第24話 悪魔
「なんだ、この豚は?」
魔王の最初の一声がそれだった。
同じ言葉を浴びせた俺としては何も言い返せないところではあったが、オークは顔を真っ赤にして怒りを露わにしていた。
「なんだ、貴様!! この私を一体誰だと……」
「知らん。お前のような躾のなっていない豚は飼っていなかったはずだぞ? サヴァン、貴様は知っているか?」
「いえ、オーク種は私の管轄外でして……。オーガに聞いた方がよろしいかと」
「ぶっひぃぃぃ!! 貴様ら、聞いて驚け!! 私こそがこの辺りを治める領主、ブヒートリヒ男爵だ!!」
ブヒブヒ言いながらなんか寝ぼけたことを言ってくる。
ただ、俺自身もこの辺りを治める領主って見たことがなかった。
「そうか。それがどうした?」
魔王が不思議そうにいう。
確かに一男爵と魔王。
立場的にどちらが上かというと考えるまでもなく魔王である。
「ぐぬぬっ、そんなことを言っても良いのか? 私に逆らうとどうなるかわかっているのか?」
「ほう、それは楽しみだ。どうするつもりだ?」
魔王は興味深そうにオークに聞く。
――もう俺は無関係じゃないのか?
部屋の中に入ろうとするがオークに止められる。
「おいお前もどこに行く!!」
「俺はもう関係ないんじゃないですか?」
「お前が連れてきた相手じゃないか!? どいつもこいつもこの私を馬鹿にしやがって」
思いっきり側に置かれていた表札を殴りつける。
ただそれは表札代わりに置かれていた聖剣で一切動くことなく、むしろオークの手が真っ赤に腫れていた。
「くっ、お、覚えていろ!」
オークは慌てて逃げ去っていく。
その際に落とし穴に落ちていたが、豊満な体が功を奏し、完全に落ちることなくはまっていた。
必死に手足をバタつかせるもののまるで抜け出すことが出来なかった。
「だ、出せ!! 私をこんなところに閉じ込めて何をするつもりだ」
「……」
なんとも言えずに口を閉ざす俺たち。
オークは一人暴れていたものの、しばらくして部下に引っ張り出されるとそのまま逃げ去っていったのだった。
◇◇◇◇◇◇
「あのオーク……、本当にもう一度来ると思うか?」
「来ても返り討ちにするだけだな」
当たり前のようにいう魔王に俺はため息を吐く。
落とし穴すらも巨大な体で無効化してしまう相手だ。
領主というのが正しいなら相応の軍を連れてきてしまうだろう。
以前に軍隊を連れてきた牛鬼やオーガは相打ちにさせることで事なきを得たが、今回はそういうわけにはいかない。
つまり……。
「そうか。それなら後は任せたぞ」
魔王に全てを任せることにしたのだった。
◇◆◇◆◇◆
男爵は苛立ちながら自身の街へと戻ってくる。
「おい、すぐに兵を用意しろ。あの田舎村を滅ぼす!」
「どうかなされたのですか?」
「あそこにいる勇者と悪魔のやろうが私に無礼な態度を取ったばかりか、あまつさえ手を出してきたのだ」
「……それは少し待った方が良いかもしれません」
「お前も止めるつもりか!?」
男爵は苛立ちを見せていた。
「いいえ、止めはしないです。ですが、相手に悪魔がついていたとなると兵だけでは不十分かと……」
「……どういうことだ?」
「おそらくその勇者というのは悪魔と契約を交わすことで己の力を強化しているのでしょう」
「それならどうしたらいいんだ!?」
「簡単なことにございます。ブヒートリヒ様も同じように悪魔と契約を為さればよろしいのです。そうすれば相手にすらならないでしょう」
「ぶひっ、そうであるな。しかし、悪魔と連絡する手段などないぞ?」
「そんなことはございません。わたくしにお任せください」
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