第14話 約束


1週間なにも食べていないのか

やせ細ったリサさんが部屋に戻ってきた。


「リサさん…!」


「カオリ、ごめんねえ、やらかしたわ」

やつれた顔で笑う。


「リサさん、お薬ちゃんと飲みましょ

約束してください。」


「んーそれはなあ」


「今度は私が腕、切ります。」


それはダメだよお!とリサさんが言う。

「私も学校と向き合います。

だから、リサさんも約束して下さい。」


リサさんの手を握る。


ぽつりと水滴が手に落ちる。


「あたし一生ここからでれないんだよ

親なんていないし、あたしを引き取ってくれる人

なんていない、自由がほしいんだよね」と

泣きながら笑う。


自分でもびっくりした。

リサさんの華奢な身体を抱きしめていた。


「約束です。」


つられて私も涙が出た。


「あ、これ出来たんです。」


作業療法で作ったペンギンの小物入れを

リサさんに見せる。

「リサさんの瞳の色みたいな

水色にしました。」


よかったら貰ってくださいと渡す。


「ほんとにいーの?」


「ユウさんに貰った飴も入れておきました」


リサさんが笑っている。

それだけで嬉しかった。

リサさんの不安定さはまたやってくるかもしれない。

けど、この約束だけは

ふたりだけの決め事となった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る