第5話 情熱的な愛〜ヒガンバナ編〜⑤

「真紅の長めの髪と目の男だったよ。年は僕と同じくらい」

「!ルージュだ!」

「Xではさすがになかったか」

「やっぱりルージュ、生まれ変わってるんだね」


 ヒガンバナがぎゅっと拳を握りしめる。



 ーーおやすみ、ヒガンバナ。君はどうか無事でいて。


 優しく髪をすくプロテア様の手。

 本当はルージュなんてどうでもいい。

 国なんてどうでもいい。

 プロテア様が生きてさえくれたら、ヒガンバナはそれでいいの。

 お別れなんて嫌だよ。

 最期までそばにいさせて。

 あなたが好きだから。

 愛して、いるからーー。



「……ルージュは殺さなきゃ。プロテア様を二度と失わないように」

「ヒガンバナさん、だったかな?泣きそうな顔をしているよ」


 大樹がヒガンバナに笑いかける。


「……お願い、教えて。ヒガンバナがルージュを殺しにいくから」

「……今の君には教えられないかな」

「っ!?自白剤でも盛ってやろうか!?」


 掴みかかるヒガンバナに大樹はそれでも笑っている。口を出そうとした俺を大樹が制す。


「……ひとりで戦おうとしてどうするの?ここにいるのは“恋敵”かもしれないけど、同じ人を愛する“仲間”じゃないのかな?」

「……っ!ヒガンバナは、こいつらより強いもん!ヒガンバナならルージュをーー」

「思い上がるなよ。ひとりの力なんて知れてるんだ」

 大樹の顔から笑顔が消え、冷たく放たれた言葉にびくんとヒガンバナが震えた。

「だから“仲間”がいるんじゃないのかい?」

 ボロボロとヒガンバナは涙を流し、走り去っていく。ヒガンバナを追いかけようとした俺を大樹が捕まえた。

「頭を冷やしたほうがいいよ、プロテアも彼女もね」

「そうだな。なまじ、ヒガンバナは力が強いだけあって悔いているからな」

「悔いているって?」

「プロテア様を助けられなかった責任を感じているってことさ」

「そんな……全部は俺の力不足のせいなのに」

「それを自分のせいにしてしまうのがヒガンバナさ。美桜、ルージュは嘘をついていたかい?」

「美桜たちをりようしないといったのはうそ。でも、てんせいのはなしはほんとう」

「ん。ありがとう。それだけわかれば上等だ。みんな、聞いていたな?大樹と美桜は仲間だ。信用もできると私は思う。私たちは転生前より強くならなければ結末を変えられない。だから、ふたりには仲間になってもらおうと思うのだがどうだ?」


 俺が拍手をする。ついで、グラジオラスと樹姫が拍手をする。桔梗とクロユリもそれに続く。


「よろしく、義兄さん、美桜」

「よろしく、直樹、いや、プロテア様」

「様はいらないよ」

「じゃあ僕も名前で呼んでよ」

「うん。俺たちを助けてくれ、大樹」

「喜んで」


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