学年1美少女に告白され、OKしたが、その告白が罰ゲームだと知った

柊なのは

プロローグ

 私、大原天羽おおはらあまはには小学生から中学まで何をするにもずっと一緒な友達がいた。


 今は全く関わりもなく話すことなんてないが、私は彼女のことが嫌いで、けど、嫌いになれなかった。


「初めまして、相川奈々あいかわななです」


 ゆったりめのツインテールに黒のリボンをつけた彼女は、ペコリと頭を下げるとクラスにいる人達はざわついた。


「可愛い~」

「あの子、可愛いくないか?」

「お前、狙うつもりだろ。無理だって」


 クラスメイト達の声に彼女は、ニコニコ笑顔で手を振りながら笑う。


「も~、みんな照れるからやめてよ~」


 一部の女子はこれを見て、男子に好かれたくてやっていると思っているが、クラスのほとんどは、彼女と仲良くなりたいと思っていた。


「好きなものは可愛いもの。食べ物はオムライスが好きかな~。アイドル好きだからアイドルで推しとかいる人は是非話しかけてね」


 彼女は、自分の見せ方が上手い。だから新しいクラスに馴染むのも早く、いつもクラスの中心人物的存在になっている。


 最初は、嫌いではなく好きだった。本当の友達だと思っていた。けれど、一緒にいる時間が増えていくほど私はいつの間にか彼女に苦手意識を持ち始めた。


 小学生5年生頃。彼女は、私ともっと仲良くなりたいからといってお揃いのものを持ちたいと言ってきた。


「天羽ちゃん、ペンポーチ、お揃いにしよ」

「えっ、あっ、うん。いいよ」


 最初の頃はまだ良かった。けれど、この「お揃いにしよ」という言葉がだんだん私の自由を奪っていった。


 好きなものを選びたくても彼女が嫌と言えば私が、選んだものを帰るまで「違うのにしようよ」と頼んでくる。


 好きなの選ばせてよと言えばいい話だが、その時の私は、彼女に嫌われたくなくて言いたいことを何も言えなかった。


「天羽ちゃん、私達、親友だよね?」

「……うん」


 親友って何だろう。何をするにもずっと一緒にいて、お揃いのものを持って、頼まれたことは絶対で……。


 苦しかった。彼女といる時間が増えるほど私は私じゃなくなっていく。


「ごめん。奈々とは距離を置きたい」


 中学生の時、私は彼女にこう言った。周りから「奈々ちゃん、可愛そう」と彼女の味方である人達がいろいろ言っていたが、私は全て無視した。


 周りの人の言葉を全て聞いていたら私はずっと奈々から離れられない。



***



 同じ高校なのは驚いた。中学を卒業すれば彼女と会うことはなくなると思っていたから。


 距離を置きたいと言ってから彼女は、私に「何があったの?」、「嫌われるようなことしちゃった?」と私と仲直りするために話しかけてきていたが、今はもう全く話しかけてこない。


「奈々ちゃん、移動教室行こ」

「うん、行こう!」


 彼女は友達と楽しそうに話しながら私の席の隣を通り、教室を出ていく。


(私もそろそろ行かないと……)


 椅子から立ち上がり、机の上にある教科書を持とうとすると声をかけられた。


「大原」


 名前を呼ばれ、顔を上げるとそこには同じ部活に所属する紺野奏こんのかなでくんがいた。


「おはようございます、紺野くん」

「おはよ、大原」


 もう私と奈々が仲良くなることはない。関わることはない。そう思っていたのに彼女は……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る