田舎少女vsツンデレ少女
若王子先輩。
昨日の深島の話に出てきた宝塚の男役のような先輩。
不思議なことに下の名前は誰も知らないらしい。
大学に入学してもうだいぶ経つし、
冬がもう目の前だというのに未だに見たことがないのも不思議だけど学年が違うと当たり前なのだろうか。
同じような境遇…だと思いたいけど、
だとしたら噂とかでもっと早く知ってそうなものだけど。
まぁ、いずれ会えるだろう。
そう思い、僕は考えるのをやめた。
*
目の前には昨日撮った深島とのプリクラが机に並べられている。
そしていつもは朗らかに笑っているのに
ピクリとも笑っていないどころか目が死んでいる鈴森さんと
それを煽るように笑う深島。
「七咲さん。深島さんとは何も無いって言ってましたよね?」
「いや本当に何も無かったけど…」
「リップ色違いのお揃いだし、プリも撮ったよね?
それに服のコーディネートしてもらったり?
クレープとか買ってもらっちゃった!私の好みのクレープ買ってくれて嬉しかったなぁ♡
あ、デートしたことないんだっけ?
なんかごめんね?」
嬉々として鈴森さんの神経を逆撫でる深島に
やっぱり本当は鈴森さんが嫌いなんじゃないか?と思った。
崖から子供を落とすライオンにしてはあまりに陰湿すぎる。
それに昨日のプリクラなんて嫌々だったし
そんな仲良しって感じでもなかったじゃん。
深島は自分の煽りに乗るようにどんどん静かに怒りの表情に変わる鈴森さんをニコニコで楽しんでいた。
鈴森さんは深島のこと良い人だと以前言っていたけどこの光景を見て本当にそれは深島だったのかと疑いたくなる。
それにしても僕のこと好いていないはずなのにそれよりも煽る方が良いのか、つくづく深島藍という人物が分からない。
だけど
狙ってはいないがお揃いのリップに合わせて
どうせだったら、と深島に買ってもらったワンピースを着て大学に来たのが
ナチュラルに煽ってしまう形になってしまっているため僕も人のことは言えないのだった。
その時バン!と音を立ててする鈴森さんが机を叩くと僕をじとりと見つめ
「七咲さん、私ともデートしましょう?
要は深島さんとの思い出上書きすればいいんですよね?」
と何とも言えない圧を感じる笑顔で言い放った。
「はぁ?ま、まぁ?別にいいけど?
なら私はその後に遊園地でも水族館でもあんたより先にデートするから、鈴森は私の二番煎じでもしてれば?」
「なんでそうなるんですか?!というか、深島さんは七咲さんのこと苦手ですよね?
無理に七咲さんを連れ回さなくてもいいんですけど!」
「別に良いでしょ!
…だって昨日は、た…楽し、かった…し…。
〜〜!とにかく!私と出かけてもなんの問題無いでしょ!」
「大ありです!私は七咲さんが異性として好きです!その恋路を邪魔しないでください!」
「私だって!」
鈴森さんと深島の言い合いがヒートアップしてどうやって止めようかと思ったら深島が突然ピタリと止んだ。
というか
「私だって?」
「ち、違う!違うから!
好きとかそういうんじゃなくて、その…!
そ、そう!良い奴だなーって思って前より好きというか、
苦手から普通になった、みたいな?」
深島は早口でまくし立てるように言い訳を並べた後
真っ赤になりながら「馬鹿!」と罵った後走って去っていった。
「七咲さん。
いいですか?七咲さんは見た目こそお姫様のように可愛いですけど中身はとっても素敵でかっこいいんです、魅力的なことを自覚して下さい」
「は、はあ…」
「他の女の子を誑し込むのやめてください。
私が七咲さんの隣に立てるように垢抜けてる間に他の女の子と結ばれたりなんかしたらあんまりです」
「…大丈夫だよ。深島にそういう気持ち全然ないと思うし。
昨日だって鈴森さんが僕の隣に立つには精神鍛えなきゃとか言ってたし、多分不器用な優しさで、」
「それは絶対無いです。女の勘で分かります」
女の勘なんて言われたら僕はとやかく言える隙はないな。
「でも、絶対私ともデートしてください。約束」
とどこか切なそうな顔で小指を差し出してきた。
鈴森さんを拒む理由なんて何一つないし、
鈴森さんとだったらまた違った楽しみ方になりそうだなと小指を絡めて指切りをした。
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