポイント

        0  


 *************************

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