八月の歌

昭真

第1話

 太陽は容赦なく熱線を放ち、陽炎がゆらゆらと揺れている。外の気温は一体何度なのだろうか。真夏の高速道路の上は、赤道直下の熱帯にでもいるような気分になる。トラックの冷房がなければ、とっくに熱中症で倒れているに違いない。秋山真司は気を紛らわせようと、カーラジオのスイッチをつけると浜田省吾の古い曲が流れてきた。

 —意味もなく 年老いてく

 —報われず 裏切られ

 —何一つ 誇りを持てないまま


 真司は修理車を運んで渋滞に中にいた。客先に約束した納車の時刻は午後三時。すでに時計は二時半を回っていた。ここからスムーズに走って三十分程度。事故渋滞はいつ解消されるのか見当もつかない。確実に遅刻だ。真司は大きなため息を一つついた。まずは客先で一回怒られ、次に工場に戻って社長から怒鳴られる。自分が悪いわけではないのに、一日に二度も怒り飛ばされて、ひたすら謝り続けなければならない。


 この高速道路は渋滞することが多く、真司は三十分早く工場を出発するつもりだった。しかし工場の先輩である横山は、真司のそんな都合を聞き入れるような人間ではない。だらだらと作業をするから、そのお陰で出発が遅れてしまった。だからと言って、横山が真司の代わりに謝ってくれるはずもない。何度となく繰り返されてきた横山のそんな理不尽な態度に、真司はもう何も感じなくなっていた。車の修理は終わっている、時間が少し遅れただけのことで、修理した車が走らなくなるわけでもない。自分が謝れば済むことだ。真司は狭いトラックの運転席で、独り心にそう言い聞かせていた。

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