第2話ー使命と相棒と異世界転移
パッヘルベルの作曲『カノン』。
結婚式の曲として、知っている人が多いだろうか?
そんな結婚式で有名なカノンには、カノン形式と呼ばれる演奏様式がある。
簡単に説明すると、一つのメロディを複数のパートが追いかける、輪唱のことだ。
重なり合うメロディが、和音を並べる
僕はそんなカノンが、小さい頃から大好きで、演奏会でよく、ソロ演奏をするのだ。
だから、今回のニューヨークでの演奏でも、一番最初に、カノンを弾いた。
いや、正確には違う。
弾いていたのだ。
何故なら僕は、カノンの演奏の最中に、会場の照明が暗転した瞬間、
そこはフワフワとした世界で、有り得ないことではあるのだけれど、まるで、雲の上に居るかのようだ。
「……………………?何だこりゃあああああ!!???え?これが噂に聞くドッキリってやつなの!?えっ?!怖い怖い怖い怖い怖い怖い…………だって僕、さっきまでホールで演奏してたんだよ!?おーーーーい!!誰か返事をくださーーーーい!!!」
「響様。突然この様な真似をしてしまい、申し訳ございませんわ」
「……………………っ!?」
精一杯の声で誰かに訴えかけると、僕の目の前に、翼の生えた白肌の女性が、舞い降りて来た。
その女性は、白の羽織物を身につけており、絵に描いたような女神様って感じだ。
謝罪の言葉と共に、着地をした女性は、僕に対して、頭を深く下げた。
そんな女性の姿に「?」しか無い僕は、何故か頭を下げられていることに、内心でアタフタしつつ、話し掛ける。
「き、気にしないでください!大丈夫です!!(これがドッキリだってことは)ちゃんと分かっていますよ!!」
「そ、そうなんですか……お優しい方なのですね。(これが定番の異世界転移モノだって)分かっててお許しをくださるなんて……」
「いえいえそんな……僕も(ドッキリされるとか)小さい頃から憧れていたので!」
「(異世界転移に)憧れていたのですね……そのお言葉を聞けてホッと安心しましたわ」
「はいっ!本当に(小さい頃からドッキリには憧れていたので)大丈夫ですよ!」
女性は僕の言葉に感激したのか、ポロリと流れた涙を、右手の人差し指で払うと、もう一度、僕に一礼をした。
「この様な優しい方だから、あの様な素敵な音を奏られるのですね……。すみません、自己紹介がまだでしたね。
(あっ、まだドッキリは続くのか……ココは載った方が皆には楽しんで貰えるかな?)
ドッキリが続いているのだ、と思い立った僕は、左方膝を着いて、頭を下げる。
「これはこれは女神様。お初にお目にかかれたこと、光栄に存じます。そのお姿の美しいこと、何と表せば良いものか。私めなどの音では分不相応でありますれば……メルシー様より賜りました、極上の賛美に添えられるよう、日々精進するとともに、我が生涯の誉れとして、有難く頂戴致します」
堂々と謙譲する、騎士のような、僕史上最高の演技。
それは、僕のイメージと、偏見によって成し得た産物であるが、そこはご愛嬌だ。
何故なら、女神様(という設定の女性)が、僕の演技に対して、感激のあまり、目を潤ませているのだから。
そんな女神様に対して、僕が内心でガッツポーズをしていると、女神様は、感慨深そうに口を開く。
「
女神様が、パチンッ!と指を鳴らすと、僕の周りに、光の粒が舞った。
(凄いなあ、今時の科学技術って。こんなことも出来るんだなあ……)
徐々に、僕の身体が光に溶け、薄くなっていく。
「(へぇ……こんなことも、出来るん、だ)…………っ!?僕の身体消えてる!!??えっ?ちょっ?!これ、どーゆーことですか!?」
「はい。ご承知の通り、今から異世界に行って貰います」
「ご承知…………?いせかい…………??」
「はい。これから貴方には、戦争が絶ないため、人類が滅びかねない世界に行き、音楽の力で、各国の戦争を止めて頂きます」
「戦争を、止め、る…………???」
「世界に直接干渉出来ない私の代わりに、どうか
「ドッキリだと言ってくれええええええ!!!!!」
異世界に転移する瞬間、薄れ行く視界に捉えたのは、悲しそうな表情で、遥か彼方を見詰めている、そんな、女神様の姿だった。
「響様。あの者に支配されてしまった最愛の妹を、どうか宜しくお願い致します…………」
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