第214話 蛇は地上を確認する
既存の階層については対策をしたユーラリング。ここでもう少し考える事しばらく、かなり長い間放っておいた地上階の事を思い出した。
『ミスルミナ』の地上部分である構造物は、まず輝く結晶体の塊をそのまま切り出した塔のような中央塔。その中央塔に繋がる、奇数か偶数の階にある通路で複雑につながった無数の土の塔で構成される塔迷宮。そしてそれらをぐるりと囲う分厚い壁とその内部迷宮である、外壁迷宮だ。
地上部分の建築可能階層は、地下にある『ダンジョン』本体の階層数の半分。第35層が完成した現在の上限は17階層分となる。
「まぁ外見に制限は無かったから、見た目だけなら何十階層分もある訳だが。……とはいえ、正直に増築していれば本体の階層数が割れてしまうから、放置せざるを得なかったのだよな」
では、この大侵攻を機に階層数を増やすべきか? 増やすとするなら何階層分を増やすか? それとも地下の階層をあと5つ、増やすだけ増やして、地上を切りよく20階層分作るか?
しかし今の段階から5階層分も新規構築している余裕はないな……。等と思いながら、とりあえず地上階の
「……、ん?」
まぁいずれにせよ、外壁迷宮の迷路構造だけでも設定しておけば無駄にはならない、と思って開いた画面だったが、そこに、以前は無かった表示がある事に気が付いた。
「階層変更(追加)回数、残り1回……?」
はて? と首を傾げて『ミスルミナ』の本体である地下階層の
……ユーラリングは知らない事だが、通常、地上階の構築というのは「1回きり」だったりした。だからこそ、何十階分もある地上階を持つ『ダンジョン』の迷宮ないし『独立軍』の砦は、その難易度が恐ろしく高いと判断されるのだし、長く防衛戦をする必要がある。
もっとも「1回」であって時間制限は無い為、ずっと地道に工事を続けている迷宮や砦が無い事も無いが、通常はそんなに気軽に階層を増やす事は出来ない。どんなにゆっくりやっても、いずれは限界が来て増築は止まる。
では、何故ユーラリングは地上階を作る事が出来たのか。それはひとえにユーラリングが「生まれついての“魔王”」という特別だったからだ。“魔王”は『ダンジョン』を作る事が出来る。そして初心者の状態で周り中から狙われる“魔王”が身を守る為には、未熟な状態で『ダンジョン』を作るしかない。だから、1度だけ、地上階を増築する事が出来るようになっている、という訳だ。
まぁだが、その辺の事情をユーラリングは知らないし、そもそも「生まれついての“魔王”」というのが実質都市伝説である辺り、下手をすればサタニスすら知らない事だろう。だから、その謎を解く事は誰にもできない。それこそユーラリングが、その辺りの事情をジェモにでも伝えなければ。
しかし『ダンジョン』の増築に関する事は、たとえ仲間であっても教えない類の秘密だ。当然その辺ちゃんと警戒する事が出来るユーラリングが、その謎の制限について誰かに相談する、という選択をする事は無い。
「まぁ、1度しか階層を追加できないというのなら、今増築するタイミングでは無かったという事だな」
そう納得して画面を閉じるユーラリング。元々あまり地上階を改築するつもりが無かったのもそうなのだが、恐らく今度の大侵攻では、地上階で立ち止まるプレイヤーは少ないだろうと見た……つまり、改築の効果が薄いと予想したのもある。
恐らくその予想は正解だろうし、どうせ稼ぐのであれば第4層の方が楽で時間単位の実入りがいいのは本当だ。それが広まっている以上、新規の侵入者がいたとしても、地上のあれこれに足を止める可能性は低いだろう。
……なお、実際の所、大侵攻の最中では足を止めなくても。その後、カジノに嵌って長居して、そのまま敵対意欲を限界以上に削られるプレイヤーはそれなりにいたりするのだが、まぁ、例によっていつもの如く、ユーラリングはその可能性を全く考えていない。
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