第23話 スラムの少女アン
その女のコは、アンと名乗った。
「ここスラムはね、以前は都市地区とそんなに変わらず栄えていたの。でも都市地区に若い働き手が流れて言って、段々廃れていった。お父さんもお母さんも皆、馬車馬のように働いても生活は一向に楽にならない。今は1日生きるのがやっと……」
「でもね」
「私が美・コンテストで有名になったら、都市地区に行ってしまった働き手の若者ももきっとここに戻ってくるんじゃないか…って」
アンはキラキラしながら言った。
「でも、その……美・コンテストって本当大丈夫なの?」智紀がアンに聞くと、
「スラムで危険なことは慣れてるの」
「過剰な自信はかえって危険だ」星哉が言った。
「私もなんか嫌な感じがする。私も一緒に美・コンテストに参加して、付き添うのはどうかな?」光が言った。
「危険だ」智紀が口を挟んだ。
「大丈夫!!私は女神アテーナイエの啓受を受けた白魔導士よ」
『過剰な自信はかえって危険だ』皆がいっせいにつっこんだ。
「男の子が一人いれば、安心なんだけど。男の子は美・コンテストに出れないの?」
「男の子も出れるよ!!」アンが言った。
「時代だな……」星哉が言った。
「男の子もドレスを着て、美・コンテストに出れます!!ぜひ」
いきなり、チラシ配りの男性が会話に入ってきた。怪しいやつだ。
「……聞いていたのか」蓮羽が顔をしかめた。
「そちらの男の子は綺麗な顔をしていますねェ」チビノアを見て怪しい男が言う。
「僕がコンテストに出たら優勝間違いなしだね」チビノアが言った。
「何卒、ご検討を」男は怪しい笑みを浮かべた。
「はいはーい!!私と小夜も参加しまーす!!」加奈子が明るく言った。
明日また、美・コンテストの為に男が来て都市地区に行くという事で、智紀達はアンの家に泊まることになった。
アンの両親は、夜になっても、働いていた。都市地区に出荷する魚肉団子を厨房で夜通し揚げていた。衛生管理についてはほとんど考えられてなかった。
皆、寝るときはは雑魚寝だった。
窓から都市地区の煌びやかな夜景が煌々と照らしていた。
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