第21話

――――「人間失格なの俺?」


――――「うん。」





簡単に肯定された。笑えるほど、どうでもいい女に。



少なくとも俺が処女ならこう思う。



白馬に乗った王子と運命的な恋に落ち、一生愛され堕落した生活を送りたい。3食昼寝とセックス付き。そんでもって、ちゃんと愛し、愛されるセックスがしたいと。



でもあんたの場合、黒船に乗った赤ずきんみたいなイメージ。ロケットランチャー抱えて、婆さんに扮する狼を、家ごと仕留めようとする赤ずきんみたいな。



グリム童話百物語か。むしろ初心者とは思えないアグレッシブな自叙伝じじょでんで、来年の本屋大賞を狙えるかもしれない。(俺は買わない) 



どうでもいい男に、たっかい金まで払って処女捧げる生き様ってなに?どうやったらそんなセンシティブな非表示が身につくもんなの?



種族の違いに腹を抱えて笑えと言われても、ネオン街のお月様にだって笑われねえって。俺に抱かれるくらいなら、今どき人気のドリンクだかアイスだか食いに行った方がマシじゃん?



んね。



でも、ちょっとカッコいいかも、と思うのも事実。



俺みたいにスパイスとエッセンスで誤魔化した人生よりは、だいぶいいかもしんない。大量生産で陳列されてるつまらなそうな自叙伝でも、手にしてみれば意外と面白かったりする。



潔いあんたの生き様に、ちょっとだけ触れてみたくなった。



そう俺に思わせるのは、あんたの体内にはニコチンよりも有毒な何かが含まれてるからかもね。キスした直後に、そんなロマンチストを気取った。


   

あと数時間後には、“どうでもいい女”から昇格する。

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