第93話

「 "運命は変えられない"

そんなの昔から知ってるよ。

あの家に生まれたときから分かってる。

リョウジに言われなくても。 」



下を向いたまま話す私に無言のリョウジ。


だけど、ひとつだけ伝えたい。

最後にあなたに伝えたいことがある。


私は、リョウジの目に向き直った。



「 だけど、自分から何か欲しいと思ったのも

人生で初めてだから。


きっと良い思い出になる、と思う。 」



『 ユウミ「 ありがとう。 」



私はプライドが高い。

こんなのに、負けない。


だから、精一杯笑った。



「 それと、今日は何の日でしょうか? 」



悪戯に笑ってそう言う私に

切ない顔をするリョウジ。



「 恋愛の世界では

バレンタインを忘れていた私もあり得ないけど、

ホワイトデーに別れ話をするなんてもっと罪深いよ? 」



そう冗談を言って、もう一度笑った。


・・・


この日のために京都からお取り寄せをした

MarieBelleのチョコレート。


コインランドリーの真っ白いテーブルの上に

そっと置く。

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