第171話 蛇は辿り着く

 目標が定まれば、ユーラリングの行動は早い。とりあえずもう時間もないしと採掘を優先し、掘り出した岩はとりあえず邪魔にならない場所にだけ移動させるように指示を出す。

 アイテムボックスにこそ入らないが、自分の手で運ぶ手間なくどこかに片付くのであればユーラリングにとっては同じことだ。何かいつの間にか蛇系モンスターの数が増えているような気もしなくは無かったが、減るのはともかく増える方は特に気にしないユーラリングである。

 掘っているのは土ではなく岩なのだが、全く採掘速度を落とすことなく掘り進み続け。それでも谷自体の深さが相当あった為、ユーラリングがその手を止めたのは、イベント内部時間29日目の事だった。


「かなりギリギリだったが……なるほど、これは壮観だ。苦労したかいはあった」


 なおユーラリングの「苦労した」は、通常プレイヤーの「ほぼ不可能」を指す。

 というのはさておくとして、谷の底へ辿り着いたユーラリングが見たのは、キラキラと輝く結晶が、辺り一面にびっしりと生えている光景だった。水晶のような形をして、満天の夜空のような色をしている。

 指先程の大きさから、ユーラリングなら抱き枕に出来そうなものまで大きさは様々だ。数に至っては、もはや数える事も出来ない。何せ、灯りを掲げて見える範囲、その向こうの闇に沈んでいる場所まで、キラキラとした輝きが見えているのだ。


「で、問題はこれが何なのかだが……」


 まさかここまで来てただの飾りじゃないだろう、と、ユーラリングはとりあえず足元にある夜空色の結晶に目を向け、スキルを発動してその正体を調べにかかった。

 特に何がある訳でもなく判明したその結晶の名前は「魔星結晶」。……はて、どこか何かで見た覚えがあるような? と自分の記憶を手繰るユーラリング。


「……あ、あれか。ランタンとリボン」


 それは以前、新月の祭事イベントにおける、事前準備部分で手に入れたアイテムだった。「魔星のランタン」と「魔星光のリボン」だ。うちリボンの方は神器であり、プレイヤーが作成する事は出来ない。

 思い出した拍子の呟きにちょっと中の人が出てきてしまったが、ここでユーラリングは思い出した。「魔星のランタン」は、あのサタニスをして「結構なレア物」と言われていたアイテムだ。「中身が」という注釈がついていたが。

 で、この「魔星結晶」は、加工する事で光を放つようになる、という情報が表示されている。つまり。


「っ、間に合うか……!?」


 目の前に広がっているのは、文字通り、金銀財宝を「程度」とつけて比較対象にしてしまえるような貴重品の山、という事だ。

 当然、どこまでも貧乏性が抜けないユーラリングがそれに気付いて行動を起こさない訳がない。即座に足元にあった「魔星結晶」の内、自分の指ぐらいのものを地面から抜き取ると、抜き取った部分を道具で軽く研磨してから再度情報を確認。

 どうやらそれだけで、加工された素材アイテム、に変わるらしい事を確認して、後はもうひたすらに単純作業だ。もちろん蛇系モンスター達には、後は好きに飲み食らい眠りつつ拠点の防衛をするように、と命じている。


「ぜっっったいに持って帰り、鉱山で掘り出せる鉱物の中に追加する……!!」


 なおその基準が「安定的に取れる最低量」ではなく「無限採掘が可能になるのに十分な量」である事は言うまでもない。普通は、まず不可能なのだが。

 その辺りの認識をこれまで誰も訂正せず、大体は気付かなかった為にする事も出来なかったから、現在のユーラリングがある。まぁ訂正の為に声を上げていたところで、ユーラリングがそれを聞き入れて理解していたかはまた別の話だ。

 ……もっとも、「生まれついての“魔王”」という特別のステータスを全開に、手が霞んで見える程の速度で「魔星結晶」を採取し、加工している様子を見る限り、訂正されていたところで止まらないような気もするが。

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