第15話 テント


 初級ダンジョン『スライムの森』────


 この迷宮の攻略方法は、すでに判明している。



 森の中に入り、ブルー、レッド、グリーン、イエロー、グレイの各種スライムを二十体ずつ倒せば、ボスが出現する。


 そのボスを倒せば、迷宮攻略となるのだ。



 僕はパーティを組んでいる、冒険者のスズヨウさんと一緒に迷宮に入った。

 

 後はスライムを倒して回れば、ボスが出てくる。



 


 

 ボスの出現場所が決まっていないのなら、なるべく有利な場所で出現させて、待ち構えて戦いたい。


 森を探索して、敵を倒しながら、戦いやすい地形を探ろう。


 取り敢えず、進もうか────



「森を探索します。先に進んでください」


 スズヨウさんに、森の中の道を進むように指示する。



「…………」


 彼は不満そうにしながらも、言う通りに森を進む。


 


 …………。


 ……。



 

 森を進むと、スライムが現れる。


 それを僕が、ダークショットで仕留めながら進んだ。


 スライムは行く手に、待ち構えているだけではない。


 

 森の木の陰から襲ってきたり、ときには背後から現れることもあった。


 魔力で作った弾丸は、作り置きが出来ない。

 敵が出現してから弾を作り、対応せざるを得ない。



 木の陰から現れた敵の不意打ちや、知らぬ間に後ろに回り込まれ、奇襲を受けることもあったが、事前に防御装備を充実させていたおかげで、そこまでのダメージは受けなかった。


 抗麻痺薬や、抗毒薬を服用しているので、麻痺や毒に犯されることもない。



 僕がイエロースライムや、グリーンスライムに攻撃された時に、スズヨウさんが期待を込めた暗い目で、僕を見ていた。


 そして、僕に状態異常が発生しないことを確認すると、その度に『チッ!!』と、僕に聞こえるように舌打ちをしてくる。


 パーティの雰囲気は、相変わらず最悪だった。





 

 僕はこの森で、それぞれの種類のスライムを、十匹以上倒している。


 今日初めて戦ったグレースライムも、問題なく倒せた。



 防御力が高いだけあって、倒すにはダークショット二発が必要だった。


 試しに弾を大きくして射出の出力を上げると、グレースライムも一撃で倒せたが、敵によって攻撃の仕様を変更するのは止めておくことにする。


 戦闘中はとっさの判断ミスが、命取りになる。

 レッドスライムに対する散弾以外は、ダークショットの弾の大きさと出力は統一して使用したほうが良いだろう。


 効率的に敵を倒す事よりも、作業を単純化させてミスを減らしたい。






 迷宮を探索して、五時間が経過した。


 スズヨウさんの態度は最悪だが、それ以外はここまで順調に来ている。



 スライムのボスと戦う為の地形を捜し歩いたが、最適な地形はなかなか見つけられなかった。


 ────どこも似たような森の道だ。

 たまに、少し開けた場所がある。



 ……そこにするかな。

 

 木の陰に隠れながら戦いたいが、敵もそれを利用して身を隠してくる。


 少しでも視界が開けた場所の方が、奇襲を受けずに済む。



 パーティメンバーがもっといれば、戦術の幅も広がるが、僕の仲間は囮とデコイにしか使えないスズヨウさん一人だ。


 ダークショットの火力でごり押しするしかないのだから、視界の開けた場所を戦場にした方が良いだろう。


 





 戦う場所よりも問題なのが、ボスを出現させるタイミングだ。


 一応、倒した敵の種類と数を数えてはいるが、数えなければいけない敵の種類と数が多い……。


 数え間違いがあれば、予期せぬタイミングでボスが出てしまう。



 出来れば周囲に敵のいない状態でボスに出てきて欲しいが、状況を上手く調整するのも難しいだろう。


 最適なタイミングを狙って敵をえり好みしていれば、僕のMP消費が嵩んでしまう。


 ……その辺りは、運次第だな。


 ある程度は調整するが、最後は出たとこ勝負で行こう。



 僕は方針を決めた。







 迷宮に入ってから、八時間以上が経過しただろう。

 

 この日の『スライムの森』の探索で、グレイとレッド以外のスライムは二十匹以上討伐済みだ。



 僕の計算と記憶が正しければ、後はレッド二体にグレー三体、スライムを倒せばボスが出現する。



 ……。


 僕のMPが心許なくなってきたので、テントを広げて休息を取ることにした。


 自分の今の状態────

 この感じだと、HPも半分ほどになっている思う。

 

 これ以上の探索は危険だ。




 僕は開けた場所で、背負っていたテントを使う。

 

 テントは地面において、リュックから出ている紐を引っ張ると、圧縮が解除されたように膨れ上がり、組み立てる必要もなくそのまま使える。



 ご丁寧に、焚火と椅子付きだ。


 いつの間にか出現していた。



 このテントの周囲には、モンスターは寄って来ない。

 テント内部は宿屋の部屋と同じで、アイテムを使用したプレイヤーしか入ることが出来ないセーフゾーンになっている。

 

 僕はテントに入り、ステータスを確認する。


 MPをかなり消耗しているし、森を歩き回り攻撃を食らったことでHPの減少も激しい……。



 早くログアウトして休息したいが、先にこれを見ておく必要がある。

 

 ボスとの戦闘は、不確定要素が多くなるだろう。


 戦に備え、ボーナスポイントの割り振りもしておきたい。




 ステータスをチェックする。


 冒険者のレベルが14、魔法使いのレベルが12にアップしていた。

 レベルが合計9上がっていたので、ボーナスポイントも9増えている。


 そして特技に『スロウ』という能力が追加されていた。



 これは……、なんだろう────?





 *************************


 名前    タナカ ジロウ           

 

 職業      冒険者Lv14 魔法使いLv12                       

 戦闘タイプ     特質系 時空間能力者

 魔力属性        闇  

 


 最大HP       35/140

 最大MP       40/670


 膂力         28

 体力        130

 魔力        830

 俊敏         26

 命中         55


 精神力       125

 運          70

 魅力        115       



 装備

 旅人の服 旅人の靴 旅人のマント 冒険者の鎧 冒険者の兜 冒険者の盾 魔導士の指輪 勇者のネックレス


 スキル

 魔力操作 魔力属性変化 魔力具現化 魔力放出


 魔法

 なし


 特技

 ダークショット スロウ


 所持金

 金貨1枚 


 ボーナスポイント

       26


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