第43話
朱朗の叶恵リカとの手つなぎデートは、無論、朱朗の一弥に対する深い嫉妬によるものだった。
深いとはいえ、たかだか17歳の嫉妬でリカちゃんは映画を降板されたのだ。ファッションショーで星來を転ばせたことに始まり、朱朗の嫉妬心は異様なほど猟奇的にも思える。
しかも朱朗は、リカちゃんとのデートを包み隠すことなく星來にそのいきさつと内容を語ったのだ。聞いてもいないのに。
「リカちゃん、塩バニラアイスとフランクフルトの食べ方めっちゃエロい。」
「………」
「星來も今度やって!俺の彼女なんだし。」
「………」
反省の色などどこ吹く風。
そして彼女役ではなく、星來を彼女だと言い張る朱朗。それでいてリカちゃんとデートをしているのだから、彼はしっかり浮気と認知していた。
そのリカちゃんが食べてる姿を朱朗がスマホに収めており、星來に見せつけた。
それを見た星來は、一週間泣いた。撮影の合間に、学校の授業中、ふとした瞬間、家に帰り布団に入った時も。
星來にとって朱朗は、あくまで彼氏役ではあった。
それでもやはり自分への嫌がらせの何ものでもないことを悟った星來は、青司にとんでもないことを懇願する。
「青兄。お願い。私の処女、もらって?」
星來はやけくそになっていた。
前髪を分け、肩よりも長い黒髪がそのセーラー服から覗く白い腕にかかっており、さすがの青司もごくりと喉を鳴らす。
青司に相談があるからと、学校帰り、わざわざ青司が働く会社の最寄りの駅まで来ていた星來。
人目につくとパパ活と思われてしまうため、とりあえず駅から離れた個室居酒屋に来ていた。そこでカルピスを一気飲みし、星來は女優業でつちかった上目遣いと瞳の潤いを武器に懇願した。
しかし青司はその時27歳。いい大人だった。それなりに、いや、女性経験は人並み以上に経験していた。
芸能界からはかけ離れた海運業界でその有能さを開花させて。いい大人でいいスパダリに成長していた青司。いい寄る女性は当然少なくない。
組んでいた脚を下ろし、大きくため息をついて、持っていたカルーアミルクの瓶をテーブルにコトリと置く。
彼はそれ相応のイケメンっぷりで、まだ未成年の星來に説教をするため彼女を真顔で見据えた。
「だめ。…20歳になったらもう一度僕のところに来なさい。」
残念ながら、駄目な大人だった。
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